「パリに亡命中だったヴァルター・ベンヤミンは、本書に引用されたロカンボールシリーズから想を得て「パリ神話」の概念を編み出したロジェ・カイヨワにおそらくは刺激されて本書を繙き、『パリ・パサージュ論』のためのノートにメディア史の観点から抜き書きをしていた。その時代的制約も含め、本書にはいまだ多くの鉱脈が埋もれている。」
(レジス・メサック 著 石橋正孝 監訳/池田潤、佐々木匠、白鳥光、槙野佳奈子、山本佳生 訳)
近代性そのものとも言うべき「探偵小説」は、どこに起源を持ち、どのような紆余曲折を経て、ジャンルとしての結晶を見るに至ったのか? 古代に始まる膨大な文献を博捜し、通常の推理小説論では見られないような人名をも援用しつつ描かれる、その成り立ちの歴史。江戸川乱歩が熱いまなざしをそそぎ、ヴァルター・ベンヤミンが激しい関心を向けその『パサージュ論』で引用を繰り返した伝説的大著。