「新進作家の幹は歩くこと 陣野俊史氏が選ぶ一冊」(会員限定記事)
「乗代が書評している作品の作家を挙げれば、サリンジャーや柳田は当然として、フェルナンド・ペソア、木下古栗、ウラジーミル・ナボコフ、松本隆、レベッカ・ソルニット、いがらしみきお、森鷗外......と幅広い。おや、これでは、作家の資質がわからない......と、考え込んでいると、不思議なことに一つのテーマが浮かんでくる。それは「歩くこと」。歩いて移動することこそ、この作家にとって不可欠な運動なのである」
『掠れうる星たちの実験』(乗代雄介著)
サリンジャーの戦争体験と柳田國男の恋。終生秘められた「実験」の記憶から、文学への態度において不思議なほど似通う二人が追い求めた〈生きた「もの」〉を透視する驚異の批評。
第162回芥川賞候補作『最高の任務』に続く〝阿佐美家サーガ〟の特異点「フィリフヨンカのべっぴんさん」を含む書き下ろし/単行本未収録の掌編9本(総120枚)、実感に向かって書くこと、〈生きた「もの」〉の痕跡が「残される」ことをめぐる書評28編を併録。