書籍詳細
ブッキョウシャガヨム コテンギリシアノブンガクトシンワ
仏教者が読む 古典ギリシアの文学と神話
松田紹典論集
- 発売日
- 2017/06/20
- 判型
- A5判
- ISBN
- 978-4-336-06008-2
- ページ数
- 400頁
定価 3,960円(本体価格3,600円)
内容紹介
古典ギリシア学者にして禅者である聖和学園短期大学元学長・松田紹典。古代ギリシアの知見から日本を見、仏教者の目で古典ギリシアを読み解く、独創的な論考集。
第一部「古典ギリシアの運命観と論法」は、アリストテレスからディオニューソス、エロースそしてデルポイと、取り上げる領域は哲学から神話、伝承と広範に及ぶ。厳密一点張りの論証に信を置かず、救済を約束する声高なことばを怪しみ、古代ギリシアの民衆に潜むさまざまな伝承・祭儀・神話の森に分け入ろうとするのは、それこそが示唆に富む智慧の宝庫だからである。
第二部「古典ギリシアの冥界に見る「蛙の浄土」」では、アリストパネースの喜劇「蛙(バトラコイ)」を扱う。十一章からなる一連の論考は、冥府下りのドラマの背景をなすおびただしい神話・伝承を、ホメーロス、ヘーシオドスといった詩人から、プラトーン、アリストテレスという哲学者、そしてパウサニアスやアポロドロスといった旅行者……と可能な限りの文献を漁り、各地に残る故事来歴を調べ、神殿・彫像に至るまで広く渉猟し、次から次へと話を紡いでいく。
宗教、伝承、哲学と古典ギリシアの文献に遊び、意の赴くままに仏典から漢籍へと渉猟する、学術エッセイ。
著者紹介
松田紹典 (マツダジョウテン)
1928年 山形市七日町に生まれる。
1953年 東北大学文学部哲学科卒業
1958年 東北大学文学部大学院卒業/聖和学園吉田高等学校教諭/聖和学園短期大学講師
1974年 聖和学園短期大学学長事務取扱/学校法人聖和学園理事
1975年 聖和学園短期大学第二代学長
山形大学人文学部講師(非常勤。ギリシア語、二十余年間)
東北学院大学講師/正眼短期大学講師(非常勤。宗教学)
山形市七日町 臨済宗 宝雲山大龍寺(十九世)住職
1986年 学校法人聖和学園理事長
2001年6月19日 示寂(満72歳7箇月)
宝雲山大龍寺十九世妙心準住大仙典和尚禅師
村上真完 (ムラカミシンカン)
旧姓名:平野祥三
1932年 青森県南津軽郡山形村(現在 黒石市)に生まれる。
1957年 東北大学文学部哲学科(印度学仏教史専攻)卒業
1963年 東北大学大学院文学研究科博士課程印度学仏教史学専攻単位修得退学。
現在 東北大学名誉教授、文学博士。
著書:『サーンクヤ哲学研究:インド哲学における自我観』(春秋社)、『サーンクヤの哲学:インドの二元論』『インド哲学概論』『インドの実在論 ヴァィシェーシカ派の認識論』(以上、平楽寺書店)、『シルク・ロード遺跡の旅』『西域の仏教 ベゼクリク誓願画考』(以上、第三文明社)、『仏教の考え方』(国書刊行会)。
共著:『新国訳大蔵経 文殊経典1』(大蔵出版)、『仏のことば註』『仏と聖典の伝承』『パーリ仏教辞典』『仏弟子達のことば註』(以上、春秋社)。
阿部秀男 (アベヒデオ)
1937年 山形県に生まれる。
1960年3月 東北大学文学部西洋哲学専攻卒業。
1965年3月 東北大学大学大学院文学研究科博士課程西洋哲学専攻単位修得退学。
現在 北海道教育大学名誉教授、文学修士。
著書:『哲学中辞典』(共著、尚学社)、『現代の思想』(共著、金港堂)、『知られざる神』(共著、南窓社)。
目次
序文 東北大学大学院文学研究科教授(宗教学) 印度学宗教学会会長 鈴木岩弓
凡例
第一部 古典ギリシアの運命観と論法
一 運命をになうもの
――アリストテレスの「人は人を生む」の理解
二 説得と二分割法
――二分割法を巡る死闘・真理を授ける教育・芝居を見せる説得
三 二つのからだのディオニューソス
――残酷でしかも慕わしい二重性の神
四 エロースの相
――古典ギリシアからインドと大和に及ぶ愛の探究と讃美
五 権力と民意の迫間
――デルポイの神託抗爭伝承を日本の事例と共に考える
六 神の敵
――「バッカイ」に見る神の怒りを買う知的傲慢と探究との間合い
七 偶感五題
a 目(サンタルチア、蓮華色尼、須婆尼、提婆)
b ソピスト(ソフィスト弁論者)
c ことば(臨機応変)
d 穏(厳しい目は人を退け、柔和な相好は誰をも近づける)
e 笈(早死にした伯父とその跡を継いだ父のことなど)
第二部 古典ギリシアの冥界に見る「蛙の浄土」
一 冥府往還の準備に
――ヘーラクレースに教えを乞うディオニューソス
二 冥府の渡守のことばから
――英雄テーセウスと渡守カローンと冥土近辺の人ケルベリオス
三 エムプウサの周辺
――三途の川を越えた死者を待ち受け困らせる変幻自在の女妖怪
四 イアッコス神
――祭における突発的な叫びに由来する神の探究
五 運命の女神たち(一)モイラ(運命)をめぐって
――偶運の女神、必然の女神、時の女神
六 運命の女神たち(二)運命の女神たちの両属性、民間信仰とローマ期の造形
七 運命の女神たち(三)神像・神殿・神域・神性
八 運命と黒闇女ケール女神
――風魔のように個々人の命を奪う、末期の運命、死者の魂
九 古代ギリシアの詩人や哲人の作品に見える運命の女神
一〇 古典ギリシア人の心象の巨川
――オーケアノス、ステュクス、アケローン
一一 冥王館前の合唱歌
――運命女神たち、秘教入門と有徳な行い、門番アイアコス
世紀末的所感
後記――今やっていることども
〔編集後記〕あとがき
索引
編著者略歴・業績