書籍詳細
キョウシジンセイ
教師人生
- 発売日
- 2019/07/09
- 判型
- 四六変型判
- ISBN
- 978-4-336-06307-6
- ページ数
- 360頁
定価 2,640円(本体価格2,400円)
内容紹介
教師としての赴任初日、教室で生徒が放り投げたサンドイッチが床に着地する。教師――こいつをどうする? 生徒たち――この新米教師、どう出るか? それを拾い上げて口にする。「うまい」生徒たちは喝采した。「すごいぜ、やるね」
保護者が書くべきところ、生徒が自分で書いて提出する嘘の欠席理由書。そこに「偉大なるアメリカの弁明」とでも言うべき溢れんばかりの見事な文章を見てとって考えついた。神の顕現、閃き。理由書を書く練習をする世界初の授業。生徒たちは一心不乱に取り組む。「もっと、もっと。もっと書いてもいい?」そして生まれた弁明の叙事詩。教育長に呼びつけられる。やっちまった。ところが「最高だよ。マコート君、あれこそ我々に必要な、地に足のついた教育だ」廊下でダンスを踊り、空を飛びたい気分だ。
創作の授業で新しい課題を思いつく。「明日は授業に料理本を持ってきてほしい」歴史上初めての、料理本のレシピを朗読する授業。デヴィッドがチキンの赤ワイン煮のレシピを読む。それはやがて楽器の演奏を伴ったリサイタルへと発展していき、クラスは活気に満ち溢れる。でも不安になる。僕たちは楽しむためにここにいるんじゃないぞ、先生よ。
創意工夫をこらし、試行錯誤を重ねた、斬新で野心的な授業の数々。『アンジェラの灰』でピューリッツァー賞を受賞したフランク・マコートが、多感なアメリカのティーンエージャーを相手に奮闘した30年の教師人生を、決して失うことのないユーモアに、悲喜こもごもを交えて綴った感動の名作。
著者紹介
フランク・マコート (フランクマコート)
1930年、アイルランド移民の長男としてニューヨークに生まれる。4歳の時アイルランド南西部の街、リムリックに移るが、父親が稼いだ金を全て酒に使うなど、一家は極貧の生活を送った。19歳で単身ニューヨークに渡り、さまざまな職業に就いた後、高校教師となる。30年ほどニューヨークのいくつかの高校で教鞭を執り、1987年に退職。1996年に刊行された、リムリックの幼少年時代の回想録『アンジェラの灰』は、ピューリッツァー賞、全米批評家協会賞などを受賞、ベストセラーとなり、アラン・パーカー監督により映画化もされた。続編に『アンジェラの祈り』(1999)がある。2009年没。
豊田淳 (トヨダジュン)
1956年静岡県生まれ。慶應義塾大学文学部英米文学科卒。1980年から37年間、神奈川県の公立高校で教鞭を執る。現在、関東学院大学講師。小説に、『彼女はそこに立っていた』(文芸社、2002)(ペンネーム、ジュン・レモン)、訳書に、ジョン・マクガハン『男の事情 女の事情』(国書刊行会、2004、共訳)、『ポルノグラファー』(国書刊行会、2011)、『教師人生』(国書刊行会、2019)がある。