マジョ

魔女

女性たちの不屈の力  

発売日 2022/11/02

判型 四六判   ISBN 978-4-336-07334-1

ページ数 322 頁   Cコード 0036

定価 2,640円 (本体価格2,400円)

内容紹介

「慄くがいい、魔女たちの復活だ!」(1970年代フェミニスト運動のスローガン)。

著者は言う――「魔女といえば、ルネサンス期の魔女狩りのイメージからほこりを被った女性蔑視のイメージがあるが、現代女性にとって、あらゆる支配を逃れたポジティブなパワーを象徴しているのだ」

今日、女性たちはオンラインショップで魔術書を販売し、水晶が並んだ祭壇の写真をインスタグラムにアップし、集団でドナルド・トランプに呪いをかけている。魔女は至るところにいる。1970年代の先駆者以上に、現代のフェミニストたちは魔女に憑りつかれている。魔女は犠牲者でもあるが、不屈の反逆者でもあるのだ。

しかし実際、ルネサンス期ヨーロッパで魔女として告発された女性たちはいったい何者だったのか? 暗黒時代に目をつけられ、抑圧され、排除された女性のタイプとはどのようなものだったのか?
本書ではその歴史の検証とともに、魔女の3つの特徴をとりあげ、ステレオタイプのイメージなど、現代社会に残る影響について考察する。本書を通じて浮かびあがるのは、魔女狩りを産み出した社会が持っていた偏見に満ちたヴィジョン、そしてそれがそのままフェミニストやエコロジストに向けられるようになる社会の目だ。女性と自然のために闘うことは二重に呪われているが、いまこそ立ち上がるときが来たのである。

「本書は、ヴァージニア・ウルフ『自分だけの部屋』、シモーヌ・ボーヴォワール『第二の性』、マーガレット・アトウッド『侍女の物語』、イヴ・エンスラー『ヴァギナ・モノローグス』等と並んで、「いま読むべきフェミニストの本25冊」に選出された。スターホークやジュール・ミシュレの跡を継ぎ、モナ・ショレは魔女に心からの声援を送る。実際の魔女とは悪女という一般的なイメージからはほど遠く、年老いた魔女の智慧は救済の光である。さらい現代に生きる「魔女」の過酷な運命が描かれるが、繰り返し火あぶりにされながらも、その都度さらに強くなってよみがえる善良な魔女たちは、みずからを偽ることなく権力に抵抗し、いまなお前進を続けているのだ」『ル・タン』誌(スイス)

「16~17世紀にヨーロッパを席巻した魔女狩りの跡をたどりながら、モナ・ショレは知られざる負の歴史にスポットをあてる。『目につく女性』が迫害される事実が隠蔽されてきたのは、魔女狩りが今日の社会構造の構築に寄与したからである。状況は今も変わらず、マイノリティは検閲や排除、憎悪や敵意の対象になっている。女性の独立や疎外、子どもを産まないという選択、加齢、社会に遍在する上下関係など、多彩なテーマを扱いながら、本書では言葉にされてこなかったものを名指し、『女性蔑視』という現代社会の災厄に抗議する。男性による男性のための社会は、果たして変わるのか ? 無意識のうちに女性に押しつけられてきたものの実体を暴き、抹殺された過去の歴史を掘り起こすことは、根源的に男性中心である現代社会とそのシステムを理解することにもなるのだ。
このままでいいのか、とモナ・ショレは読者に問う。本書を読み終えたとき、読者は怒りを禁じ得ないだろう。女性が生理について、男性からの暴力について、女性のみの所得の低さについて、白髪について、50歳を過ぎてみずからの欲望についてそれぞれ自由に語るとき、また子どもを産まぬと宣言するとき、さらにセクシャリティについて教えこまれてきたことを拒否するとき、これは政治参加そのものだという連帯が生まれる。本書で著者が強調する――『ステレオタイプや偏見に心が折れそうになったとしても、それは新たな道を切り拓くチャンスでもある。目ざめよ、あなたを魔女だという人は、あなたを讃えているのだから』」『リベラシオン』紙(フランス)

2019年フランス「フナック」賞(心理学部門)受賞作!

著者紹介

モナ・ショレ (モナ・ショレ)

1973年、スイスのジュネーヴに生まれる。
ジャーナリスト、エッセイスト。ジュネーヴで文学の学士号を取得後、フランスのリール・ジャーナリズム高等専門学校で学ぶ。『シャルリー・エブド』紙でフリーの記者をつとめたのち、2016年から『ル・モンド・ディプロマティーク』紙編集長。
フェミニズム、マスメディア、現代の社会的・政治的表象に関する著作多数。

いぶきけい (イブキケイ)

1964年、島根県生まれ。東京都立大学人文学部(仏文学専攻)卒業。翻訳家。
訳書に『暗闇の楽器』『赤外線』(水声社)、『友だちになれたら、きっと。』(すずき出版)、『ちいさな手のひら事典 ねこ』『フリーダ 切り絵でつむぐ9 つの物語』(グラフィック社)、『マリー・キュリー――時代を生きた女性』(国書刊行会)などがある。

目次

謝辞 

あとを引き継ぐ者たちへ 
はじめに 
過去の犠牲者ではなく、現代社会の犠牲者 
目障りな女性を排除する 
否定された、またはありえなかった歴史 
オズの魔法使いからスターホークへ 
黄昏時の訪問者 
世界を形成した魔女の歴史 
イドラ島の漁師の心臓を食べたら 

第一章 それぞれの人生 
女性の自立にとって災いとなるもの 
不正な生活保護の受給と自由電子 
パイオニア、または禁断のモデル 
逆らうものには襲いかかれ 
火刑台の陰に 
悪魔とは何ものか? 
「影の薄い女性」 
仕えようとする条件反射 
「良き母親」という足かせ 

第二章 子どもはいらない 
子どもをつくらないというあらたな可能性 
あらたな可能性に向けて 
出産をめぐる錬金術 
思考が停止する領域 
「自然」という最後の砦 
世代から世代へ 
許しがたい言葉 
最後の秘密 

第三章 人生の絶頂である若さに酔いしれて 
「ババア」のイメージを塗り替える 
二〇歳を超えたらおばさん? 
女性の年齢をめぐるインチキ 
永遠のイメージからの脱却 
語りはじめた女性 
辺境に生きる 
「卑賤さをあらわす格好の標的」 
糾弾された欲望 
「あらたな規則をつくること」 

第四章 この世界をひっくり返す 
女性と自然のために闘う 
「何に対する秀逸さなのか」 
自然の死 
精神分析医ドルーフの物語 
すべてがでたらめ 
無意識の連帯の誕生 
ひとりの人間として患者を扱う 
非合理的なのはだれ?
あらたな世界の兆し 
「ヒステリックな主婦」の反乱 
ふたつの解放を同時にめざす 
この星は、わたしの星じゃない 
訳者あとがき 
原注 

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