書籍詳細
サントウブジュツトウロウケン
山東武術螳螂拳
- 発売日
- 2022/10/21
- 判型
- A5判
- ISBN
- 978-4-336-07374-7
- ページ数
- 490頁
定価 8,800円(本体価格8,000円)
内容紹介
山東省に生まれいまや世界全域に広く普及している、中国を代表する武術、螳螂拳。「転瞬閃身」「連撃手法」と称される俊敏な動きと連続攻撃を特徴とするこの武術はなぜ山東省で成立したのか――。長い歴史が育んだ山東の武侠精神、倭寇との関わり、社会情勢のめまぐるしい変化、民間秘密宗教組織の台頭……。日本を代表する螳螂拳の第一人者が歴史、文化背景と技法を架橋しその成立過程と真の歴史を明らかにする決定版通史。
著者紹介
根本一己 (ネモトカズミ)
1960年東京都出身。1976年より日本太極拳協会で中国武術の基礎となる長拳及び羽田稔にハルピン孫亮亭系少林拳を学ぶ。その後国内の拳友らと交流を深め、1981年より上海の馮如龍、王菊蓉をはじめ、瀋陽の徐其成らと交流し、査拳、螳螂拳を学ぶ。1984年第1回全日本太極拳・中国武術表演大会拳術部門2位。1989年はじめて山東省煙台市を訪れ、「莱陽三大山」と謳われた王玉山の息子である王元亮に入門し、宋子徳系太極螳螂拳を学ぶ。また翌年の1990年より日本老螳螂拳研究会を主宰し同好の拳友らと螳螂拳の原点を求め活動を開始。師亡き後の2002年以降も山東青島、莱陽、海陽に訪問を続け、螳螂門各派の老師と交流し、現在もその原点となる螳螂術を研究中。2019年「第一回日本国際螳螂拳論壇交流」を主宰し、台湾雲海武壇傳藝中心の若手の老師と東京で日本初の論壇形式の交流会を開催。著書に『螳螂拳大要』(福昌堂)、映像にDVD「山東螳螂拳の大要(全2巻)」(BABジャパン)などがある。
目次
はじめに
1 現代の中国武術観
2 武術──共同体の自衛手段からの発展
第一章 山東武術の気質とは──歴史のレイヤーを探る
第一節 山東省と山東人
1 山東省とは? その概要
2 山東省を構成する二つのエリア
3 山東の人々の気質が生んだ山東武術
第二節 現代に続く中華帝国の原型──明朝
1 明朝の山東
2 元朝から大明帝国へ
3 明帝国が創り出した近代中華帝国の原風景
第三節 山東を巻き込んだ明朝の大きな戦禍
1 靖難の役
2 唐賽儿の起義
3 高煦の反逆
4 徐鴻儒の反明蜂起
5 大清軍の侵入
6 李自成の乱
7 于七の乱
第四節 山東武術の基礎を築いた清朝の統治
1 大清帝国との闘争
2 清朝の統治制度
3 軍事制度
第五節 清代の社会と経済発展の変化
1 農業経済の回復への施策
2 農業の回復と発展
3 資本主義経済の萌芽
4 商業経済の繁栄と興隆
第六節 西側資本主義の山東侵略の影響
第七節 清朝後期の社会資本と経済の変化
1 煙台・青島・済南の港湾都市経済の台頭
2 商人資本の台頭
第八節 清代中期社会矛盾の激化と封建体制への反対闘争の下地の形成
1 土地の併合と官吏の廃退
2 租税搾取に対する農民闘争の発展
第九節 清代に起きた農民の蜂起
1 王倫による清水教の武装蜂起
2 太平天国と捻軍の武装蜂起による山東への影響
3 民間秘密宗教の反清闘争の興隆
4 運河両岸の幅軍の反清闘争
5 魯西南での長槍会の蜂起
6 鄒県での文賢教(教軍)の蜂起
7 宋景詩による黒旗軍の挙兵
8 淄川──劉徳培の蜂起
第十節 帝国主義の山東侵略と軍事政治の激化
1 日清戦争(中日甲午戦争)
2 ドイツの膠州湾侵略
3 山東民衆の反キリスト教闘争
4 曹県での大刀会の反キリスト教闘争
5 沂州での反キリスト教闘争
6 平度、威海、即墨の反キリスト教闘争
第十一節 山東義和団運動の勃興と反帝国主義闘争
1 義和拳──義和団の始まりと蜂起
2 趙三多、閻書勤が指揮する義和団の闘争活動
3 朱紅灯が指揮する義和団の反帝国主義闘争
4 山東における義和団運動の全面展開
第十二節 中華民国期、山東独立の失敗
第十三節 山東の五四運動
第十四節 農村経済の衰退と農民運動の勃興
第十五節 韓復榘の山東省統治
第二章 中国人と江湖社会のレイヤーを探る
第一節 中国社会の二面性
1 江湖とは何か
2 江湖組織の発生──太平道、五斗米道
3 道教の国教化
4 外国宗教の秘密宗教化
5 秘密宗教と秘密幇会
第二節 民間秘密宗教
1 明教(マニ教)
2 白蓮教
3 八卦教
4 一貫道
第三節 民間秘密幇会
1 天地会
2 哥老会
3 青幇
第四節 江湖世界の様々な職業
1 神仙方士
2 江湖術士
3 江湖郎中
4 江湖騙子
5 江湖乞討(物乞い)
6 土匪(強盗)
第五節 江湖芸人──武芸人
1 武術の売買(売芸)
2 鏢局の源流
3 鏢局・保鏢の実態
4 鏢師の武術は役に立たなかったのか
第六節 江湖──独り行く道
第七節 中華民国時代──江湖から黒社会への胎動
第三章 膠東の中心――煙台の武術
第一節 かつての膠東の中心、煙台
第二節 膠東武術地区に伝わる武術要領
1 武林の友を訪ねる
2 口語で伝わる武術の要領
第四章 膠東武術に影響を与えた名門武術
第一節 太祖長拳
1 技術風格と特徴
2 太祖長拳の伝導者──李栄徳
3 太祖長拳の主な伝人
第二節 秘宗長拳
1 技術風格と特徴
2 秘宗長拳の伝入者──蘇明遠
3 栖霞の秘宗長拳
4 秘宗長拳の主な伝人
第三節 八卦掌
第五章 山東膠東から世界へ発展した螳螂武術
第一節 莱陽螳螂拳
1 螳螂拳起源考
2 螳螂拳の発祥──清朝乾隆年間の莱陽
3 李秉霄と升霄道人
4 「少林衣鉢真傳」は螳螂拳の重要理論の源である
5 莱陽の螳螂拳の発展段階の考察
6 螳螂拳は何故このように迅速に伝播されたのか
7 非物質遺産である螳螂拳の伝承と推進
第二節 莱陽螳螂拳──膠東からの伝播の概況
1 煙台地区への螳螂拳伝播
2 青島への伝播
3 東北三省への伝承
4 南方への伝播と名人の輩出
5 莱陽螳螂拳発掘整理の顛末
6 莱陽螳螂拳非物質遺産申請(申遺)
第三節 螳螂門主要拳派
1 梅花螳螂拳(老螳螂拳)
2 太極螳螂拳
3 七星螳螂拳
4 六合螳螂拳
第四節 人物伝記
1 螳螂拳宗師小伝
2 螳螂拳近世名家小伝
3 螳螂拳現代名人小伝
4 螳螂門の奇伝故事
第五節 山東武術と螳螂拳が求めた武徳
1 武徳の修養(「老煙台武術」より一部意訳引用)
2 武術の人文精神──武徳(「莱陽螳螂拳」より意訳引用)
3 武術大道徳行天下(于永波)
4 武徳を尊ぶ螳螂拳の「八打八不打」の要訣
第六節 螳螂武術の発展と文化変遷の考察
1 莱陽螳螂拳の兄弟拳
2 以武会友の文化的意義についての考察
3 非物質文化「遺産」となった現代螳螂拳の考察
あとがき
参考・引用文献
索引
コラム 大明帝国の憂い──南倭北虜
コラム 傑出した活躍を見せた戚継光
コラム 中央国術館の成立
コラム 李丹伯の記念碑の発見
コラム 煙台十大拳師