書籍詳細
ニホンケンコクシトヤマタイコク
日本建国史と邪馬台国
- 発売日
- 2012/09
- 判型
- A5判
- ISBN
- 978-4-336-05462-3
- ページ数
- 350頁
定価 9,350円(本体価格8,500円)
内容紹介
本巻には建国前史を含めた史論を収録する。
第1論文では、神武天皇以前に遡る皇統譜の由来を検証する。舞台としては高天原、即ち、神武天皇東征以前の北九州における“建国前史”ということになる。
第2論文では、第1論文をうけて、高天原に当たる九州から東征して大和を中心に祖国を創建した神武天皇と、その“前史”の経緯の概要を述べた。副題にある“三替”とは、“ヒ神系”の天のホヒの命(出雲氏系)と、ニギハヤヒの命(尾張・物部氏系)と、皇孫ニニギの命(神武天皇系)の三政権の交替を指しており、しかもそれらの“ヒ神系”政権が、結果的にヤマト朝廷を中心として融和・統合せられていったという趣旨である。
第3論文は、第二次にあたるニギハヤヒの命の政権より遅れて東征した神武天皇の第三次政権に移行する畿内の、政局の一齣を物語るものである。大和のナガスネヒコが君主と仰ぐニギハヤヒの命によって誅殺されたように、熊野の土着豪族であったニシキトベも、第二次政権ではニギハヤヒの命の子の高倉下の勢力下にあったが、高倉下の翻意によって平定された。ここに第二次政権は、次第に第三次の神武天皇の政権に統合されていった。
第4論文では大和に現存する有名な「天の香具山」と、ニギハヤヒの命の子にあたる「天香山命」という人名との関連について、5点の疑問解消に挑戦する。
第5論文では、邪馬台国北九州説を、田中説の特徴である、「不弥国=志賀島」「投馬国=五島列島」「水行十日の新航路」にしぼり解説した。坂本太郎博士激賞の好論文。
第6論文では、出雲の神原神社古墳出土の景初三年三角縁神獣鏡はヒミコの鏡であり、この鏡を胸にいだいて埋葬されていた遺体を、“出雲振根”と推定する。
第7論文は、邪馬台国の“南”にあったと魏志倭人伝に伝える男子を王とする“狗奴国”の所在地論である。邪馬台国畿内説論者が狗奴国畿内以東説の論拠とする伊勢湾から中部地方に散在する前方後方墳の被葬者は、大和朝廷の版図拡大に協力して親衛隊的な役割をつとめたニギハヤヒ神系氏族の物部・尾張氏系の豪族であったことを指摘する。
第8論文では、津田左右吉氏の建国史そのものを俎上に載せ、岩波の『世界』に公表の「われらの天皇」論や筆禍事件を中心に分析し、その論述の独断と考証の致命的欠陥について言及する。津田説を論拠として戦後に盛行した“『紀・記』建国史否定論”は根底から崩れ去り、読者は“津田神話の崩壊”を本論に見ることになる。戦後の最初にして唯一の本格的津田学説批判論文。
正統史学は“真実”を志向する、と筆者は言う。著作集以降の新研究を集成した、古代史学者、考古学者、そして津田史学論者、必読の書。
著者紹介
田中卓 (タナカタカシ)
大正12年12月12日生れ(大阪市)
昭和20年9月東京帝国大学文学部国史学科を卒業
昭和35年4月文学博士(旧制)
府立大阪社会事業短期大学教授を経て、昭和37年4月から皇學館大学教授、平成4年4月から同大学大学院教授、平成6年6月から同大学名誉教授、平成23年7月から同大学学事顧問
昭和48年12月皇學館大学文学部長
昭和55年4月から昭和63年3月まで皇學館大学学長
平成30年11月逝去
著書・『住吉大社神代記』『出雲国風土記の研究』『神宮の創祀と発展』『愛国心の目覚め』『住吉大社史』(上・中巻)『概説日本史』(改題『教養日本史』)『祖国を見直そう』『祖国は呼びかける』『日本古典の研究』『日本国家成立の研究』『海に書かれた邪馬台国』『古代天皇の秘密』『皇国史観の対決』『伊勢神宮と式年遷宮』『歴史と伝統』『田中卓著作集』12冊(国書刊行会)『田中卓評論集』4冊(青青企画)
編著・『維新の歌―幕末尊皇志士の絶唱ー』『白山神社史』『真清田神社史』ほか
校訂・『新撰姓氏録』(神道大系)・『神道五部書』(神道大系)・『風土記』(神道大系)
目次
自序
一、神統譜――天皇に連なる神々の系譜
二、日本の建国史――三替統合の精華
三、神武天皇の東征と熊野の高倉下
四、天の香具山をめぐる秘伝
五、邪馬台国は北九州にあった
六、ヒミコの鏡の行方
七、狗奴国と前方後方墳説批判
八、津田史学批判――紀・記理解を通して
本巻所収の著書・論文一覧