書籍詳細

ゲッコウノシゴト
月光の仕事
中村邦生小説選
- 発売日
- 2025/09/25
- 判型
- A5判函入
- ISBN
- 978-4-336-07799-8
- ページ数
- 664頁
定価 6,380円(本体価格5,800円)
内容紹介
われ知らず、異世界へ――
二度の芥川賞候補から出発し、
さらなる問題作の地平を開く。
初期作から最近作まで文学的軌跡のベストセレクション。
解説・柴田元幸
「冗談関係のメモリアル」(文學界新人賞)、「ドッグ・ウォーカー」「森への招待」(芥川賞候補作)ほか全30作品収録。
絡まる人間関係や血縁の綾を志向し、ふと地軸がゆがみ磁場が狂うように異界へと滑り込む初期作品群。また、私小説的な味わいがいつのまにか幻想譚に、ユーモアを湛えてときにグレン・グールドや漱石、さらにはひとならぬ青虫までもが語りだす短篇群。発想の自在さに加え、綿密な観察からくる巧みなディテール表現と該博なる引用を真骨頂とし、なにより映像的な余韻が心に沁みいる。初期作から最近作までを網羅したベスト自選集。
今ここに魅力をあますことなく味わう一冊、豪華函入り愛蔵版。
「中村邦生の小説世界は「陽」「昼」から「月」「夜」への移行を基本としている」
「この作品集が、独自の小説倫理と美学と魅力を有するこの書き手の正当な評価に向かう大きな一歩となることを願う」
(柴田元幸「解説」より)
著者紹介
中村邦生 (ナカムラクニオ)
小説家・英米文学者。1946年東京都生まれ。一時北海道にて育つ。都市出版社(旧)編集部を経て、立教大学大学院修士課程修了、博士課程満期退学(英米文学専攻)。1993年「冗談関係のメモリアル」で文學界新人賞受賞、1994年「ドッグ・ウォーカー」及び1995年「森への招待」で芥川賞候補となる。以後も新たな試みの問題作を発表、『転落譚』『幽明譚』『ブラック・ノート抄』『変声譚』は〈譚〉四部作を成す。一方、小島信夫論をはじめ文芸批評にも多くの論考・著述がある。大東文化大学文学部に勤務し、現在は名誉教授。
小説
『月の川を渡る』(作品社、2004)
『風の消息、それぞれの』(作品社、2006)
『チェーホフの夜』(水声社、2009)
『転落譚』(水声社、2011)
『風の湧くところ』(風濤社、2015)
『幽明譚』(水声社、2022)
『ブラック・ノート抄』(水声社、2022)
『変声譚』(水声社、2024)
評論・エッセイ・その他
『〈つまずき〉の事典』(編著、大修館書店、1993)
『〈虚言〉の領域』(ミネルヴァ書房、2004)
『生の深みを覗く』(編著、岩波文庫、2010)
『この愛のゆくえ』(編著、岩波文庫、2011)
『書き出しは誘惑する』(岩波ジュニア新書、2014)
『推薦文、作家による作家の』(編著、風濤社、2018)
他多数
目次
Ⅰ
月光の仕事
残景
泣き塾
夜はめぐる
月の川を渡る
穴に落ちる――〈土龍庵〉にて作家Nが語る
Ⅱ
冗談関係のメモリアル
夜に誘われて
黄昏の果て
もののけ、ようこそ
そうと知れば、音楽会へ行くべきか――夏目金之助が語る
ナツメさん、お席を用意しておきます――グレン・グールドが語る
Ⅲ
ドッグ・ウォーカー
森への招待
ホワイト・ブック
午睡の部屋
もっと音を大きくしてください
亀とカマキリと――Nが語る
あの少年のことなら、よく覚えている――カマキリが語る
Ⅳ
チェーホフの夜
ネヴァ川からどこへ
なつかしい場所など、訪ねてはいけない
シマウマ模様のような
ABCビスケット――石ころが語る
ビョンスおじいちゃんと犬の話
かーやんは、こんな人だった
虫めづる姫君よ、助けをこう――青虫が語る
ソンザ、イノコドクって、どういう意味?――不二家の店頭人形ペコちゃんが語る
悪霊封じ、ひーふーみー、よいむなやー
バス停にて
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〈ブラック・ノート〉より
ブラック・ノートについて/「心中の声」に耳をすます/はやり正月/アヒルの味わい/幽景/赤信号を渡る/ロンドン・バークリー・スクウェア事件/古文書を発掘した
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解説 柴田元幸