書籍詳細
ルーシー・ボストン
ルーシー・ボストン
館の魔法に魅せられた芸術家
- 発売日
- 2022/12/09
- 判型
- A5判
- ISBN
- 978-4-336-07382-2
- ページ数
- 520頁
定価 4,180円(本体価格3,800円)
内容紹介
長らく待望されていた作家・芸術家ルーシー・ボストンの評伝集、ついに完成!
ルーシー・M・ボストン(Lucy Maria Boston 1892-1990)は、「グリーン・ノウ物語」シリーズなどの児童文学や詩の創作、パッチワーク制作、庭園造り・古代種薔薇の育苗、絵画、音楽など、いくつもの芸術分野それぞれにおいて並外れた作品と足跡を残した、英国文化の神髄を体現する英国の作家・芸術家である。あらゆる芸術活動の源泉となったのはザ・マナーと呼ばれるケンブリッジ州郊外のヘミングフォード・グレイ村にある築900年に及ぶ館だった。40代後半に購入して復元的に改装、97歳で没するまで、ボストンは暮らしと手仕事や多様な芸術活動とが分かち難く結びついた日々をそこで送り、数々の作品を生み出した。
その芸術活動には、日本の宮沢賢治、英国のウィリアム・モリス、米国のターシャ・テューダーにもひけをとらない豊かさがある。それにもかかわらず、それぞれの活動が幾重にも重なり響き合っているために、まとまった評伝を書くのは至難の技であり、これまでなかなか日の目を見ずにいた。本書は、日英の多様な執筆者の寄稿によってその困難を乗り越え、ボストンの芸術活動の全貌にさまざまな角度から光を当てることを可能にした、意欲的試みである。オールカラーの口絵12ページほか、秘蔵の図版や写真も多数掲載し、視覚的にも楽しめる読み物に仕上げた。
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著者紹介
田中美保子 (タナカミホコ)
東京女子大学で翻訳学と現代イギリス児童文学を講じながら、児童文学とYA文学の翻訳紹介や研究を行なっている。1986年にザ・マナーを初訪問しボストンと対面、2013年に「ルーシー・ボストン・プロジェクト」を立ち上げて以降、冊子編集、論文執筆や翻訳等でボストンの作品や生涯の紹介に務めてきた。主著にAspects of the Translation and Reception of British Children’s Fantasy Literature in Postwar Japan(音羽書房鶴見書店)など。
安藤 聡 (アンドウサトシ)
明治学院大学文学部英文学科でイギリス文学入門、英米児童文学、イギリス文化研究などを担当している。主著に『ファンタジーと歴史的危機』、『ファンタジーと英国文化』、『ナルニア国物語 解読』、『英国庭園を読む』(以上、彩流社)、『英国ファンタジーの風景』(日本経済評論社)、『英語と英国文化をめぐる無駄話』(平凡社)など。
目次
はじめに(田中美保子)
凡例
ルーシー・ボストンとその生涯(ダイアナ・ボストン/林望訳)
第一部 文学作品
1 ルーシー・ボストン ―― 生まれながらの児童文学作家(田中美保子)
2 古きよき静寂の音 ―― ルーシー・ボストンと「グリーン・ノウ物語」シリーズの世界(ヴィクター・ワトソン/田中美保子訳)
3 ルーシー・ボストン「グリーン・ノウ物語」シリーズ ―― 文学ジャンルのパッチワーク(キャサリン・バトラー/香川由紀子訳)
4 「グリーン・ノウ物語」シリーズにおける語り、音、時間(菱田信彦)
5 グリーン・ノウの音、匂い、手触り ―― 「グリーン・ノウ物語」における場所の感覚と身体感覚(磯部理美)
6 ほこりをかぶった箱 ―― 怪奇小説に着目して(ブライアン・J・シャワーズ/海老塚日菜子訳)
7 文学作品と挿絵
(1) ピーターの挿絵(ダイアナ・ボストン/田中美保子訳)
(2) とびきり幸せなパートナー ―― ルーシー・ボストンとピーター・ボストン(ヴィクター・ワトソン/田中美保子訳)
8 生の息吹、悲喜こもごもに ――「グリーン・ノウ物語」シリーズ以外のルーシー・ボストン作品(ヴィクター・ワトソン/香川由紀子訳)
9 熱く細やかな眼差し ―― ルーシーの詩(ジル・ペイトン・ウォルシュ/山内久明訳)
第二部 その他の芸術作品
10 ルーシーとパッチワーク作品
(1) ルーシー・ボストンとそのパッチワークについて(ダイアナ・ボストン/林望訳)
(2) 緒言(ルーシー・ボストン/林望訳)
(3) ルーコック博士のパッチワーク ―― あとがきにかえて(林望)
11 針仕事に見るルーシー・ボストンの人生と文学(香川由紀子)
12 ルーシー・ボストンの庭(安藤聡)
13 ルーシーの庭造り〈インタビュー〉(ダイアナ・ボストン/小川晶子訳)
14 ルーシー・ボストンの絵画(ダイアナ・ボストン/前野咲訳)
第三部 ボストンをめぐって
15 ルーシー・ボストンが愛した二つの音楽(鳥越けい子)
16 ザ・マナーの音をめぐる追憶〈講演録〉(林望)
17 ルーシー・ボストンさんからの手紙(長沼登代子)
18 ルーシー・ボストンの想い出
(1) ルーシー・ボストンを偲ぶ〈メモリアルサービス〉(ピーター・ホリンデイル/山上紗苗訳)
(2) ルーシーの想い出(ケネス・ボストン/山上紗苗訳)
(3) 間奏曲 ―― グレイト・ウーズ川は静かに流れる(ケネス・イースト/𠮷野光訳)
(4) 幼いころの思い出(フランシス・リネハン/前野咲訳)
19 ルーシー ―― 時を経て振り返ると(ジル・ペイトン・ウォルシュ/𠮷野光訳)
20 ルーシー・ボストンからの伝言〈講演録〉(ルーシー・ボストン/田中美保子訳)
おわりに ―― ルーシー・ボストンの生きた時代(安藤聡)
謝辞
ルーシー・ボストン年譜
ルーシー・ボストン家系図
ルーシー・ボストン著作および関連図書資料一覧
索引