書籍詳細


ウクライナギキョクシュウ
ウクライナ戯曲集
- 発売日
- 2025/03/13
- 判型
- 四六判
- ISBN
- 978-4-336-07729-5
- ページ数
- 344頁
定価 3,080円(本体価格2,800円)
内容紹介
瑞々しい感性や粘り強い諷刺精神、生の情熱や反骨精神、台詞や行間から響く多彩な声や身振りに彩られたその舞台言語。新しい文学や芸術の道を懸命に探ろうと奮闘した19世紀末から20世紀初頭のウクライナ文学の特質をよく表し、現代にも通じる芸術的・社会文化的問題を提起する『盗まれた幸せ』『カッサンドラー』『リリス』の3作品を本邦初紹介。
◆盗まれた幸せ(イヴァン・フランコ)
舞台はウクライナの架空の村。刹那に生きるグルマン、ことばにできない不安にかられるアンナ、古い世代を体現するミコラらのやりとりに混じって、行き詰まった社会状況のなかに新しい時代の到来を求める若者たちの声が響く。初期モダニズムの要素が表れた、フランコの劇作の頂点に立つ作品。
◆カッサンドラー(レーシャ・ウクラインカ)
預言者のことばによって出来事が生じるのか、出来事が予言のことばに作用するのかがカッサンドラー自身わからないがゆえに、彼女はだいじなときに黙っている、トロイアが滅亡することを本能と直感で知っていながら……。ギリシア悲劇には描かれていない新しいカッサンドラー像を描いた劇的叙事詩。
◆リリス(ミハイリ・セメンコ)
美しい言葉を用いるが気の弱い「第一の男」と、野卑だがリリスの熱情に強く応えてくれる「第二の男」によるリリスを獲得しようとする戦い。神秘的かつ幻想的雰囲気のなかに、カーニバル的かつ映像的な空間をも取り込み、情熱的な魔性の女リリスの悲恋を前衛的表現を全篇にちりばめて描いた詩劇。
著者紹介
村田真一 (ムラタシンイチ)
1959年岩手県生まれ。東京外国語大学大学院外国語学研究科スラヴ系言語専攻修士課程修了。上智大学外国語学部教授、同大学院言語科学研究科委員長。ウクライナ国立ポルタヴァ教育大学及び古典私立大学名誉教授。国際スラヴィスト会議日本委員、日本スラヴィスト協会会長、日露演劇会議理事長、ウクライナ゠日本スラヴ学会会長。専門、スラヴ域の文学・演劇・文化。ロシア・ウクライナ・ポーランドなどの文学・演劇に関する論文を国際学会を中心に数多く発表。
主な著著・訳書に、The Reception of East Slavic Literatures in the West and the East, Firenze University Press, 2023(編共著)、Интермедиальная поэтика авангарда, Белградский университет, 2018(編共著)[『アヴァンギャルドの芸術的媒介性の詩学』、ベオグラード大学]、『文学とアダプテーション――ヨーロッパの文化的変容』(2017年、春風社、編共著)、『新装版 ブルガーコフ戯曲集1・2』(2014年、東洋書店新社、監訳)、Сборник современных японских пьес 1・2, Омский университет, 2002/2006(訳書)[『現代日本戯曲集1・2』、オムスク大学、日露演劇会議編]などがある。
目次
はじめに――ウクライナ文学を紹介する意義――(村田真一)
ウクライナのイメージを切り拓く(タマーラ・フンドロヴァ)
ウクライナ再発見(オルハ・ニコーレンコ)
盗まれた幸せ(イヴァン・フランコ)
カッサンドラー(レーシャ・ウクラインカ)
リリス(ミハイリ・セメンコ)
ウクライナの演劇――モダニズムを中心に――(村田真一)
作者・作品解説
あとがき