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  4. 近現代日本の民間精神療法

キンゲンダイニホンノミンカンセイシンリョウホウ

近現代日本の民間精神療法

不可視な(オカルト)エネルギーの諸相  

発売日 2019/09/13

判型 A5判   ISBN 978-4-336-06380-9

ページ数 420 頁   Cコード 3014

定価 4,400円 (本体価格4,000円)

内容紹介

 大正時代には霊術・精神療法と呼ばれる治療法が流行し、最盛期の施術者は三万人ともいわれる。暗示、気合、お手当、霊動などによる奇跡的な治病だけなく、精神力の効果を示すための刃渡りのような見世物的危険術や、透視やテレパシー、念力のような心霊現象が彼らのレパートリーであったが、最終的には健康法、家庭療法、新宗教へと流れ込んで姿を消していった。
 本書は、さまざまな領域に姿を現す民間精神療法の技法と思想の系譜をひも解き、歴史研究の基礎を構築することを目指す。
 序論では、先行研究を検討、民間精神療法の略史を祖述した上で、精神あるいは精神療法という語が定着したゆえんを思想史的に検討する。
 第Ⅰ部では、海外から流入した最新の概念や技法の土着化を検討する。近代日本に誕生した物理療法は医学と霊療術をまたいで広まり、松本道別はメスメリズム的「人体放射能」をあやつり、ラマチャラカ(引き寄せの法則の元祖、ウィリアム・ウォーカー・アトキンソンの筆名)の「ヨーガ」技法は世界を駆け巡り、日本にも流れ込む。
 第Ⅱ部では、舶来の不可視エネルギーと混じりあって日本で生み出された技法や思想の形成過程を追う。川合清丸がこの法を以て天下国家を平地することを大発明した「吐納法」、日本の農学博士第一号にして貴族院議員にもなった玉利喜造が説き多くの療法家から歓迎された「霊気説」、右翼思想家・三井甲之が国民宗教礼拝儀式と位置づけ実践した「手のひら療治」、時代の要請に合わせて変容を遂げた野口整体の「活元運動」にその例を見る。
 第Ⅲ部では、世界中で行われている日本発の民間精神療法、レイキの形成過程と今に迫る。海外から移入された技法に影響を受けて成立した「臼井霊気療法」は、その概念ごと「翻訳」されて太平洋を渡り、アメリカで広まったあとレイキとして再度日本に上陸し、セラピー文化の基盤的知識となる。
 第Ⅳ部では、主要な療法家48名とその主要著作を、「序論」の時代区分にしたがい、自己治療系と他者治療系に大きく分けて紹介する。
 明治以降のグローバリズムの波を受けて流入したエネルギー概念や心身技法に、日本の伝統的宗教技法が混じりあって生み出された民間精神療法は、〈呪術の近代化〉という点で西洋の近代オカルティズムに相当し、〈催眠術の呪術化〉という点ではアメリカのニューソート運動と並行する。しかも、それらはグローバルオカルティズムという輪の中につながっていたのである。その全体像をさまざまな視点から横断的に描く、初の本格的論集。

著者紹介

栗田英彦 (クリタヒデヒコ)

1978年生まれ。
佛教大学、愛知学院大学等非常勤講師。東北大学大学院文学研究科修了。博士(文学)。
主な業績:『近現代日本の民間精神療法』(共編、国書刊行会、2019年)、『術と行の近代』(復刻版共編、クレス出版、2021年)、『「日本心霊学会」研究』(編著、人文書院、2022年)、『コンスピリチュアリティ入門』(共著、創元社、2023年)。

塚田穂高 (ツカダホタカ)

一九八〇年生。上越教育大学大学院学校教育研究科助教。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了。博士(文学)。専門は宗教社会学。主な業績:『宗教と政治の転轍点──保守合同と政教一致の宗教社会学』(花伝社、二〇一五年)、『徹底検証 日本の右傾化』(編著、筑摩選書、二〇一七年)、『近現代日本の宗教変動──実証的宗教社会学の視座から』(共編著、ハーベスト社、二〇一六年)、『宗教と社会のフロンティア──宗教社会学からみる現代日本』(共編著、勁草書房、二〇一二年)など。

吉永進一 (ヨシナガシンイチ)

1957-2022年。
舞鶴工業高等専門学校元教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程宗教学専攻学修退学。
主な業績:『日本人の身・心・霊』(復刻版編集、クレス出版、2004年)、『催眠術の黎明』(復刻版編集、クレス出版、2006年)、Religion and Psychotherapy in Modern Japan, (Routledge Contemporary Japan Series, 54) (Routledge, 2014, 共編)、『ブッダの変貌』(共編、法藏館、2014年)、『近現代日本の民間精神療法』(共編、国書刊行会、2019年)、『日本仏教と西洋世界』(共編、法藏館、2020年)、『神智学と仏教』(法藏館、2021年)、『術と行の近代』(復刻版共編、クレス出版、2021年)、『神智学とアジア』(共編、青弓社、2022年)、『増補改訂 近代仏教スタディーズ』(法藏館、2023年)。

目次

 序 論  吉永進一
Ⅰ 流入する科学的エネルギーとヨーガ
 第一章 物理療法の誕生——不可視エネルギーをめぐる近代日本の医・療・術
       中尾麻伊香
 第二章 松本道別の人体放射能論——日本における西欧近代科学受容の一断面
       奥村大介
 第三章 ウィリアム・ウォーカー・アトキンソン——別名、ヨギ・ラマチャラカ
       フィリップ・デスリプ(佐藤清子訳)
Ⅱ 産み出す〈気〉と産み出される〈思想〉
 第一章 政教分離・自由民権・気の思想
       ——川合清丸、吐納法を以て天下国家を平地す  栗田英彦
 第二章 玉利喜造の霊気説の形成過程とその淵源——伝統と科学の野合
       野村英登
 第三章 霊術・身体から宗教・国家へ——三井甲之の「手のひら療治」  塚田穂高
 第四章 活元運動の歴史——野口整体の史的変容  田野尻哲郎
Ⅲ 還流するレイキ
 第一章 大正期の臼井霊気療法——その起源と他の精神療法との関係  平野直子
 第二章 臼井霊気療法からレイキへ——トランス・パシフィックによる変容
       ジャスティン・スタイン(黒田純一郎訳)
 第三章 「背景化」するレイキ——現代のスピリチュアル・セラピーにおける位置づけ
       ヤニス・ガイタニディス
Ⅳ 民間精神療法主要人物および著作ガイド  栗田英彦・吉永進一
 第一章 萌芽期 一八六八~一九〇三年
 第二章 精神療法前期 一九〇三~一九〇八年
 第三章 精神療法中期 一九〇八~一九二一年
 第四章 精神療法後期 一九二一~一九三〇年
 第五章 療術期 一九三〇~一九四五年

  あとがき  吉永進一
  執筆者・訳者紹介
  人名・団体名索引

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