書籍詳細
内容紹介
豚飼いマニュエルは金髪碧眼の美丈夫、母の教えに従っておのれの理想の姿を土の人像(ひとがた)に映すべく、日々黙々と土をこねては人像作りに精を出す。そこへ怪しき老人が現われて、「邪悪な魔法使いに拐かされた姫君を救って妻となせ」と、マニュエルに一振りの魔剣を与えた。いざ魔法使いを打ち倒さんと旅立ったマニュエルだが、途中で出会った男装の乙女に恋をして、魔法使い成敗はそっちのけ、肝心の姫君には目もくれず、乙女と手に手を取って意気揚々と帰還する。めでたしめでたし──と思いきや、死神があらわれて愛しい乙女を冥府へと連れ去った。かくして若きマニュエルの真の旅が始まる。相も変わらず土の人像を作りながら「自分の考えと自分の望みに従う」をモットーに進むマニュエルの前に広がる世界は迷宮のごとく怪異と魔法に充ち満ちて、想像を裏切る途方もない出来事が数々待ち受けていた……。時空を超えて連綿と続く英雄一族の始祖ドム・マニュエルがいかにして生まれたかが語られる、これは始まりの物語。
挿絵:フランク・C・パぺ
装画:木原未沙紀
装丁:山田英春
【シリーズ《マニュエル伝》とは】
豚飼いからポアテム国の救世主となったドム・マニュエルを始祖とする23代9世紀にわたる壮大な年代記。夢想の異世界を巡るロマンスをベースとした冒険喜劇で、原書はエッセイや詩を含む全18巻からなる。本シリーズでは特に評価の高い3冊『ジャーゲン』『イヴのことを少し』『土のひとがた』を刊行する。
著者紹介
J・B・キャベル (ジェイムズブランチキャベル)
アメリカの作家、系図作製者。一八七九年ヴァージニア州リッチモンドの名家に生まれる。幼少時から神話・伝説・聖書を耽読し、大学卒業後、新聞記者を経て作家となる。一九〇四年に長編第一作Eagle's Shadowを発表、本書は架空の王国ポアテムを舞台に二十三代九世紀にわたる一大ファンタジイ・シリーズ《マニュエル伝》全十八巻に発展した。その一冊『ジャーゲン』(一九一九)は「不道徳な内容」のため発禁事件を引き起こし、それが話題を呼んで大ベストセラーとなった。他の代表作に『夢想の秘密』(一九一七。邦訳国書刊行会)『土の人形』(一九二一。邦訳国書刊行会近刊)、『イヴのことを少し』(一九二七。邦訳国書刊行会近刊)など。一九二〇年代は「キャベル時代」とも呼ばれるほど批評界から高い評価を獲得、同時代アメリカ文学を代表する作家と目された。一九五八年に死去。その後一時忘れられた作家となったが、一九七〇年代にはリン・カーターやアーシュラ・K・ル=グウィンらの再評価もあり、SF・ファンタジイ作家への広範な影響が指摘されている。
安野玲 (アンノレイ)
1963年東京都生まれ。お茶の水女子大学文教育学部史学科卒。英米小説翻訳者。主な訳書にジーン・ウルフ『ナイト』『ウィザード』(国書刊行会)、スティーヴン・キング『死の舞踏』(ちくま文庫)、フィリップ・リーヴ『移動都市』『掠奪都市の黄金』『氷上都市の秘宝』『廃墟都市の復活』(創元SF文庫)、リック・ヤンシー『フィフス・ウェイブ』(集英社文庫)、アンナ・カヴァン『草地は緑に輝いて』(文遊社)の他、共訳書にロード・ダンセイニ『世界の涯の物語』『最後の夢の物語』(河出文庫)、スティーヴン・キング『夜がはじまるとき』(文春文庫)、キング&ヴィンセント編『死んだら飛べる』、テイテルバウム&ロテム編『シオンズ・フィクション』(竹書房文庫)、ジョー・ヒル『怪奇日和』『怪奇疾走』(ハーパーBOOKS)などがある。
目次
第一部 信用の書
第 一 章 マニュエル、淵のほとりを後にする
第 二 章 ニアフェル
第 三 章 ヴレデクスに登る
第 四 章 怪しの館
第 五 章 必定の待ち伏せ
第 六 章 マットの処世術
第 七 章 知恵の冠弁
第 八 章 聖なる光輪
第 九 章 愛の羽根
第二部 費えの書
第 十 章 アリアノーラ
第 十一 章 アプサラサスの魔法
第 十二 章 氷と鉄
第 十三 章 ヘルマス王の助言
第 十四 章 モルヴェンの果たし合い
第 十五章 勝者に包帯を
第三部 代価の書
第 十六 章 フレイディス
第 十七 章 人像作りの魔術
第 十八 章 マニュエル、心を決める
第 十九 章 ミザリーの頭
第 二十 章 幾年にも等しい一月
第二十一章 恩返しについて
第二十二章 ニアフェルの帰還
第二十三章 マニュエル、望みを叶える
第二十四章 三人の女
第四部 大利の書
第二十五章 ポアテムの一大事
第二十六章 鸛と取引する
第二十七章 マニュエルとニアフェル、サーガイルへ
第二十八章 メリサンが喜び迎えられたこと
第二十九章 〈数多の夢のセスフラ〉
第 三十 章 さらば、フレイディス
第三十一章 治国策
第三十二章 ポアテム奪還
第五部 仕舞の書
第三十三章 マニュエル、わが世の春を謳歌する
第三十四章 さらば、アリアノーラ
第三十五章 心乱す窓
第三十六章 満足からの逃避
第三十七章 ヒンツェルマンの見解
第三十八章 さらば、サスキンド
第三十九章 マニュエルの死
第 四十 章 すべてはくりかえす(奥書)