エスエフノキハズカシサ
SFの気恥ずかしさ
発売日 2022/12/14
判型 四六変型判 ISBN 978-4-336-05819-5
ページ数 444 頁 Cコード 0098
定価 4,620円 (本体価格4,200円)
『歌の翼に』『いさましいちびのトースター』の奇才トマス・M・ディッシュのSF評論集、ついに登場!
SFの限界と可能性を論じた名講演「SFの気恥ずかしさ」をはじめ、新世代SF作家を批判してジョージ・R・R・マーティンに反論された伝説的評論「レイバー・デイ・グループ」、書評家として燃やすべき本について舌鋒鋭く語った「聖ブラッドベリ祭」、ディック作品に対する愛にあふれる『偶然世界』序文、そしてエイリアンに誘拐された体験記の書評が奇想天外な展開を見せる「ヴィレッジ・エイリアン」など、技巧とユーモアに満ちた書評・エッセイを集成。『歌の翼に』『アジアの岸辺』で知られるSF作家ディッシュの卓越した批評家としての面を堪能できる傑作SF評論集。〈ディッシュの文章には磨かれた知性があり、ユーモアがある〉若島 正(本書解説より)
*本書で取り上げられている作品(一部)
A・E・ヴァン・ヴォークト『非Aの世界』/ノーマン・スピンラッド『鉄の夢』/ウェルズ『モロー博士の島』/ポー「ベレニス」/ジーン・ウルフ〈新しい太陽の書〉四部作/ウィリアム・バロウズ『裸のランチ』/バラード「夏の人食い人種たち」/オルダス・ハクスリー『すばらしい新世界』/レイ・ブラッドベリ「黒い観覧車」/アーサー・C・クラーク『楽園の泉』/アーサー・C・クラーク『2010年宇宙の旅』/アイザック・アシモフ『ファウンデーションの彼方へ』/カート・ヴォネガット『ガラパゴスの箱舟』/スティーヴン・キング『恐怖の四季』/スティーヴン・キング『ペット・セマタリー』/フィリップ・K・ディック『ヴァリス』/ルーディ・ラッカー『ホワイト・ライト』/グレゴリイ・ベンフォード『タイムスケープ』/フィリップ・K・ディック『ゴールデン・マン』/ヴォンダ・マッキンタイア「霧と草と砂と」/ロバート・A・ハインライン『フライデイ』/『夜のエンジン』/L・ロン・ハバード『バトルフィールド・アース』/フィリップ・K・ディック『ティモシー・アーチャーの転生』/ジョン・クロウリー『エヂプト』/ジョン・クロウリー『エンジン・サマー』/ジーン・ウルフ『ジーン・ウルフの記念日の本』/ウィリアム・ギブスン『モナリザ・オーヴァドライヴ』/ウィリアム・ギブスン『ヴァーチャル・ライト』/ウィリアム・ギブスン+ブルース・スターリング『ディファレンス・エンジン』/フィリップ・K・ディック『偶然世界』/フィリップ・K・ディック『最後から二番目の真実』/ホイットリー・ストリーバー『コミュニオン――異星人遭遇全記録』/ピーター・ワシントン『神秘主義への扉――現代オカルティズムはどこから来たか』/ロバート・A・ハインライン『自由未来』/『未知との遭遇』/ホイットリー・ストリーバー『宇宙からの啓示――異星人遭遇記録』/ピーター・アクロイド『原初の光』/ジョン・バース『船乗りサムボディ最後の船旅』/ウィリアム・S・バロウズ『シティーズ・オブ・ザ・レッド・ナイト』
トマス・M・ディッシュ (トマス・マイケル・ディッシュ)
1940年アメリカ・アイオワ州生まれ。建築家を志してクーパーズ・ユニオンに入学するも挫折、生命保険会社に勤めながらニューヨーク大学の夜学に通い、62年に短篇”The Double-Timer”でデビュー。その後、広告代理店、銀行など様々な職に就きながら、65年『人類皆殺し』で長篇デビュー。66年、イギリスに渡り、「ニュー・ワールズ」誌で異彩を放つ意欲的な作品を次々と発表、ニュー・ウェーヴ運動の中核作家として活動し、知性派SF作家として確固たる地位を築く。長篇に『虚像のエコー』『キャンプ・コンセントレーション』『334』『ビジネスマン』『M・D』、日本オリジナル短篇集に『アジアの岸辺』がある。79年、『歌の翼に』でキャンベル記念賞を受賞。『いさましいちびのトースター』は87年にディズニー・アニメ化された。SFにとどまらず、ミステリー・ホラー・詩集など幅広いジャンルで活躍し続けていたが、2008年自ら命を絶った。
浅倉久志 (アサクラヒサシ)
1930年生。英米文学翻訳家。大阪外国語大学卒。主訳書にヴォネガット『タイタンの妖女』、ディック『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』、ラファティ『九百人のお祖母さん』、ティプトリー・ジュニア『たったひとつの冴えたやりかた』(以上ハヤカワ文庫SF)、著書に『ぼくがカンガルーに出会ったころ』(国書刊行会)。2010年没。
小島はな (コジマハナ)
1980年生まれ。京都大学文学部卒業。出版社勤務を経て地方在住。執筆業、翻訳業、編集業を通じて、地域作りに携わる。
第一部 森
SFの気恥ずかしさ
アイデア――よくある誤解
神話とSF
壮大なアイデアと行き止まりのスリル――SFのさらなる気恥ずかしさ
第二部 祖先たち
ポーの呆れた人生
墓場の午餐会――ゴシックの伝統におけるポー
『すばらしい新世界』再再訪
テーブルいっぱいのトゥインキー
原文ママ、ママ、ママ
天国へのバス旅行
宇宙の停滞期
アイザック・アシモフ追悼
世代の溝を越えたジョーク
時間、空間、想像力の無限性――そしてとびっきりの筋肉
第三部 説教壇
王(キング)とその手下たち――〈トワイライト・ゾーン〉書評担当者の意見
イエスとの対話
レイバー・デイ・グループ
一九七九年――綿くずと水の泡
聖ブラッドベリ祭
第四部 選ばれし大きな樹
違った違った世界
クロウリーの詩
ウルフの新しい太陽
サイバーパンクのチャンピオン-――ウィリアム・ギブスンの二作品について
ヴィクトリア女王のコンピューター
ディックの最初の長篇
一九六四年にならえ
第五部 狂った隣人たち
ヴィレッジ・エイリアン
UFOとキリスト教の起源
SFという教会
まだ見ていない事実の確認
天国への道――SFと宇宙の軍事化
月光の下院議長―ニュート・ギングリッチの未来学参謀
『未知との遭遇』との遭遇
最初の茶番
第六部 未来のあとで
生ける死者の日
おとぎの国バグダッド
SF――ゲットーへの案内
川を越えて、森を抜けて
首吊りの方法
天才キッズの秘密の暗号
とんちんかん、ちんぷんかん、ちちんぷいぷい
解説 若島正
訳者あとがき
索引