ヨアケ
夜明け
発売日 2012/05/16
判型 菊判 ISBN 978-4-336-05379-4
ページ数 351 頁 Cコード 0097
定価 4,950円 (本体価格4,500円)
日本翻訳出版文化賞受賞作。アラブ圏初のノーベル賞作家マフフーズの代表作『カイロ三部作』初完訳版の第3部。時代は1935年から44年までで、その間に第2次大戦が勃発し、イタリアがカイロを爆撃。その直後老衰したアフマド・アブドルワードが世を去る。孫たちが成人し、ヤーシーンがザイナブに生ませたリドワーンは栄達の道を歩み始めるが、政権交代で運命が狂う。ハディーガの長男アブドルムネイムはイスラム原理主義団体のムスリム同砲団に入り、次男のアフマドは左翼の活動家となる。
ナギーブ・マフフーズ
ナギーブ・マフフーズ(1911年12月11日―2006年8月30日)
マフフーズはエジプトの文豪、1988年にアラブ人の作家として初めてノーベル文学賞の栄冠に輝く。カイロ旧市街に下級官吏の末子として生まれ、長じてカイロ大学哲学科に入学、卒業後官吏と作家の二足の草鞋を履いたが、定年後文学活動に専念し、94歳の高齢で世を去るまで、35冊の長編、19冊の短編集などを発表。その中で特に彼の文名を高めたのが、56、57年に発表された大河小説『カイロ三部作』で、一連の社会的リアリズム小説を完成させた大作。その後の時代では、人間と宗教の関係を取り上げた『わが町内の子供たち』(1959年に新聞連載)、宗教と悪徳の問題に焦点を置いた『選民の詩』(1977年刊)が力作で、ともに寓意的、象徴的筆致で書かれており、また『三部作』に次ぐ大河小説。これらに加え、マフフーズは多くの野心作を次々と発表し、多岐にわたる傾向、スタイル、更に技法を大胆に発展させた。晩年になってからも 創造力は旺盛で、たとえばアラビアン・ナイトの後日談の形を取った『千夜の夜々(邦訳名シェヘラザードの憂愁)』が82年に刊行。彼は開明的作家で、西洋哲学を研究し、欧米文学を読み、社会主義にも共感を示したが、『わが町内の子供たち』の発表以来彼に反発していたイスラム過激派の分子により、94年襲撃されて負傷。短編の分野でも斬新な作品を多数創作し、最晩年になってからは夢想的な掌編を次々と発表。
塙治夫 (ハナワハルオ)
塙 治夫(はなわ はるお、1931年 - )は、外務省外交官を長く努め、現在はアラブ文学翻訳家。
茨城県生まれ。1952年外務省に勤務し、カイロでアラビアを学び、外交官としてアラブ諸国に赴任した。外交官時代にエジプトのノーベル文学賞作家ナギーブ・マフフーズ氏と知り合い、日本での翻訳を託された。退官後はアラブ文学を広めるため翻訳家として活動し、現在に至る。
マフフーズ作品の主な訳本は、短編「狂気の独白」、長編「バイナル・カスライン」、短編「ナギーブ・マフフーズ短編集」、長編「シェヘラザードの憂愁」、長編「泥棒と犬」
他に、「アブー・ヌワース飲酒詩選」
マフフーズとは1970年代に3回会った外、1989年にも会ってノーベル文学賞を授与されたことに祝意を述べた。