書籍詳細
センノウ・インボウロン・ユーエフオーカルト
洗脳・陰謀論・UFOカルト
- 発売日
- 2024/12
- 判型
- 四六判
- ISBN
- 978-4-336-07554-3
- ページ数
- 425頁
定価 3,960円(本体価格3,600円)
内容紹介
本巻には、近現代日本のオカルト思想の概略を実体験も交えてたどる論文とインタビュー、そして洗脳、虚偽記憶、陰謀論、UFOカルトに関する論文を収める。
第1部では、日本のオカルト史が著者の来歴とともに語られる。
第1章では、日本における「カルト的場(cultic milieu)」について、背景となる世界観と明治から1990年代までの歴史とを概説する。メタフィジカル思想は日本の霊的思想にアイディアを供給し続けたのであるが、日本の特徴は効果優先の発想にある。
第2章では、著者自身の歩みを、前半の「高校時代から大学院まで」と後半の「オカルト史の立場」に分けてインタビュー形式で回顧する。著者のオカルト史という視座と対象との距離感が窺える。
第2部には、カルト教団の洗脳と、虚偽記憶に関する論文を収める。
第3章では、カルト教団が行っているとされる「洗脳」なるものの虚妄性を暴く。
第4章では、宗教と心理学における洗脳とその類似概念が受けた評価について、前史である回心論から洗脳・マインドコントロール論、そして多重人格論とトラウマ論まで、アメリカとイギリスの事例を中心に概観する。
第5章では、悪魔教カルトという都市伝説の拡大と事件の推移、事件を生んだ社会的要因を紹介してその世俗性を指摘し、最後にUFOによる誘拐事例と比較することによって、その都市伝説誕生の仮説を述べる。
第3部には、陰謀論とUFOカルトに関する論文を収める。
第6章は、18世紀後半から19世紀にかけての欧米におけるイリュミナティ、ユダヤ・フリーメーソン陰謀論の略史である。
第7章では、西暦2000年を前にして教団による死傷事件が世界的に頻発したが、そのなかでも集団自死事件を起こしたUFOカルト〈ヘヴンズゲイト〉の教義を分析し、この運動が終末論やファンダメンタリズム、陰謀論などという現代アメリカの文化的要素と連動していることを示す。
第8章では、アメリカと日本の代表的なUFOコンタクティーを、オカルト史上に位置づける。
第9章では、UFO界から発生した陰謀論の奇妙な歴史と、日本への波及について考察する。
編者解説では、当事者中の当事者である横山茂雄がみずから筆を執り、複数の関係者からの証言も得て、在籍当時の「京都大学UFO超心理研究会」の〈カルト的場〉と、伝説の雑誌『ピラミッドの友』の歴史を描き切る。
新領域を開拓し続けた「宗教雑学王」による、「類似宗教」研究の集大成。
著者紹介
吉永進一 (ヨシナガシンイチ)
1957-2022年。
舞鶴工業高等専門学校元教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程宗教学専攻学修退学。
主な業績:『日本人の身・心・霊』(復刻版編集、クレス出版、2004年)、『催眠術の黎明』(復刻版編集、クレス出版、2006年)、Religion and Psychotherapy in Modern Japan, (Routledge Contemporary Japan Series, 54) (Routledge, 2014, 共編)、『ブッダの変貌』(共編、法藏館、2014年)、『近現代日本の民間精神療法』(共編、国書刊行会、2019年)、『日本仏教と西洋世界』(共編、法藏館、2020年)、『神智学と仏教』(法藏館、2021年)、『術と行の近代』(復刻版共編、クレス出版、2021年)、『神智学とアジア』(共編、青弓社、2022年)、『増補改訂 近代仏教スタディーズ』(法藏館、2023年)。
横山茂雄 (ヨコヤマシゲオ)
1954年大阪府生まれ。別名:稲生平太郎・法水金太郎。京都大学文学部卒、博士(文学)。英文学者、作家。横山名義の著書に『聖別された肉体 オカルト人種論とナチズム』(書肆風の薔薇/増補版:創元社)『異形のテクスト 英国 ロマンティック・ノヴェルの系譜』(国書刊行会)、『神の聖なる天使たち ジョン・ディーの精霊召喚一五八一~一六〇七』(研究社)、訳書にマーヴィン・ピーク『行方不明のヘンテコな伯父さんからボクがもらった手紙』、ヒレア・ベロック『子供のための教訓詩集』、ジョン・メトカーフ『死者の饗宴』(北川依子と共訳)、ウィリアム・フライアー・ハーヴィー『五本指のけだもの』(いずれも国書刊行会)、編著に『遠野物語の周辺』(国書刊行会)、『危ない食卓 十九世紀イギリス文学にみる食と毒』(新人物往来社)など。稲生名義の著書に『何かが空を飛んでいる』(新人物往来社/定本版:国書刊行会)、『アクアリウムの夜』(書肆風の薔薇/角川スニーカー文庫)『アムネジア』(角川書店)、『映画の生体解剖』(高橋洋と共著、洋泉社)、『オカルトがなぜ悪い!』(井村宏次・吉永進一と共著、ビイング・ネット・プレス)など。
目次
はじめに 横山茂雄
Ⅰ 一九七〇~九〇年代のカルト的場――或る「類似宗教学者」の回想
第一章 日本の霊的(スピリチュアル)思想の過去と現在――カルト的場の命運
第二章 余はいかにして「類似宗教学者」になりしか――吉永進一インタビュー
Ⅱ カルトと洗脳
第三章 US新宗教団体(カルト)洗脳説を洗う
――信者は本当に人格を変えられてしまうのか?
第四章 回心と洗脳――救済と心理学の関係について
第五章 記憶の中の悪魔――「悪魔教恐怖」論
Ⅲ 陰謀論とUFOカルト
第六章 ユダヤ・メーソン陰謀論の誕生
第七章 円盤と至福千年――ヘヴンズゲイト論
第八章 円盤に乗ったメシア――コンタクティーたちのオカルト史
第九章 陰謀論と円盤をめぐる、二、三の事柄
初出一覧
編者解説 横山茂雄
註
通巻人名・団体名索引