評者は横浜国立大学教授の小宮正安氏
「自他ともに認める熱烈なワグネリアンだったマンデスは、ワーグナーの作品から受けたインスピレー
ションを基に小説を書き上げ、一世を風靡した。それが、今回初訳となった『童貞王』。」
「ワーグナー作品の特徴である、登場人物が過去の出来事を延々と語るという特徴が、もはや説話物
語という範疇をはるかに超えた規模を具えて、この小説に如実に反映されている。(中略)新たな時
代の童貞王が壮絶な死を遂げるエンディングは、さながらワーグナーの楽曲も顔負けの迫力である。」
『童貞王』
カチュール・マンデス/中島廣子・辻昌子 訳
定価 3,024円(本体価格2,800円)
バイエルンの「狂王」として名高いルートヴィヒ2世と、音楽界の巨匠リヒャルト・ワーグ
ナー、実在のこの二人をモデルにした長編小説、本邦初訳。俗世間から隔絶した人工
楽園に住む美貌の王フリードリヒ2世と、魔的な天才作曲家ハンス・ハンマー――19世
紀末を舞台にした、〈耽美主義者と魔術師〉の聖なる物語。