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書籍詳細

グッドモーニングゴジラ

グッドモーニング、ゴジラ

監督 本多猪四郎と撮影所の時代

樋口尚文

発売日
2011/06/15
判型
四六判
ISBN
978-4-336-05404-3
ページ数
296頁

定価 2,530円(本体価格2,300円)

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内容紹介

 第二次大戦後の日本映画界における「撮影所システム」は、それ以前の「映画作家」たちが割拠した時代の表現の自由さを、製作と興行からの要請でかなり束縛するものであったが、その一方で、多くの人材をそこに抱え込むことによって映画技術全般を高い水準で次世代へと伝えていく環境でもあった。「撮影所監督」と呼ばれる企業内の「職人」たちは、「作家」と比較して、そのような撮影所の不自由さと豊かさをもろともに体現している存在と言える。本多猪四郎監督の『ゴジラ』は、プロデューサー・システムの中のお仕着せの企画だったという点で当然ながら撮影所の不自由さを反映しているし、しかしながら逆に言えばこのような大掛かりな人材と費用を要する技術的な試みは、当時の撮影所の豊かさを背景としなければとても実現しなかった事でもある。
 本書ではそのような不自由さと豊かさが同居していた撮影所の消長を軸に、企業内の「職人」本多猪四郎、本多監督の盟友でありタイプの異なるもうひとりの「職人」黒澤明、彼らを育てた師である「作家」山本嘉次郎の関係を通して、「職人」と「作家」を映画作法の上で大きく隔てるものは何なのか、「職人」たちは撮影所の中で何を求められ、どんな形でその枠をも越えた作品を生み出していったのか、撮影所に招かれた「作家」たちはその後どのように自己主張をし続けたのか、不自由さの多い「職人」たちの映画づくりにおける美徳とはなんだったのか……そのような問いにあれこれと迂回する。したがって、この風変わりな「年代記」は、時によって批評のようでもあり、物語のようであるかもしれない。

著者紹介

樋口尚文 (ヒグチナオフミ)

映画評論家、映画監督。著作に『秋吉久美子 調書』(秋吉久美子共著・筑摩書房)、『実相寺昭雄 才気の伽藍――鬼才映画監督の生涯と作品』(アルファベータブックス)、『万華鏡の女――女優ひし美ゆり子』(ひし美ゆり子共著・筑摩書房)、『黒澤明の映画術』(筑摩書房)、『「砂の器」と「日本沈没」――70年代日本の超大作映画』(筑摩書房)、『大島渚のすべて』(キネマ旬報社)などがある。

目次

第一部 撮影所の時代
 『ジゴマ』の年に生まれて
 森岩雄ともうひとつの「金曜会」
 P・C・L入社と青春の蹉跌
 P・C・Lから東宝映画へ
 山本嘉次郎の「作家」性
 成瀬巳喜男の静かな抵抗
 山中貞雄と『人情紙風船』余話
 滝沢英輔と渡辺邦男のこだわり
 黒澤明、谷口千吉と助監督群像
 プロデューサー・システムと「東宝カラー」
 戦場で見た『馬』
 映画を忘れた争議の嵐
第二部 監督 本多猪四郎
 映画芸術協会と『野良犬』のころ
 デビュー作と『羅生門』
 プロデューサー・システムの再建
 円谷英二との出会い
 『ゴジラ』前夜の模索
 『ゴジラ』の光と影
 量産時代と幻の企画
 特撮との蜜月が終わる
 斜陽期の「ヒットメーカー」として
 廃墟にて
  復刊によせて──二十年後の長いあとがき
  本多猪四郎フィルモグラフィー