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ゲンダイシャカイニオケルセイトゾク

現代社会における聖と俗

デュルケム・9.11テロ・生駒・在日コリアン  

発売日 2018/02/19

判型 A5判   ISBN 978-4-336-06202-4

ページ数 348 頁   Cコード 3014

定価 5,060円 (本体価格4,600円)

内容紹介

 デュルケムの提出した問題構成を継承・発展させる試みが、さらに追求されなければならない。この問題意識のもとに、9.11テロ、大本、生駒山地、在日コリアンをフィールドとして、現代の聖と俗のあり方を調査する。
 第Ⅰ部ではデュルケムの理論を検討し、今日的な継承を試みる。また、第Ⅱ部以降の事例研究に対する理論的指標ともなる。
 第1章では、デュルケムの集合意識理論の応用を試みる。〈集合表象-集合力モデル〉によって、9.11同時多発テロからイラク戦争までの一連の政策決定と、マスコミと世論との結びつきの過程とを解明する(付英訳)。
 第2章では、デュルケムの儀礼論を、サイバネティクスより組み立てた〈集合力-象徴モデル〉によって分析し、このモデルの問題点をハレ-ケ-ケガレ図式とカオスの観点より確認する。
第3章では、バーガーの宗教社会学理論を検討し、デュルケム理論と比較したうえで、相互批判的な理論継承を試みる。
 第Ⅱ部では、現代日本の宗教、とくに京都市内の大本信者と生駒山地の宗教について検討する。
 第1章では、現代日本の宗教に意識面と構造面から接近。まずは世論調査のデータから日本人の宗教意識を探り、つぎに多様な日本宗教への分析的構造枠を仮説的に提示する。この構造によって日本宗教の諸形態を概説し、「宗教回帰」というトピックを分析する。
 第2章は芦田徹郎との共著である。既成宗教化した新宗教における信者の信仰意識を探るべく、京都市内の大本支部を対象に1979年に行った調査結果を、多くの図表を用いて報告。カリスマ的指導者亡き後、信仰が日常化していく様態を端的に表す事例である。
 第3章では、諸宗教が雑居し、都市大衆の現世利益に応える一大マーケットのごとき生駒山地の民族宗教を、石切神社から辻子谷をへて宝山寺にいたる山越えルートをたどって探訪する。
 第4章は、作家にして政治家、天台宗大僧正・今東光の著作に、生駒・八尾の民族宗教の記録を読み解く。
 第Ⅲ部は、在日コリアンの宗教調査が中心である。
 第1章では、とくに大阪の済州島出身者社会に焦点をあてて在日コリアンの宗教を紹介し、新たな文化創造の過程を追う。彼らの多様な宗教的状況を宗教集団の結合形態と文化機能の観点から整理し、文化の創造主体として捉え直す。
 第2章は、1980年代の調査(大川端、箱作海岸、韓国済州島)による、済州島出身者の民間賽神儀礼の記録である。
 第3章では、日本の純福音教会を調査し、巫俗(シャーマニズム)との関係を考察する。
 第4章では、韓国の宗教を概観し、日本の宗教と比較する。両国はともにシャーマニズムの土着信仰をもちつつ、同じ外来宗教を受容してきた共通の特徴をもちながら、個々の宗教の発展形態と連関構造はまったく異なっており、同種異型の関係にある。
 第5章は、カナダのコリアン教会を中心にした調査である。カナダのコリアン教会は紛争による分裂によって増大を繰り返しているが、そこには牧師のリーダーシップと信徒数の適正規模という問題がある。
 第Ⅳ部では、在日コリアンの民族まつりの創始(1980年代)、展開(1990年代以降)、およびその課題を概説する。創始期のまつりにおいて聖性を帯びた「民族」はユートピアとも表現でき、在日コリアンであることに誇りを与えた。展開期には日本人も参加するようになり、多文化共生政策とも相俟って、様々な民族まつりが全国で開催される。最後に、今後継続していくための課題を指摘。
 デュルケム理論を発展的に継承し現代的な展開を試みる、著者積年の研究成果を凝縮した集大成。

著者紹介

飯田剛史 (イイダタカフミ)

1949年、京都市に生まれる。
同志社大学文学部卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(文学)。
京都大学文学部助手、富山大学経済学部講師・助教授・教授、大谷大学文学部教授を経て同大学特別任用教授。富山大学名誉教授。
この間、京都大学にて内地研修、ヨーク大学、ブリティッシュ・コロンビア大学、ハーヴァード大学にて在外研究。
専攻は比較社会学、宗教社会学。
2016年没。

著書に『在日コリアンの宗教と祭り——民族と宗教の社会学』(世界思想社)、共著に『変貌する現代韓国社会』『宗教とナショナリズム』『現代社会学の諸理論』『社会心理学を学ぶ人のために』(以上、世界思想社)、『神々宿りし都市——世俗都市の宗教社会学』『生駒の神々——現代都市の民俗宗教』(創元社)、『社会学論集 持続と変容』(ナカニシヤ出版)、『宗教ネットワーク』(行路社)、『家族と墓』(早稲田大学出版部)、『現代生活と人間』(晃洋書房)、『民間信仰と民衆宗教』(吉川弘文館)などがある。

目次

【第Ⅰ部 デュルケム宗教社会学の視座と現代世界】
 第1章 9.11同時多発テロからイラク戦争へ
       ――「集合表象・集合力モデル」による解明
  第1節 デュルケムの「集合意識論」と「集合意識-集合力」モデルの構築
  第2節 9.11事件からイラク戦争へ
       ――「集合表象-集合力」モデルによる、政権・議会・世論の動態プロセスの解明
  第3節 「集合意識」は民衆の力か? 戦争を防ぐことは可能か?
 Chapter 1  From 9/11 to the Iraq War
         ――Elucidations through a “Collective Representation–Collective Force” Model
  Introduction
  I. Durkheim’s “Concept of Collective Consciousness” and Constituting the “Collective Consciousness–Collective Force” Model
  Ⅱ. From 9/11 to the Iraq War: Elucidations of the Dynamics of the Administration, Congress, the Media, and Public Opinion through the “Collective Representation
   ——Collective Force” Model
  Ⅲ. “Collective Consciousness,” the Force of the People? Is It Possible to Prevent a War?
 第2章 デュルケムの儀礼論における集合力と象徴
  はじめに
  第1節 デュルケム儀礼論へのアプローチ
  第2節 儀礼における集合力と象徴
  第3節 分析モデルをめぐる諸問題
 第3章 デュルケムとバーガーの宗教社会学――P. L. バーガーとデュルケム
  第1節 バーガーの宗教-社会理論
  第2節 デュルケムとバーガー――相互批判的考察

【第Ⅱ部 日本宗教の構造と諸相――大本・生駒】
 第1章 現代宗教の構造
  第1節 現代人の宗教意識
  第2節 日本宗教の構造
  第3節 日本宗教の諸形態
  第4節 現代の宗教状況
 第2章 新宗教の日常化――「大本」京都本苑4支部の事例
  第1節 対象と調査の概要
  第2節 社会的属性
  第3節 信仰の定着と家の宗教化
  第4節 コミットメントの強さによる信者類型
  第5節 信仰意識と日常生活の適合
  第6節 まとめ
 第3章 生駒の宗教・探訪
  第1節 民俗宗教・都市・生駒
  第2節 生駒の神々・探訪
  第3節 おわりに
 第4章 今東光と生駒・八尾の宗教
  第1節 今東光の作品にみる生駒・八尾の民俗宗教
  第2節 今東光の文学と天台仏教、真言立川流

【第Ⅲ部 コリアン宗教の諸相】
 第1章 在日コリアンの宗教――文化創造の過程
  第1節 在日コリアンの社会とネットワーク
  第2節 在日諸宗教の展開
  第3節 諸宗教の結合形態と文化機能
  第4節 在日コリアンの文化創造と日本社会
 第2章 水辺の賽神(クッ)――龍王宮・箱作・済州島
  はじめに
  第1節 龍王宮
  第2節 大川端での賽神儀礼(1988年9月2日)
  第3節 箱作海岸
  第4節 済州市チルモリ壇でのヨンドン祭
 第3章 在日コリアン社会における純福音教会と巫俗
      ――普遍的基層宗教としてのシャーマニズム
  第1節 在日コリアン社会における諸宗教
  第2節 在日コリアン社会の巫俗儀礼
  第3節 キリスト教会の展開
  第4節 純福音教会(日本フルゴスペル教団)の宣教活動
  第5節 その他の教会グループ
  第6節 普遍的基層宗教としてのシャーマニズム
 第4章 宗教的伝統とキリスト教の発展――韓日比較の視点より
  第1節 韓国宗教史の特質――支配的宗教の交替
  第2節 現代韓国の宗教状況――キリスト教の急発展
  第3節 韓・日宗教の比較考察
 第5章 トロントのコリアン社会とキリスト教会
  はじめに
  第1節 カナダ・トロントのコリアン社会
  第2節 コリアン・キリスト教会の展開――トロント韓人長老教会を中心に
  第3節 コリアン教会におけるリーダーシップと組織の問題

【第Ⅳ部 まつり】
 第1章 民族まつりの展開と課題
  はじめに
  第1節 民族まつりの創始(1980年代)
  第2節 民族まつりの展開(1990年代以降)
  第3節 民族まつりの課題

 参考文献一覧
 あとがき
 索引

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