発売日 2020/10/19
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07165-1
ページ数 304 頁 Cコード 0090
定価 2,640円 (本体価格2,400円)
名作には前のめりに沈まぬための知恵が一杯! 「夢がなければ生きていけない」――それって幻想じゃないですか? 昨日より今日、今日より明日の方がよりよい日であってほしい。そう思いたいのが人情だけど。問題山積の現代、いかなるスタンスで生きていくか。夢と希望と絆に飽きた時、読むべき書物、観るべき舞台、映画はこれだ!
【「はじめに」より】
「まずは本書の変てこなタイトル「ポジティブシンキングにならないために」について。positive thinkingにあらず、positive sinkingである。キッチンシンクと言うように、sinkは名詞で「流し」、動詞だと「沈む」。なので、〝前のめりに沈まぬために〟とご理解いただきたい。まあ、ジャパニーズイングリッシュにもならない一句ではあるけれど。つまり、前と上ばかり見ていると危ないよ、時には横を向いて、下を見て、後ろを確認しながら生きていかないと、人生、危ういよ、と。」
【収録内容】
◆第1章 心の中
1 世の中は割り切れるか――『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
2 文学と臨床心理――『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』
3 精神科診療所――『精神』
4 精神科医がダウンして――『息子の部屋』
◆第2章 人生の目的
5 自由と自立――『自由からの逃走』
6 ラストはハッピーエンドじゃないだろう――『ティファニーで朝食を』
7 階級の違いにあらず――『コレクター』
8 政治の季節の終わりに――『赤頭巾ちゃん気をつけて』
◆第3章 青春の後ろ姿
9 青春のけだるさ――『八月の濡れた砂』
10 立身出世を求めて――『青春の蹉跌』
11 一九七〇年代の女子高校生――『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』
12 平成の心意気――『ファンシイダンス』
◆第4章 彷徨はつづく
13 成績の呪縛――『ペーパーチェイス』
14 触りたい――『ヴァイブレータ』
15 スレた大人の導き手――『赤ひげ』
16 現実をいかに作品化するか――『青年』
◆第5章 時代に抗して
17 本とインターネット――『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』
18 親と子――『東京物語』
19 姥捨て山――『楢山節考』
20 近代への反逆――『ガンディー――反近代の実験』
◆第6章 第三世界
21 ストリート・チルドレンの挑戦――『スラムドッグ$ミリオネア』
22 高度経済成長の裏側――『いつまでも美しく』
23 植民地、そして独立後――『アルジェリア近現代史』
24 ヨーロッパの中の第三世界――『イゴールの約束』
◆第7章 戦争
25 日中戦争――『鬼が来た!』
26 ヴェトナム戦争――『ハーツ・アンド・マインズ』
27 アイルランド独立戦争――『麦の穂をゆらす風』
28 イラク戦争――『ルート・アイリッシュ』
◆第8章 戦争責任
29 図式的な理解でなく――『過去の克服』
30 誰がいちばんの悪党か――『オデッサ・ファイル』
31 止められなかった人間は加害者か――『ニュールンベルグ裁判』
32 何がどう裁かれたのか――『東京裁判』
◆第9章 仮面
33 プチブルを一皮むけば――『マッチ売りの少女』
34 巨匠の撮ったミステリー――『熊座の淡き星影』
35 神も善人も無力――『セチュアンの善人』
36 アメリカン・ドリームの向こう側――『アメリカン・ビューティー』
◆第10章 日常
37 日々の岩運び――『シーシュポスの神話』
38 原文で読む――『幸福論』
39 小さな恋の物語――『オリーブの林をぬけて』
40 生き埋めの人生――『しあわせな日々』
◆第11章 反体制
41 もの言えぬ王女の一言――『ローマの休日』
42 集団催眠への抵抗――『犀』
43 レジスタンスを語りたがらず――『リスボンに誘われて』
44 加害者意識――『悪人礼賛』
◆第12章 血縁
45 家族崩壊――『インテリア』
46 魂と腸――『叫びとささやき』
47 オイディプス外典――『薔薇の葬列』
48 憎み合う家族たち――『喪服の似合うエレクトラ』
◆第13章 セックス
49 執拗な性描写は何のため――『虹』
50 一流監督の撮ったハードコア――『愛のコリーダ』
51 障害者の性――『セックスボランティア』
52 芸術家と性愛――『ピアニスト』
◆第14章 死
53 現代左翼思想の葬送――『アレクサンダー大王』
54 道行き――『心中天網島』
55 粛清を描く手さばき――『太陽に灼かれて』
56 このくだらない人生を生きよう――『ダロウェイ夫人』
◆第15章 芸術家の心のうち
57 師匠を書く――『ある映画監督』
58 美しい音楽を生む心――『恋人たちの曲/悲愴』
59 芸術と政治――『メフィスト』
60 才能なきて滅びず――『アキレスと亀』
狩野良規 (カノウヨシキ)
1956年東京都生まれ。東京外国語大学外国語学研究科修士課程修了。東京都立大学人文学部(史学専攻)卒業。オックスフォード大学留学(1991―92年)。現在、青山学院大学国際政治経済学部教授。専攻、イギリスおよびヨーロッパ文学・演劇学・映像論。
主な著書に、『シェイクスピア・オン・スクリーン』(三修社)、『スクリーンの中に英国が見える』、『ヨーロッパを知る50の映画』正・続、『現代を知るための文学20』、『ポジティブシンキングにならないために』、『シェイクスピアとの対話』(以上、国書刊行会)、『えみゅーる――狩野良規自選エッセイ集』(シーズ・プランニング)などがある。
はじめに
◆第1章 心の中
1 世の中は割り切れるか――『夜中に犬に起こった奇妙な事件』
2 文学と臨床心理――『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』
3 精神科診療所――『精神』
4 精神科医がダウンして――『息子の部屋』
◆第2章 人生の目的
5 自由と自立――『自由からの逃走』
6 ラストはハッピーエンドじゃないだろう――『ティファニーで朝食を』
7 階級の違いにあらず――『コレクター』
8 政治の季節の終わりに――『赤頭巾ちゃん気をつけて』
◆第3章 青春の後ろ姿
9 青春のけだるさ――『八月の濡れた砂』
10 立身出世を求めて――『青春の蹉跌』
11 一九七〇年代の女子高校生――『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』
12 平成の心意気――『ファンシイダンス』
◆第4章 彷徨はつづく
13 成績の呪縛――『ペーパーチェイス』
14 触りたい――『ヴァイブレータ』
15 スレた大人の導き手――『赤ひげ』
16 現実をいかに作品化するか――『青年』
◆第5章 時代に抗して
17 本とインターネット――『もうすぐ絶滅するという紙の書物について』
18 親と子――『東京物語』
19 姥捨て山――『楢山節考』
20 近代への反逆――『ガンディー――反近代の実験』
◆第6章 第三世界
21 ストリート・チルドレンの挑戦――『スラムドッグ$ミリオネア』
22 高度経済成長の裏側――『いつまでも美しく』
23 植民地、そして独立後――『アルジェリア近現代史』
24 ヨーロッパの中の第三世界――『イゴールの約束』
◆第7章 戦争
25 日中戦争――『鬼が来た!』
26 ヴェトナム戦争――『ハーツ・アンド・マインズ』
27 アイルランド独立戦争――『麦の穂をゆらす風』
28 イラク戦争――『ルート・アイリッシュ』
◆第8章 戦争責任
29 図式的な理解でなく――『過去の克服』
30 誰がいちばんの悪党か――『オデッサ・ファイル』
31 止められなかった人間は加害者か――『ニュールンベルグ裁判』
32 何がどう裁かれたのか――『東京裁判』
◆第9章 仮面
33 プチブルを一皮むけば――『マッチ売りの少女』
34 巨匠の撮ったミステリー――『熊座の淡き星影』
35 神も善人も無力――『セチュアンの善人』
36 アメリカン・ドリームの向こう側――『アメリカン・ビューティー』
◆第10章 日常
37 日々の岩運び――『シーシュポスの神話』
38 原文で読む――『幸福論』
39 小さな恋の物語――『オリーブの林をぬけて』
40 生き埋めの人生――『しあわせな日々』
◆第11章 反体制
41 もの言えぬ王女の一言――『ローマの休日』
42 集団催眠への抵抗――『犀』
43 レジスタンスを語りたがらず――『リスボンに誘われて』
44 加害者意識――『悪人礼賛』
◆第12章 血縁
45 家族崩壊――『インテリア』
46 魂と腸――『叫びとささやき』
47 オイディプス外典――『薔薇の葬列』
48 憎み合う家族たち――『喪服の似合うエレクトラ』
◆第13章 セックス
49 執拗な性描写は何のため――『虹』
50 一流監督の撮ったハードコア――『愛のコリーダ』
51 障害者の性――『セックスボランティア』
52 芸術家と性愛――『ピアニスト』
◆第14章 死
53 現代左翼思想の葬送――『アレクサンダー大王』
54 道行き――『心中天網島』
55 粛清を描く手さばき――『太陽に灼かれて』
56 このくだらない人生を生きよう――『ダロウェイ夫人』
◆第15章 芸術家の心のうち
57 師匠を書く――『ある映画監督』
58 美しい音楽を生む心――『恋人たちの曲/悲愴』
59 芸術と政治――『メフィスト』
60 才能なきて滅びず――『アキレスと亀』
おわりに
作品名索引
人名索引