カシマイナスサンジュウド
華氏マイナス三十度
「ガラスの天井」を打ち破った女性登山家たちのマッキンリー初登頂物語
発売日 2025/10/10
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07787-5
ページ数 424 頁 Cコード 0023
定価 4,180円 (本体価格3,800円)
1970年、世界で初めて、女性だけの登山隊が北米最高峰マッキンリー挑んだ !
著者は資料調査と独自取材を積み重ね、忘れられた登山家たちに光を当てた。
女性だけでも危険な極地の山に登れるはず、と信じることなど尊大だとされた時代。心が摑まれるような興奮の冒険物語。
グレース・ホーマンは北米最高峰マッキンリー山の頂に立つことを夢見ていた。多くの登山家の心の中には、北極圏内に位置するこの獰猛なほど険しい山が大きく立ちはだかっている。アラスカに暮らす医師グレースは、マッキンリー山頂まであと一歩というところまで迫ったものの、高山病のために下山を余儀なくされた経験があった。雪崩によって仲間7人の命が一度に奪われたこともあった。
他の遠征隊に参加しようにも性別を理由に拒否されたグレースは、カリフォルニアのクライマー、アーリーン・ブラムからの手紙を受け取る。アーリーンもまた遠征隊への参加を断られ、ベースキャンプで男性のために料理を作るなら来てもいい、と言われていた。そしてグレースはある大胆なアイディアを思いつく。それは、女性だけの遠征隊を組織して、凍てついたアラスカの峻峰マッキンリー山の登頂を目指すというものだった。
隊の名前は「デナリ・ダムゼルズ」。誰もが無理だと言った。女性に独力で山を登る能力はない、と。
男は月面を歩いたが、女はまだ地球の最高地点にすら立っていないじゃないか、と。
しかし、彼女たち6人はそのような性差別や女性嫌悪には怯まなかった。社会や登山界が作った壁を押し除け、自分たちの肉体の限界を超えて挑戦し続けた。
そして最悪のタイミングで災難が降りかかった時、女性登山隊のメンバーたちは理性を失わずに自らの勇気を証明するのか、あるいは命を落として、男たちに最悪の予想は当たっていた、と確信させるのか──。
「男性が支配する登山という世界にはびこる、女性に対する偏見、威嚇、排除の姿勢を前にして、デナリ・ダムゼルズの6人はそれぞれ違う形で影響を受け、怒りを抱き、やる気を奮い立たせた。登山というスポーツに打ち込む彼女たちのひたむきな姿、固い決意、そして人生を変えてしまうような経験がもたらす喜びと苦難に触れた時、読者は畏敬の念に包まれるだろう。これは壮絶な冒険を描いた魅惑的な物語である」(「カーカス・レビュー」誌)
「いかに困難で緩慢な進展に思えても、男性主体の分野において女性がその完全な一部になる日は必ず訪れるいうことを歴史は物語っている。我々がこれまでの進歩と、境界を突破して驚異的な高みを目指す道を開いた人々を称賛さえすれば、統合のスピードははるかに速まるかもしれない」(「TIME」誌)
キャシディ・ランドール
アメリカ・モンタナ州在住。環境、冒険、人間の可能性を広げる人々をテーマに執筆活動を展開している。「ローリング・ストーン」「ナショナル・ジオグラフィック」「ニューヨーク・タイムズ」「TIME」などの新聞や雑誌に寄稿。共著『ハードパーツ』でアメリカ図書館協会アレックス賞を受賞。他にローウェル・トーマス賞冒険書部門で金賞受賞、トゥルーストーリー賞の最終選考リスト入り、また年間ベストスポーツライティングの一冊に選出されるなど、この分野で高い評価を受ける。
森田由香 (モリタヨリカ)
1998年、津田塾大学大学院文学研究科博士課程満期退学。2025年まで慶應義塾大学講師。
訳書に『ビルマの少数民族』(明石書店、共訳)、『岩波=ケンブリッジ世界人名辞典』(岩波書店、共訳)、『これだけは見ておきたい世界のお墓199選』(国書刊行会、2021年)、『アメリカ スチュワーデス物語』(国書刊行会、2023年)など。
まえがき
第一部:石の天井
第二部:運命の登山道
第三部:野生の山
第四部:死に至る高度
エピローグ
参考資料について
謝辞
訳者あとがき