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  4. 帝国の写真師 小川一眞

テイコクノシャシンシ オガワカズマサ

帝国の写真師 小川一眞

発売日 2022/04/25

判型 A5判   ISBN 978-4-336-07326-6

ページ数 508 頁   Cコード 0072

定価 8,800円 (本体価格8,000円)

内容紹介

写真師として日本初の帝室技芸員となった小川一眞。その知られざる生涯と事績を明らかにする画期的大著。

小川一眞は明治中期から大正期にかけて写真撮影から印刷、出版、乾板製造など、写真を軸とした一連の事業を展開し帝室技芸員を拝命した人物である。帝室技芸員とは、1890年に皇室による日本美術工芸の保護奨励を目的として定められた「帝室技芸員制度」により任命された美術家であり、小川は写真師として唯一選ばれた。その作品は旧千円札に使われた夏目漱石の肖像などで知られるが、撮影者としてだけではなく、印刷技術の革新、写真乾板の国産化を試みるなど日本の写真文化の発展に影響を与えた。

九鬼隆一やフェノロサの美術史調査にも同行し多くの文化財を撮影するとともに、日本各地の名所や風俗、文化財をはじめ、日清・日露戦争、明治天皇の大喪の礼、濃尾地震など数多くの題材を写真に収めた。特に日露戦争時には『日露戦役写真帖』『日露戦役海軍写真帖』を印刷・発行し、写真による戦争報道の先鞭をつけた。また1901年には中国・北京城(紫禁城を含む城壁で囲まれた市街地を含んだ地域)の撮影も行う。

本書では明治から大正という「変容する帝国」と生涯を共にした、未だ知られざる「写真メディアの体現者」の生涯をその撮影した膨大な写真とともに明らかにする。詳細な年譜、索引を付す。

著者紹介

岡塚章子 (おかつかあきこ)

東京都江戸東京博物館都市歴史研究室長・学芸員。博士(芸術学)。東京都写真美術館、東京都庭園美術館を経て現職。「日本近代写真の成立と展開」(1995)、「写された国宝――日本における文化財写真の系譜」(2000)、「庭園植物記」(2005)、「建築の記憶――写真と建築の近現代」(2008)、「140年前の江戸城を撮った男 横山松三郎」(2011)、「浮世絵から写真へ――視覚の文明開化」(2015)等の展覧会を企画・担当。2012年日本写真協会賞学芸賞、2015年美連協カタログ論文賞優秀論文賞を受賞。

目次

 はじめに――写真メディアの体現者・小川一眞

第一章 日本における写真術の習得とアメリカでの写真修行
 第一節 富岡での開業、そして渡米で摑んだ幸運 
 第二節 アメリカでの写真修行と帰国後の構想
第二章 「玉潤館」の開設、日蝕そして文化財調査写真の撮影、コロタイプ印刷による美術作品の図版作成
 第一節 「玉潤館」の開設 
 第二節 小川一眞の集客戦略 
 第三節 W・K・バルトンの来日と出会い 
 第四節 日蝕の撮影 
 第五節 文化財調査 
 第六節 小川一眞が撮影した宝物写真の特徴 
 第七節 『國華』『真美大観』『Histoire de lʼ Art du Japon』 
第三章 写真文化振興への貢献——写真雑誌の発刊、写真団体の結成と展覧会の開催
 第一節 『写真新報』の編集と発行 
 第二節 『光線幷写真科学』の翻訳、出版 
 第三節 「日本写真会」の結成と活動 
 第四節 「日本写真会」と岡部長職 
 第五節 「日本写真会」の外国人会員 
 第六節 「外国写真展覧会」と『標本写真帖』 
 第七節 浅草凌雲閣と「百美人」展 163
 第八節 小川一眞と鉄道写真 
 第九節 W・K・バルトンの写真集と小川一眞 
第四章 新たな事業の展開——網目版写真印刷の導入と日清戦争、日露戦争報道
 第一節 「シカゴ万国博覧会」と『Illustrated Description of the Ho-o-den(Phoenix Hall)at the Worldʼs Columbian Exposition』の出版 
 第二節 新聞報道と写真 
 第三節 『東京朝日新聞』と網目版印刷 
 第四節 『日清戦争実記』と『日清戦争写真帖』 
 第五節 『日露戦役写真帖』と『日露戦役海軍写真帖』の共通点と相違点 
 第六節 『日露戦役写真帖』と『日露戦役海軍写真帖』の発行者、印刷所、発行所と撮影者について 
 第七節 「日露戦役彩色大写真展覧会」の開催 
第五章 宮廷建築の撮影と帝室技芸員の拝命
 第一節 「北京城」の撮影と『清国北京皇城写真帖』『北京皇城建築装飾』の出版 
 第二節 「東宮御所」の撮影 
 第三節 帝室技芸員の拝命 
第六章 「光筆画」の制作と東京美術学校臨時写真科の新設
 第一節 帝室技芸員の報恩製作 
 第二節 東京大正博覧会と「光筆画」 
 第三節 小川一眞と東京美術学校臨時写真科 
 第四節 正木直彦と新生「日本写真会」 
第七章 撮影・印刷業からの撤退、そして写真感光材料事業の失敗
 第一節 『御大喪儀写真帖』の制作と東京写真師組合からの脱退 
 第二節 乾板製造の成功と日吉町事業所の廃業 
 第三節 廃業後の「光筆画」 
 第四節 小川写真化学研究所のその後と小川一眞の死去 
結章

あとがき 
年表 
索引 

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