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過疎地の伝統芸能の再生を願って
現代民俗芸能論
発売日 2012/07/21
判型 A5判 ISBN 978-4-336-05478-4
ページ数 268 頁 Cコード 0039
定価 3,960円 (本体価格3,600円)
2011年3月の東日本大震災の被災地では、「祭りの芸能」の復興の取り組みが盛んになされてマスコミの注目を集めている。こうした動きは、「祭りの芸能」が地域住民のアイデンティティを確認する核として重要な意味を持っていることを証明しているように思われる。しかしながらこれらの芸能は、明治維新の近代化以降衰退の一途をたどって来ており、第二次大戦時の混乱状況、昭和30、40年代の高度成長期を境目とし、その傾向には一段と拍車がかかっている。農山村地域の過疎化、少子高齢化が厳しくなってきたここ20年ほどの変化により、こうした民俗芸能の存続継承は正念場を迎えているといってよい状況である。いまこそ各方面が知恵を絞ってこの状況解決のために努めなければならない。本書は、文化遺産、無形文化遺産としての「祭りの芸能」の施策の概要、及びその魅力や意義を説明するとともに、それらの伝承状況がいかに悪化しているかという現状を実地データに基づいて示し、今後の存続継承に向けての対応方策を探ったものである。写真多数収録。
星野紘 (ホシノヒロシ)
1940年新潟県生まれ。京都大学文学部卒業。現在、独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所名誉研究員、独立行政法人日本芸術文化振興会プログラムデイレクター。専攻、民俗芸能。
主な著書に、『歌垣と反閇の民族誌』(1996年、創樹社)、『歌・踊り・祈りのアジア』(2000年、勉誠出版、編著)、『芸能の古層ユーラシア』(2006年、勉誠出版)、『世界遺産時代の村の踊り』(2007年、雄山閣)、『過疎地の伝統芸能の再生を願って』(2012年、国書刊行会)など。
はじめに 過疎地の伝統芸能の再生を願って――現代民俗芸能論――
第一章 芸能のはじまり、面白さの表現など
芸能のはじまり、面白さの表現など
第二章 地域の伝統芸能論
地域の伝統芸能の研究と現代
東北に見る民俗芸能の昭和・平成史
第三章 地域の伝統芸能の後継者不足と対応方策
地域コミュニティの変容と地域の芸能の衰退
過疎地の伝統芸能の苦闘
「神楽マップ」サイトの立ち上げと神楽持続のための方策
地域の伝統芸能〈祭囃子・神楽〉の保存伝承
第四章 韓国、中国の地域における伝統芸能の衰退と無形文化遺産保護
韓国の地域の伝統芸能における伝承問題と無形文化遺産保護
中国の地域の伝統芸能における衰退事例と無形文化遺産保護
第五章 日本の歌のはじまりと踊りの昔
中国との比較から
第一節 多声合唱の由来――中国トン族と日本の掛け合い歌など――
第二節 不可視な存在との問答――歌垣の始まりの問題――
第三節 『中国民間祭祀芸能の研究』を読んで
盆踊りの昔の問題――白山周辺の事例をもとに――
あとがき