タンテイショウセツトキョウキ
探偵小説と〈狂気〉
発売日 2021/02/24
判型 A5判 ISBN 978-4-336-07193-4
ページ数 372 頁 Cコード 0095
定価 3,850円 (本体価格3,500円)
近代は何を狂わせたか――
江戸川乱歩・小栗虫太郎・夢野久作ほか、探偵小説がいかに〈狂気〉を描いたかを読み解き、近代という時代に潜む文化と制度の裡面、そして文学によってなされた大胆な企みを明らかにする文学論。
装幀 コバヤシタケシ
鈴木優作 (スズキユウサク)
神奈川県生まれ。立教大学大学院文学研究科博士前期課程修了、成蹊大学大学院文学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。2021年度成蹊大学非常勤講師(予定)。『新青年』研究会会員。
序
第一部 心身における〈狂気〉
第 一 章 狂信という心理
――小栗虫太郎「後光殺人事件」――
一 新宗教ブームと奇蹟の演出
二 奇蹟のもたらす〈狂気〉
三 科学による秩序の維持
四 法水と科学的推理
五 心をめぐる探偵小説として
第 二 章 〈狂気〉を孕む身体
――夢野久作「ドグラ・マグラ」――
一 心理遺伝論にみる身体
二 探偵される身体と科学思想
三 探偵される身体による提起
四 夢野久作と「探偵小説」
第二部 〈狂気〉を内包する場
第 三 章 精神病院法のもたらす探偵/犯人像の構築
――大阪圭吉「三狂人」――
一 探偵役としての松永
二 松永のまなざし
三 語り手のまなざし
四 同時代の精神病院をめぐる社会状況
第 四 章 戦後社会への批判としての〈狂気〉
――大下宇陀児・水谷準・島田一男「狂人館」――
一 狂人館と二笑亭
二 黒田金之助のモデル赤木城吉と夏目漱石
三 文化消費/暴力のトポス
四 正常な世界と〈狂気〉の架橋
五 批判的視座としての〈狂気〉
第三部 法制度と〈狂気〉
第 五 章 精神鑑定という罠
――平林初之輔「予審調書」――
一 モチーフとしての予審
二 罠としての精神鑑定
三 司法に介入する精神医学
四 密室としての予審
第 六 章 自白の追求という〈狂気〉
――小酒井不木「三つの痣」――
一 欲望される自白
二 先行する犯人識別法・探偵法
三 自白の追求方法の模索
四 〈狂気〉の烙印
第 七 章 夢遊病と犯罪をめぐって
――浜尾四郎「夢の殺人」――
一 大正・昭和初期の夢遊病言説と探偵小説
二 藤次郎の殺人計画
三 要之助の殺人
四 浜尾短編にみる人間関係の力学
第四部 〈狂気〉表象の歴史性
第 八 章 〈狂気〉の物語の発掘
――岡本綺堂「影を踏まれた女」――
一 怪談と探偵小説
二 「病」を探偵する
三 モチーフとしての「影」
四 物語の発掘
第 九 章 精神医学に復讐する狂女
――夢野久作「笑ふ啞女」――
一 澄夫の人物造形
二 花子の人物造形
三 ディスコミュニケーションと身体性
四 自滅する澄夫
五 夢野作品と〈狂気〉
第一〇章 佯狂表象の物語
――岡本綺堂「川越次郎兵衛」――
一 護身としての佯狂
二 責任回避としての佯狂
三 戯れとしての佯狂
四 風刺としての佯狂
五 本作の位置
第五部 仕掛けとしての〈狂気〉
第一一章 ミスリードと〈狂人〉
――江戸川乱歩「緑衣の鬼」――
一 戦争神経症から「緑色狂」へ
二 白虹の推理を支える〈狂気〉
三 菊太郎・乗杉の推理と科学性
四 形式への志向
五 不在の被害者としての〈狂人〉
第一二章 探偵行為としての精神分析
――木々高太郎「わが女学生時代の罪」――
一 「網膜脈視症」「就眠儀式」にみる精神分析
二 「わが女学生時代の罪」にみる精神分析
三 臨床的精神分析の受容
四 探偵する「私」
おわりに
初出一覧
参考文献
索引