シュウキョウカンタイワノフロンティア
宗教間対話のフロンティア
壁・災禍・平和
発売日 2015/09/11
判型 四六判 ISBN 978-4-336-05943-7
ページ数 468 頁 Cコード 0014
定価 4,400円 (本体価格4,000円)
真摯な宗教者とラディカルな学者が集い、真の宗教間対話を追求する実験的試み。日本宗教ネットワーク懇談会主催の3回のシンポジウムと懇談会メンバーによる6本の論考から構成される。
序章では、本山一博氏が宗教そのものの内容にまで踏み込む宗教間対話の意義を論じ、それを求道と位置づける。
第1~3部は、宗教そのものの内容にまで踏み込むため、教団に属する者が1個人として参加し、ラウンドテーブル形式で行われたシンポジウムである。
第1部は〈壁は乗り越えられるのか〉というテーマのもと、宗教対話そのものを論じるメタ宗教間対話を行うため、宗教間対話に精通した方々が登壇している。宗教間対話と一口にいっても、多様な形態や方法、目的があることが明らかとなる。
第2部は〈信仰と災禍〉という具体的なテーマを掲げた宗教間対話である。登壇者は宗教実践や社会活動に人生をかける宗教者である。小林正弥氏による全体討議によって、対話の場はフロアへと開かれていく。
第3部では〈宗教と平和〉というテーマのもと、登壇者に5つの問いが投げかけられる。登壇者がその問いに賛否を示してから対話を進めるという、マイケル・サンデル氏の〈対話型講義〉の手法を取り入れ、対話はさらにフロアへと開かれる。
第4部には〈宗教間対話の現在〉というテーマのもと、3本の論考を掲載する。
第9章で小林正弥氏は公共哲学の一類型であるコミュニタリアニズムの立場から宗教間対話の在り方ついて論究する。宗教間対話の意義はみずからの考え方を発展させ、共に真理・真実を探求するところにあり、〈地球的宗教性〉〈地球的霊性〉の発展に期待する。
第10章で峯岸正典氏は長年実践してきた東西霊性交流の氏にとっての意味を祖述し、宗教間対話や東西霊性交流の意義を明確にする。真剣に生活している宗教者に心を開いて近づき、自身の生活に反映させてこそ自己の信心が深まって整い、さまざまな宗教的立場の人たちが平和に暮らせる道が開けるのである。
第11章で斎藤謙次氏は世界各地で行われている宗教間対話のなかから、平和・生命倫理・災害者支援などの事例を取り上げ、異なる宗教を持つ人々の共存に向けた宗教間対話の現状と課題を考察する。〈宗教は生活に根ざした文化〉という視座のもと、一般市民にも分かる言葉で宗教間対話に取り組み、実践活動を積み重ねることの重要性を指摘する。
第5部には〈宗教間対話のフロンティア〉というテーマのもと、3本の論考を掲載する。
第12章で武藤亮飛氏は日本の宗教間対話を分析し、宗教間対話の実現可能性と困難さの境界(壁)を考察する。宗教間対話の混乱は参加者個々人が別々のイメージを持っているからであり、目的や優先事項に応じた対話のあり方の必要性を指摘する。
第13章で樫尾直樹氏は第1~3部に収録されたシンポジウムを、運営・内容・展開を中心に分析しながら、宗教間対話のアスペクトと壁、問いと設え、および進行の問題について考察し、宗教間対話の抱える課題と展望を提示する。
第14章で高柳正裕氏は20年にわたる宗教間対話歴を振り返りながら、硬直した自分自身の信仰を問い直すために宗教間対話に1個人として参加すること必要性を強調する。
互いの信仰の内容にまで踏み込む宗教間対話は求道である。他の宗教に学ぶことによって新たな視点を獲得し、自己の奉じる宗教への理解は深まっていく。論争や交流の先にある対話=相互理解=真の諸宗教融和を目指す、求道的挑戦!
樫尾直樹 (カシオナオキ)
慶應義塾大学文学部准教授(宗教学・比較瞑想論専攻)。
東京大学大学院人文科学研究科宗教学・宗教史学専攻博士課程修了。
早稲田大学・東京外国語大学助手、フランス国立高等研究院客員教授などを経て現職。
ReMS Japan日本総合瞑想センター、および慶應マインドフルネス・センターを主宰し、マインドフルネスと太極法(内丹法)を中心に瞑想の実践・指導を行う。
著書に『スピリチュアリティ革命』(春秋社)、『スピリチュアル・ライフのすすめ』(文春新書)、『文化と霊性』(編著、慶應義塾大学出版会)、『人間に魂はあるか?』『宗教間対話のフロンティア』『地球社会の新しいビジョン』(共編、国書刊行会)など多数。
本山一博 (モトヤマカズヒロ)
1962年生まれ。
玉光神社宮司。
IARP(国際宗教・超心理学会)会長、新日本宗教団体連合会理事、日本宗教ネットワーク懇談会座長。
東京工業大学理工学研究科後期博士課程単位取得退学。
著書に、『人間に魂はあるか?――本山博の学問と実践』(共編、国書刊行会)、『宗教間対話のフロンティア――壁・災禍・平和』(共編、国書刊行会)、『本山博著作集全15巻』(編集および解題、宗教心理出版、2008~2010)など。
小林正弥 (コバヤシマサヤ)
1963年生まれ。
千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。
地球環境福祉研究センター長。
著書に、『アリストテレスの人生相談』(講談社)、『サンデルの政治哲学』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」』(講談社+α新書)、『コミュニタリアニズムの世界』(共編、勁草書房)、『コミュニタリアニズムのフロンティア』(共編、勁草書房)など多数。
斎藤謙次 (サイトウケンジ)
1953年生まれ。
公益財団法人新日本宗教団体連合会事務局長。
立教大学法学部卒業。
シカゴ大学大学院神学校修士課程修了(専攻・宗教学)。
著書に、『現代世界と宗教の課題』(共著、蒼天社出版)ほか。
高柳正裕 (タカヤナギマサヒロ)
1956年生まれ。
学仏道場回光舎・舎主。
金沢大法文学部卒業後、政治思想活動、タクシー会社・鉄工所を経て、専修学院、大谷大学大学院修了。
東本願寺教学研究所に二十三年間勤務。
峯岸正典 (ミネギシショウテン)
1953年群馬県生まれ。
宗教間対話研究所所長。
上智大学で哲学を学んだ後、愛媛県新居浜市、瑞應寺専門僧堂・楢崎一光老師のもとで修行。
1982年からは聖オッテリエン大修道院にてベネディクト会修道生活を体験。
1985年、群馬県・弘誓山長楽寺二十七世として晋山。
大本山永平寺国際部講師、曹洞宗特派布教師等を歴任。
その間、国内外にて坐禅指導、講演活動にいそしむ。
著書に、『曹洞宗葬送作法集』(共編著、四季社)、『CDセレクション ラジオ深夜便「私の修行遍歴」~峯岸正典』(NHKサービスセンター)ほか。
武藤亮飛 (ムトウアキヒ)
1984年京都生まれ。
公益財団法人新日本宗教団体連合会職員。
筑波大学大学院人文社会科学研究科在学中。
はじめに
序 章 宗教間対話とはなにか――宗教的探求としての宗教間対話 本山一博
第一部 壁は乗り越えられるのか?――対話の現場から
第一部解題 本山一博
趣旨説明 樫尾直樹・司会 赤川惠一
第一章 現代世界と宗教間対話 小原克博・司会 赤川惠一
第二章 宗教間対話の現実 峯岸正典・三輪隆裕・鈴木孝太郎・司会 赤川惠一
第三章 壁は乗り越えられるのか?
小原克博・峯岸正典・三輪隆裕・鈴木孝太郎・高柳正裕・本山一博
司会 樫尾直樹
第二部 信仰と災禍――その不条理を問う
第二部解題 樫尾直樹
第四章 信仰と災禍
高柳正裕・千勝良朗・本田哲郎・ワンギーサ・渡辺順一・司会 本山一博
第五章 全体討議 司会 小林正弥・総括 峯岸正典
第三部 宗教と平和――今、この危機を乗り越えるために
第三部解題 武藤亮飛
第六章 宗教と平和をめぐる具体的な問いかけ
根本昌廣・後藤俊彦・園田善昭・高柳正裕・司会 小林正弥
第七章 全体討議 司会 小林正弥
第八章 危機を乗り越えるための平和観
根本昌廣・後藤俊彦・園田善昭・高柳正裕・小林正弥・司会 峯岸正典
第四部 宗教間対話の現在
第九章 公共哲学と宗教間対話――コミュニタリアニズム的観点から 小林正弥
第十章 東西霊性交流の試みとその展開 峯岸正典
第十一章 異なる宗教をもつ人々の共存――宗教間対話の現状と課題 斎藤謙次
第五部 宗教間対話のフロンティア
第十二章 宗教間対話研究の可能性――日本の宗教間対話の現状から 武藤亮飛
第十三章 実験的宗教間対話の課題 樫尾直樹
第十四章 宗教間対話の終焉――信仰の向こうへ 高柳正裕
おわりに
執筆者紹介