発売日 2022/09/22
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07401-0
ページ数 362 頁 Cコード 0397
定価 2,420円 (本体価格2,200円)
伝説の「さまよえるユダヤ人」を名乗るアハスヴェルが主宰する教団「光の子ら」を糾弾すべく準備を進めていたカルト宗教の研究者ウルフ・ハリガンは、ひょんなことから知り合った作家志望の青年マット・ダンカンの協力を得、二人は「光の寺院」で開かれる教団の集会に参加する。その集会の場で、全身に黄色い僧衣をまとった教祖アハスヴェルは、信者たちとともに「ナイン・タイムズ・ナイン」の呪いを唱え、ウルフの死を予言する。
その翌日、ハリガン家の家族とクロッケー場でゲームに興じていたマットがふとウルフのいる書斎を見ると、ウルフの机に身をかがめている黄色い僧衣を着た人物の姿が目に入る。窓は施錠されており、邸内の扉から書斎に入ろうとするものの、やはり鍵がかかっていて中に入れない。再び外に出て窓から中をのぞくと、ウルフは顔面を撃たれて床に倒れており、存在したはずの黄色い衣の人物は消え失せていた……。
この不可解な密室殺人の謎に直面したダンカンは、探偵小説嫌いのマーシャル警部補と共に「密室派の巨匠」ジョン・ディクスン・カーの《密室講義》を参照しながら推理・検討をするのだが、なんと《密室講義》のどの分類にも当て嵌まらないことが判明する。困惑する捜査陣を前に、難事件の経緯を知った尼僧アーシュラは、真相究明のために静かに祈りを捧げるのだった……。果たして異色の尼僧探偵の祈りが通じ、神をも畏れぬ密室犯罪の真相が看破されるのだろうか⁉
ジョン・ディクスン・カーに捧げられ、エドワード・D・ホックが主催する歴代密室ミステリ・ベストテンにも選出された、都市伝説的密室ミステリが新訳によって半世紀の時を経てここに甦る!
装訂・シリーズロゴデザイン=坂野公一(welle design)
H・H・ホームズ (エイチエイチホームズ)
H. H. Holmes (1911-1968)
本名ウィリアム・アントニー・パーカー・ホワイト。アメリカ合衆国の作家、批評家、編集者。アンソニー・バウチャー名義で、ミステリ小説、短編小説、SF小説、ホラー小説、ラジオドラマの脚本、映画の共同原作を執筆するなど多ジャンルで活躍。H・H・ホームズというペンネームは、19世紀のアメリカの殺人鬼が使っていた偽名に由来する。アメリカ探偵作家クラブ (MWA) を創設し初代会長を務める。MWAにはバウチャーの名前を冠した賞が設けられた。1937年に長編『ゴルゴタの七』でデビュー。長編に、『シャーロッキアン殺人事件』(40)、The Case of the Seven Sneezes(42)など。H・H・ホームズ名義では『九人の偽聖者の密室』(40)、『死体置場(モルグ)行ロケット』(42)やアーシュラ尼の短編などがある。短編The Quest for Saint Aquinは、アメリカSF作家協会が1970年に選出したSFオールタイムベストの1編に選ばれた。また、ホルヘ・ルイス・ボルヘスの短編「八岐の園」「死とコンパス」を英訳して『エラリイ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』に掲載した翻訳家でもある。
山口雅也 (ヤマグチマサヤ)
早稲田大学法学部卒業。大学在学中の1970年代からミステリ関連書を多数上梓し、’89年に長編『生ける屍の死』で本格的な作家デビューを飾る。’94年に『ミステリーズ』が「このミステリーがすごい!’95年版」の国内編第1位に輝き、続いて同誌の2018年の30年間の国内第1位に『生ける屍の死』が選ばれKing of Kingsの称号を受ける。’95年には『日本殺人事件』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。シリーズ物として《キッド・ピストルズ》や《垂里冴子》など。その他、第四の奇書『奇偶』、冒険小説『狩場最悪の航海記』、落語のミステリ化『落語魅捨理全集』などジャンルを超えた創作活動を続けている。近年はネットサイトのGolden Age Detectionに寄稿、『生ける屍の死』の英訳版Death of Living Deadの出版と同書のハリウッド映画化など、海外での評価も高まっている。
白須清美 (シラスキヨミ)
翻訳家。訳書にフランシス・アイルズ『被告の女性に関しては』(晶文社)、デイヴィッド・イーリイ『タイムアウト』(河出書房新社)、パトリック・クェンティン『俳優パズル』(東京創元社)、カーター・ディクスン『パンチとジュディ』(早川書房)『五つの箱の死』(国書刊行会)、H・H・ホームズ『九人の偽聖者の密室』(国書刊行会)、マーティン・エドワーズ『探偵小説の黄金時代』(国書刊行会、共訳)他。
【炉辺談話】 『九人の偽聖者の密室』(山口雅也)
九人の偽聖者の密室