チュウゴクフクショクシズカン
中国服飾史図鑑 第一巻
発売日 2018/12/17
判型 A4変型判 ISBN 978-4-336-06312-0
ページ数 400 頁 Cコード 0622
定価 30,800円 (本体価格28,000円)
石器時代から20世紀まで2万年に迫る中国服飾の展開を、3000点を超える写真や図解で分かりやすく通観。衣服や冠帽はもちろん、履物や装身具、髪型や化粧まで、全4巻で網羅的に解説するビジュアル決定版! シリーズ第一巻は先史時代から魏晋南北朝までを収録。
【監修にあたって】
中国歴代の絢爛たる服飾文化を網羅した比類なき大著
古田真一(帝塚山学院大学教授)
本書は『服飾中華―中華服飾七千年』(北京:精華大学出版社、2011年)の日本語版である。中国の服飾の起源はひじょうに古く、今から一万八千年前の旧石器時代晩期には人々が獣皮を縫って衣服とし、獣骨や石珠を連ねて身体を飾っていたことが出土品から窺える。本書では、そうした旧石器時代から記述が始まり、辛亥革命後の二十世紀までの服飾について、衣服や冠帽をはじめ、装身具、髪型、化粧、さらには織物の種類・技法・文様に至るまで、多方面にわたって網羅的に詳述されており、副題の「中華服飾七千年」をはるかに超え、二万年に迫る中国服飾史の展開を通観できる内容となっている。
本書の最大の特徴は、言うまでもなく豊富な図版を用いた具体的な解説にある。服飾史に関する研究は、正史に載る輿服志などの記述を読み解くことが不可欠であるが、文献の記述からだけでは服飾の具体的なイメージを把握することは容易ではない。それを補完するため、本書では、服飾の実物はもちろんのこと、絵画や彫刻に描写された服飾表現を博捜し、約三千点にものぼる図版によって各時代の服装を余すことなく視覚的に提示しており、本書のページをめくるごとに、中国歴代の服飾のイメージが鮮明に浮かび上がってくることは疑いないであろう。
本書のもう一つの特徴は、各時代の服飾のデザインや文様の意味を、当時の思想や社会情勢と明確に関連づけて説明している点である。中国の服飾は、単に身体を保護し装飾するといった実用的な目的を超え、時代精神を具現化する機能も備えていた。本書では、そうした視点から、各時代の服飾の形状・材質・文様・色彩・数量などの
内面的な意味について、数多くの文献を引用しながら解き明かしている。
本書を通観すれば、中国の服飾が各時代の社会を濃厚に反映していることや、どの時代においてもファッション性が追求され、時には異国の服飾文化と融合しながら、絢爛たる服飾文化を形成していったことが理解できよう。最新の研究成果を存分に盛り込んだ本書が、研究者のみならず、中国文化に関心のある多くの人々にとって有益な書籍となり、様々な場で広く活用されることを期待したい。
【本書の特徴】
◆中国内外の博物館や研究機関、個人が所有する服飾にまつわる歴史的資料について、総計3000 点におよぶ図版を掲載。
◆衣服や冠帽はもちろん、履物や多彩な装身具、髪型や化粧、埋葬時に身に着けた玉衣服飾まで、身にまとうもの・身体を装飾するもの全般を網羅。
◆服飾品・装身具などの現物だけでなく、壁画や布帛画、俑や塼彫など、服飾品・装身具がどのように身に着けられていたかを示す具体的用例を掲載。また写真に加え、学術的な考証により描かれた復元図、図解等も豊富に収録。
◆服飾のデザインや文様がもつ内面的な意味を、数多くの文献を引用しながら、当時の思想や社会情勢と関連付けて説明。中国歴代の服飾が、時代精神を具現化する様子についても詳述する。
◆中国文学や中国史の記述に具体的なイメージを与える圧倒的な視覚資料を提供。作画や設定用資料としてクリエイターにも有用。
◆各巻冒頭には、監修者による日本語版オリジナルの概論を付す。
黄能馥 (コウノウフク)
1927年浙江省生まれ。専門は染織、服飾。中央工芸美術学院教授、中国書画通信大学副学長、北京現代実用美術学院名誉学院長、蘇州シルク博物館顧問などを歴任。主な著書に『中国印染史話』(中華書局出版、1960年)、『絲綢史話』(共著、中華書局出版、1963年)、『中国美術全集 工芸美術編・印染織繡』(上下巻、文物出版社、1985年)など多数。邦訳書に『中国絹織物全史―七千年の美と技』(共著、科学出版社東京 発行・国書刊行会 発売、2015年)がある。
陳娟娟 (チンエンエン)
1936年北京生まれ。1956年に北京故宮博物館に入り、沈従文氏に師事。以来40年余、中国国家文物鑑定委員会委員、中国古代絲綢文物複製センター副センター長などを歴任しながら、中国古代の織物・刺繡の研究、分析、鑑定に従事する。主な著書に『国宝』(共著、商務印書館香港分館、1983年)、『故宮博物院蔵7 宝録』(上海文芸出版社、1985年)など。邦訳書に『中国絹織物全史―七千年の美と技』(共著、科学出版社東京 発行・国書刊行会 発売、2015年)がある。
黄鋼 (コウコウ)
1961年北京生まれ。織物・刺繡品の収蔵家、画家。中国中央工芸美術学院修士課程を修了し、母校にて教職に従事する。2000年より欧米、香港、台湾、日本にて個展を開催。2009年には東京都美術館開催の「第35回AJAC展(日本と世界の現代美術)」に出展。著書に『中国龍袍』(共著、漓江出版社、2006年)、『黄鋼HUANG GANG』(大型画集、人民美術出版社、2008年)などがある。
古田真一 (フルタシンイチ)
1954年愛知県名古屋市生まれ。帝塚山学院大学教授。京都市立芸術大学美術専攻科修了。1986年から1990年まで北京大学に公費留学。専門は中国絵画史。編著書に『中国の美術―見かた・考えかた』(共編、昭和堂、2003年)など、論文に「六朝絵画に関する一考察―司馬金龍墓出土の漆画屛風をめぐって」(『美学』42巻4号、1992年)、「宋代における仕女図の表現形成について」(『中国美術の図像学』京都大学人文科学研究所、2006年)、監修・翻訳に『中国出土壁画全集』(全11巻、科学出版社東京 発行・国書刊行会 発売、2012年)などがある。
第一章 中国服飾の黎明
一 中国における服飾の誕生[一]人類の進化発展のレベルを示す服飾/[二]人類の祖先における進化発展の歴史/[三]人類発祥の地の一つである中国/[四]中国における衣服誕生への第一歩
二 中国原始の服飾の発祥期
三 中国服飾芸術のあけぼの―新石器時代
[一]紡織の発明と創造/[二]独自の特徴を備えた服飾様式/[三]豊富で華麗な原始の装身具
第二章 夏・殷・西周時代の服飾
一 制度としての服飾
[一]夏・殷・西周における服飾文化の背景/[二]階級による服飾品の独占
二 夏・殷・西周の章服制度
[一]礼服/[二]一般の服装/[三]舄履/[四]戎服(軍服)
三 王権と徳化の象徴―「十二章」服飾文様
[一]文献に見られる「十二章」/[二]考古史料に見られる「十二章」
四 夏代の服飾
五 殷代の服飾
[一]殷代における服飾の素材/[二]殷代における服飾の色彩/[三]殷代における服飾様式/[四]殷代晩期、蜀国・魚鳧王の四点からなる龍文礼衣/[五]今から三〇〇〇年以上前の天山南北における服飾
六 西周の服飾
[一]西周の宗法制度、及び「中華」「華夏」の名称の由来/[二]西周における衣服の生地/[三]西周時代の着装人物資料
七 殷・周時代の装身具
[一]髪飾/[二]冠飾(頭部の装飾品)/[三]耳飾/[四]頸飾/[五]臂飾/[六]佩璜/[七]その他の玉佩/[八]手飾/[九]瞑衣玉具
第三章 春秋・戦国時代の服飾
一 中国服飾文化における変革の第一歩
[一]服飾の生地の発展/[二]服装の色彩観念に対する変化/[三]着装形式の変革/[四]紡織技術の発展/[五]思想界における多様な服飾観
二 考古学的な発掘品に見る春秋戦国時代の服飾文化
[一]春秋戦国時代における服装の材料/[二]春秋戦国時代の服飾文様/[三]春秋戦国時代の服装形式/[四]春秋戦国時代の装身具
第四章 秦・漢時代の服飾
一 服飾文化が総合的に発展した時代
二 秦の始皇帝時代における強力な軍隊
[一]二〇世紀における世界考古学の奇跡/[二]秦国軍隊の服装
三 中国の絹が西方世界に及ぼした多大な影響
四 漢王朝の服飾制度
[一]漢代の冠制/[二]漢代の朝服/[三]漢代の一般的な服装/[四]漢代の鞋靴/[五]絵画・彫刻に表された服飾/[六]漢代の喪服
五 出土品にみる漢代の服飾資料
[一]衣服と布地/[二]前漢から後漢・三国に至る服飾文様の変遷
六 秦・漢代の装身具
[一]髪飾/[二]耳飾/[三]頸飾/[四]臂飾/[五]指環/[六]帯鉤・帯釦・帯鐍/[七]佩玉
第五章 魏晋南北朝時代の服飾
一 魏晋南北朝時代における服飾文化の特徴
[一]漢服と胡服の相互伝播/[二]褲褶・裲襠・半袖衫の流行/[三]筩袖鎧・両襠鎧・明光鎧/[四]冠帽形式の変遷/[五]知識人における服飾の気風/[六]女性の服装の変遷
二 魏晋南北朝時代の服飾文様
三 考古学的な発見による南北朝時代の服飾品
四 魏晋南北朝時代の装身具の実物
[一]髪飾/[二]帽飾金博山/[三]耳飾/[四]佩飾/[五]金奔馬飾/[六]金環/[七]指環/[八]帯具
五 敦煌壁画に見られる服飾