フジンソウダインモノガタリ
婦人相談員物語
その証言から女たちの歴史(herstory)を紡ぐ
発売日 2024/10/16
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07656-4
ページ数 368 頁 Cコード 0036
定価 2,970円 (本体価格2,700円)
運命に翻弄され、もがきながら生きた女たちの歴史を「婦人相談員」の証言から紡ぐ。
婦人相談員は売春防止法によって設置され、性暴力、DV、人身売買など、さまざまな困難を抱える女性たちに寄り添ってきた。本書は、これまであまり光をあててこられなかった婦人相談員の証言から、相談員の人生とともに、相談員たちが出会ってきた女性たちの物語を紡ぎ、女性の苦難とつながりの物語を歴史(herstory)として記録したものである。
売春防止法に先立つ「からゆきさん」、売春防止法設置と最初期の婦人相談員の苦闘、そして1980年代以降に婦人相談員として働いた24人のベテラン相談員の物語を紹介。そこでは、社会の変化と女性のあり方が浮かび上がってくる一方で、売春防止法よりずっと前から連綿と続いてきた女性たちの苦難と哀しみ、同時に逞しさと暖かさを感じることができるはずである。それは見ようとしなければ見えない世界であり、ないことにされがちなものであるが、実は時代を超えて女性という存在に通底するものであり、眼を向けることで女性たちはつながり、助け合うことができるのだ。
女性新法の施行により婦人相談員は女性相談支援員となるが、その経緯と期待についても触れる。
村本邦子 (ムラモトクニコ)
立命館大学教授、臨床心理士。1990年に女性ライフサイクル研究所を設立、DV や性暴力、災害、戦争などトラウマの臨床に取り組む。『暴力被害と女性』(昭和堂、2001)、『周辺からの記憶 3・11の証人となった十年』(国書刊行会、2021)ほか著書多数。
松本周子 (マツモトシュウコ)
熊本県水俣市福祉課女性相談員、元全国婦人相談員連絡協議会会長。淑徳大学で社会福祉を専攻。1988年より婦人相談員。民間活動として、DV 被害者母子の回復プログラム、地域の支援者養成講座も実施している。
はじめに
第1部 婦人相談員の歴史
第1章売春防止法前史
第2章 売春防止法の成立
第3章 高度経済成長と売買春の変化
第4章 追加される法律と制度
第5章 婦人相談員の仕事
第2部 婦人相談員の物語
第1章 婦人相談員こそ天職 高里鈴代(1977年-1980、1982年-1989年)
第2章 支え支えられる関係はいつまでも続く 早川和江(1984年-2004年)
第3章 好きな仕事をして人が喜んでくれるなら最高 中田美佐子(1987年-2012年)
第4章 生活と仕事に境目はない 芦原陽(1987年-現在)
第5章 根幹にあるのは信仰 松葉千代(1988年-2021年)
第6章 「できない」ではなく「できる」を探す 佐藤恵(1989年-2007年)
第7章 親きょうだいから受けた愛を基盤に 山本忍(1990年-2016年)
第8章 仕事を超えた友は墓場まで持って行きたい宝 田代千鶴子(1991年-2008年)
第9章 やって身に着いたものは一生自分のもの 島崎弘子(1992年-2013年)
第10章 この仕事に出会うために生まれてきたのかもしれない 濱田桂子(1993年-2008年)
第11章 もう人生何でもあり 江川美智代(1993年-2021年)
第12章 人生のあらゆる体験が相談にはプラスになる 武田早苗 (1996年-2019年)
第13章 マイナスの生い立ちをプラスにいかす 山下さつき(1997年-2020年)
第14章 どんな状況にあっても見えないものに向かって語り続けることができる 村山芙美子(1997年-現在)
第15章 迷って当然、悩んで当然、人は失敗からも学ぶもの 長井薫(1998年-2018年)
第16章 個人のネットワークをつくる 野崎真澄 (2000年-2013年)
第17章 聴かなければ見えないことがたくさんある 古賀智江 (2002年-2010年)
第18章 自分のことは自分で決める、それを支えるのが相談援助の仕事 上田千秋 (2002年-2014年)
第19章 生活と仕事は一体 伊藤瞳(2003年-現在)
第20章 そこから先の知恵を絞り出してどこまでもやる 石野裕子 (2004年-現在)
第21章 相談は自分が生きることを助けてくれた 倉田由美(2006年-現在)
第22章 もっと早いうちに自由に生きることを考えていたら、もっとお役に立てたのに 柳井セキエ(2009年-2017年)
第23章 本当に人間が好きな人にやって欲しい 野中昌代(2009年-現在)
第24章 それぞれの人生あっての人、自分にしかできないことがある 木村彰子(2011年-現在)
第3部 婦人相談員の未来
第1章婦人相談員をめぐる現状
第2章 社会の変化と若い女性たちへの支援
第3章 困難な問題を抱える女性への支援に関する法律の成立
第4章 未来にむけて
おわりに