コウコガク・ジョウダイシリョウノサイケントウ
考古学・上代史料の再検討
発売日 2012/06
判型 A5判 ISBN 978-4-336-05461-6
ページ数 236 頁 Cコード 0321
定価 8,360円 (本体価格7,600円)
第1~3論文は、文献史学と考古学を関聯づけた研究成果である。歴史の実態を闡明し、絶対年代を推定するのは古典や文献(金石文・木簡を含む)に拠るのであって、古典・文献を無視しては、歴史そのものが成立し得ない。考古学の成果と文献史学との関聯が希薄なことはまことに遺憾である。第5論文以下は、上代史料の研究である。
第1論文では、纏向遺跡を「卑弥呼の宮殿跡」とする説を批判し、「崇神天皇の宮殿」であることを指摘する。この大型建物遺跡の広さが、伊勢神宮や出雲大社のそれと比較してさらに大きいということは注目に値する。
第2論文では、奈良県磯城郡島の山古墳の被葬者を、前方部は応神天皇の妃「糸井比売」、後方部は糸井比売の父「嶋垂根」と推定する。
第3論文では、白国神社縁起と壇場山古墳を結びつけ、壇場山古墳の被葬者は「稲背入彦命」、築造年代は4世紀後半と推定する。
第4論文は、世界遺産についての私見である。現に祭祀されている史跡については、世界遺産登録を自戒し遠慮すべきである。
第5論文では、古事記序にある「化熊出爪」という4字の校訂に関する論文である。わずか4字ではあるが、この解明こそは、「序」のみならず「古事記全篇中の大問題である」(山田孝雄博士)。
第6論文では、「遣唐使時奉幣」の『祝詞』数百年の誤読を正し、『住吉大社神代記』によって難波津の場所を四至まで正確に立証した。
第7論文は、「六人部連本系帳」の翻刻と研究である。今回対象とした藍表紙本の原型は本来の内容に近く、内容も新資料を含めて甚だ有益であり、新撰姓氏録の撰述とも関連が察知される。
第8論文では、古典の校訂に関する筆者の長年の経験から感ずるところを率直に述べ、古典校訂に際しての基準を提案する。
『著作集』以降の新研究を提示した、考古学者、古典研究者、必読の書。
田中卓 (タナカタカシ)
大正12年12月12日生れ(大阪市)
昭和20年9月東京帝国大学文学部国史学科を卒業
昭和35年4月文学博士(旧制)
府立大阪社会事業短期大学教授を経て、昭和37年4月から皇學館大学教授、平成4年4月から同大学大学院教授、平成6年6月から同大学名誉教授、平成23年7月から同大学学事顧問
昭和48年12月皇學館大学文学部長
昭和55年4月から昭和63年3月まで皇學館大学学長
平成30年11月逝去
著書・『住吉大社神代記』『出雲国風土記の研究』『神宮の創祀と発展』『愛国心の目覚め』『住吉大社史』(上・中巻)『概説日本史』(改題『教養日本史』)『祖国を見直そう』『祖国は呼びかける』『日本古典の研究』『日本国家成立の研究』『海に書かれた邪馬台国』『古代天皇の秘密』『皇国史観の対決』『伊勢神宮と式年遷宮』『歴史と伝統』『田中卓著作集』12冊(国書刊行会)『田中卓評論集』4冊(青青企画)
編著・『維新の歌―幕末尊皇志士の絶唱ー』『白山神社史』『真清田神社史』ほか
校訂・『新撰姓氏録』(神道大系)・『神道五部書』(神道大系)・『風土記』(神道大系)
自序
一、纏向遺跡の大型建物遺跡は崇神天皇の宮跡といふ論拠
二、奈良県磯城郡島の山古墳の被葬者について
三、白国神社縁起と壇場山古墳
四、仁徳天皇陵や宗像の沖の島は“世界遺産”になじまない
五、古事記序の「化熊出爪」を論じて「トベ」の語義に及ぶ
六、祝詞「遣唐使時奉幣」について、古来の誤解を正し、難波津の位置と成立時期を確定する
七、『六人部連本系帳』の出現
八、古典校訂に関する再検討と新提案
本巻所収の著書・論文一覧