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書籍詳細

ズイヒツシュウ イウテセンナキコトノキ

随筆集 言うて詮なきことの記

羽毛田信吾

発売日
2020/01/23
判型
B6変型判
ISBN
978-4-336-06591-9
ページ数
240頁

定価 1,980円(本体価格1,800円)

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内容紹介

厚生事務次官・宮内庁長官を歴任し、現在は昭和館館長である元官僚が人生の折節に書き綴った珠玉の“由なしごと”九十八篇。

―厚生省退官に際して、記者から尋ねられるままに「三十六年間の公務員生活を顧みて、ひとすじの純情を保ち得たかを自らに問うている」と述べたところ、某紙のコラムで取り上げられた。私としては、その時の心情を正直に語ったつもりだったが、少しばかり感傷に過ぎたかなと気恥ずかしくもあった。
貧乏と向き合った仕事がしたいというだけの素朴な動機で、しかし、それなりに熱い思いを秘めて、この役所に入ったのだったが、どっこいそう単純ではなかった。(......)凡人の悲しさで目前の難題をこなすのに手一杯となり、何のための、誰のための制度かという基本に思い及ばぬ場面もなかったとは言えない。しかし、心の隅では、かくてはならじという思いを常に持ち続けていたつもりだった。
(本文より)

―日がな一日子供と遊び暮らしたとされるあの良寛に『戒語』という、べからず集のようなものがあって、この中に慎むべきこととして「言うて詮なきこと」が挙げられている。ちょっと見には、「言うて詮なきことは言わず」ならば努力すれば何とかなりそうに思われる。だが、これもいざ実行となると結構難しい。確かに、言っても仕方のないことをくだくだ話しても、何も生まれないし、聞く相手もうんざりするだけなので、慎みたいところではある。しかし、言いたくなるのである。「言っても詮ないことですが」と断りを入れながら言うのである。
(本文より)

著者紹介

羽毛田信吾 (ハケタシンゴ)

1942年、山口県川上村(現萩市)に生まれる。県立萩高等学校を経て京都大学法学部卒業。
1965年、厚生省(当時)に入省。同省の他、北海道庁、内閣官房等に勤務。厚生事務次官を経て宮内庁次長、宮内庁長官(2005〜2012年)を歴任。
現在、宮内庁参与、昭和館館長、恩賜財団母子愛育会理事長。

目次

まえがき
第一章 思い出すあの日あの時 ~ ゆく河の流れは絶えずして
 十一月の陽光
 焼けつくような
 冬イチゴ
 電話口で固まった頃
 チャンチキおけさ
 情なきのみが仏者かは
 餅つきの効用
 絹の下帯
 豚と私
 南国土佐を後にして
 同期会のこと
 味噌ひき労働者
 ひとすじの純情
 相撲礼讃
 小指の思い出
 荒神橋往還
 望蜀の誹り
 継続は力なり

第二章 仕事の周辺のことども ~ 面白きこともなき世を
 男純情の
 自虐私観
 ドリアンのこと
 紙つぶて合戦
 少子高齢化社会の風景
 椅子と健康
 夫婦と同じ
 母子手帳
 ごみ法改正哀歌
 外国語退治
 さらばYS-11
 貝毒から廃プラスチックまで
 歳旦祭
 仮設住宅の冬
 雅楽
 伝統文化を支える
 キンクロハジロ
 鯉の季節
 試情
 象徴天皇の道
 九段坂今昔
 『暮しの手帖』が世に出た頃
 昭和時代
 歴史に学ぶ
 禁じられた音楽
 伝単

第三章 身辺の由なしごと ~ 遊びをせんとや
 だぼ鯊か食わず嫌いか
 聖母マリアのキウイ
 寄せ箸
 極楽浄土の花
 今年六十のお爺さん
  「あれ」の変遷
 火箸風鈴
 鹿の災難
 日記帳
 すがれ追い
 背戸に赤子の泣き声を聞く
 早過ぎた桜祭り
 「でも」の幸せ
 男の色香よ、いつまでも
 童謡の力
 県人会オタク
 周防大島
 完熟を待ちて食い損なうの記
 大岡裁き
 宿屋の仇討ち
 言わずもがなのこと
 糟糠の夫
 散歩の決死隊
 気分は兼業農家
 愛鏡物語
 師匠の七味唐辛子
 鳥獣に追われて

第四章 少々怪しげな考察 ~ ただ珍しく面白く
 難読奇姓考
 「コドモ」を大切に
 咲き時を心得る
 非情と薄情の間
 一所懸命
 偶然
 目で物は食えない
 ロブスターの虐待
 牛丼冥利に尽きる
 漸悟と頓悟
 怖いこと
 鶯の誤解
 「今日」と「明日」
 湯たんぽ
 「琵琶湖周航の歌」のややこしさ
 そうせい侯
 近代日本を作った川
 唱歌「野菊」
 言うことは大げさ
 五榜の掲示
 便座を押さえながらこう考えた
 言うて詮なきこと
 たとえ話にご用心
 お詫びは難しい
 独り勝ちから共存へ
 盛者必衰のことわり
 遅乗り競争