評者はいずれもアンソロジストの東雅夫氏。
「当代幻想文学の旗手が、鏡花、澁澤と時を超えたタッグを組むことで、本叢書は新たな生命を
得た」
「初期作品のセレクトからは、澁澤が改めて岩波書店版『鏡花全集』と向き合った際に、鏡花作品
のどういう側面を注視したかが、おぼろげに見えてくる(中略)山尾の解説も、その部分の探求
に力点が置かれていて、しかも現在進行形というのか、巻を追うごとに核心に迫ってゆくような
構成が目論まれているフシがあって、愉しみである」
(『龍蜂集』)「過去に紹介されたいかなるファンタジーとも異なる古今独歩のテイストに満ちている」
「その真価については、訳者による次の一文を読むに如くはない。「何でも効率を追究し、無駄な
ことを冷笑する(中略)今の世の中に辟易している日本の読者こそ、現実主義者のリアリズム讃
に背を向けてキャベルのロマンスを読むべきではないか。今こそよやく世界がキャベルに追いつ
いたのだ」」
(『ジャーゲン』)泉鏡花/澁澤龍彦 編/山尾悠子 解説/小村雪岱 装丁
定価 9,680円(本体価格8,800円)
澁澤龍彦生前に企画されながらも実現を見ずに終った幻の選
集が、半世紀の歳月を経てついに刊行。我が国最高の幻想作
家・鏡花の膨大な作品から、澁澤ならではの鑑識眼が選び抜
いた約50篇を4巻で構成。
『ジャーゲン』〈マニュエル伝〉
J.B.キャベル/中野善夫 訳
定価 3,960円(本体価格3,600円)
行き掛かりに哀れな悪魔を助けた質屋ジャーゲン。返礼にと
消された口うるさい妻を仕方なく取り戻す旅に出る。奇想天外
な異世界を当代一流の口八丁と権謀術数を武器に快進する、
愛と冒険の喜劇的ロマンス。