シラレザルタイワンゴブンガクノソクセキ
知られざる台湾語文学の足跡
発売日 2020/10/09
判型 四六変型判 ISBN 978-4-336-07156-9
ページ数 312 頁 Cコード 0098
定価 2,640円 (本体価格2,400円)
初めて詳らかになる、台湾語文学の歴史!
最大の母語人口を誇りながら、いち「方言」として扱われてきた「台湾語」。
1980年代の台湾ナショナリズムの高まりから「母語復興運動」が興り、さまざまな雑誌創刊、文学キャンプ、草の根活動を経て、国民党おしきせの中国語文壇に対し、自分達の「言語」で、自分達の「文学」を花開かせる、現在進行形の文学。
「日本文学とは何か。日本の読者諸君にとっては、この問いは自明なことに違いない。しかし、翻って台湾文学とは何か。この問いには、日本の読者のみならず、多くの台湾人さえ答えられないだろう。甚だしくは、現代の多くの人が中国文学を台湾文学と、あるいは台湾文学を中国文学の支流と誤認しているほどである。……本書がこの問いを解き明かし、なおかつ真の台湾文学、すなわち台語による創作文学作品とは何かをわれわれ読者に教えてくれるのである」(本書序文)
(国立成功大学台湾文学学科教授 蔣為文)
「台湾は自由で民主的な文化的環境を有し、多様な民族の人々が住むところである。現在の台湾文学もまた、様々な母語による創作をする権利が守られている。母語は最も自然な言語であり、母語で話すこと、母語で創作することは、生活の中に息づく美学を表現するものでなければならない。しかしながら、台湾における母語創作は紆余曲折の道のりを経ることとなった。本書『知られざる台湾語文学の足跡』は、まさにこの艱難辛苦のプロセスを描いたものである」(本書序文)
(国立台湾文学館館長 蘇碩斌)
廖瑞銘 (リャウスイビン)
1955年台北市生まれ。台語文学研究者、専門は演劇分野。中国文化学院史学系卒。徴兵後に中国文化大学史学研究所(大学院)に入学し、碩士(修士)、博士号取得。1995年静宜大学人文科准教授、台語文の科目を開設。1996年台語文を社会に宣伝する目的で、全国国民代表大会代表選挙に環境政党「緑党」から出馬。2005年静宜大学台湾文学系准教授、中山医学大学台湾語文学系教授。前衛出版社の編集長、雑誌『台文BONG報』編集長、台湾語ペンクラブ理事長など。2016年逝去、享年60歳。生涯を台湾語文学の研究と実践にささげた。
酒井亨 (サカイトオル)
1966年石川県金沢市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業、台湾大学法学研究科修士課程修了。共同通信社記者を経て、台湾・新境界文教基金会専門研究員。現在、公立小松大学国際文化交流学部准教授。主な著書に、『台湾入門 増補改訂版』(日中出版)、『日本のアニメはなぜ世界を魅了し続けるのか―アニメ聖地と地方インバウンド論』(ワニブックスPLUS新書)、『この国のかたち2020』(エムディエヌコーポレーション)等。訳書に李筱峯『台湾・クロスロード』(日中出版)、陳明仁『台湾語で歌え日本の歌』(国書刊行会)等。
日本語版に寄せて 蘇碩斌
台湾文学は中国文学にあらず 蔣為文
第一章 はじめに
一 母語の文化的意義
二 台湾各族群母語の生態と命運
三 台湾各族群母語の表記法形成
四 台湾各族群母語文学の起源
五 本書のアウトライン
第二章 母語覚醒前の台湾母語文学
一 口伝母語文学
二 台語白話字文学
三 日本統治時代の台語漢字小説および歌仔冊
四 戦後初期から母語覚醒までの母語文学
第三章 台湾母語復興運動
一 母語復興運動の勃興
二 漢字派の母語運動
三 ローマ字派の母語運動
四 独自方式派の母語運動
五 母語復興運動における客家語と原住民語
第四章 母語表記と母語文学をめぐる対立
一 母語表記をめぐる対立と調整
二 母語文学をめぐる対立
第五章 台湾母語文学グループ
一 漢字派の文学グループ
二 ローマ字派の文学グループ
三 独自方式派の文学グループ
第六章 台湾母語文学の花園
一 台語詩
二 台語小説
三 台語随筆と戯曲
四 客家語文学
第七章 結びに――台湾母語文学の展望
一 母語表記の解放と進展
二 母語文学の展望
あとがき
訳者あとがき
台湾語文学史年表/参考文献