書籍詳細
シュノヘンヨウビョウインチョウハツ
主の変容病院・挑発
- 発売日
- 2017/07/24
- 判型
- 四六変型判
- ISBN
- 978-4-336-04504-1
- ページ数
- 442頁
定価 3,080円(本体価格2,800円)
内容紹介
友人との再会から、青年医師ステファンは、煉瓦塀に周囲をかこまれ、丘の頂に屹立する、ビェジーニェツのとある病院に勤務することになる。そこ、「主の変容病院」では、奇怪な精神と嗜好を有する医師と患者たちが日々を営んでいた。彼らに翻弄されるステファンだったが、やがて病院は突如姿を現したナチスによって占拠されてしまう。次々と連行される患者たちを前にステファンの懊悩はなおいっそう深まっていき……レムの処女長篇『主の変容病院』のほか、ナチスによるユダヤ人大虐殺を扱った架空の歴史書の書評『挑発』や『二一世紀叢書』など、メタフィクショナルな中短篇5篇を収録。
著者紹介
スタニスワフ・レム (スタニスワフレム)
1921 年、旧ポーランド領ルヴフ(現在ウクライナ領リヴィウ)に生まれる。クラクフのヤギェロン大学で医学を学び、在学中から雑誌に詩や小説を発表し始める。地球外生命体とのコンタクトを描いた三大長篇『エデン』『ソラリス』『インヴィンシブル』のほか、『金星応答なし』『泰平ヨンの航星日記』『宇宙創世記ロボットの旅』など、多くのSF 作品を発表し、SF 作家として高い評価を得る。同時に、サイバネティックスをテーマとした『対話』や、人類の科学技術の未来を論じた『技術大全』、自然科学の理論を適用した経験論的文学論『偶然の哲学』といった理論的大著を発表し、70 年には現代SF の全2 冊の研究書『SF と未来学』を完成。70 年代以降は『完全な真空』『虚数』『挑発』といったメタフィクショナルな作品や文学評論のほか、『泰平ヨンの未来学会議』『泰平ヨンの現場検証』『大失敗』などを発表。小説から離れた最晩年も、独自の視点から科学・文明を分析する批評で健筆をふるい、中欧の小都市からめったに外に出ることなく人類と宇宙の未来を考察し続ける「クラクフの賢人」として知られた。2006 年に死去。
関口時正 (セキグチ トキマサ)
1951 年、東京都生まれ。東京大学卒。1992 年から2013 年まで東京外国語大学でポーランド文化を講じた。同大学名誉教授。2021 年、ポーランド文学普及・翻訳の顕著な業績に対してThe Polish Book Institute よりトランスアトランティック賞を授与される。著書に『ポーランドと他者』(みすず書房)、Eseje niecałkiem polskie(ポーランドUniversitas)、『白水社ポーランド語辞典』(共著)、訳書にスタニスワフ・レム『主の変容病院・挑発』(国書刊行会)、チェスワフ・ミウォシュ『ポーランド文学史』(共訳)、ヤン・コハノフスキ『挽歌』、ボレスワフ・プルス『人形』、アダム・ミツキェーヴィチ『バラードとロマンス』、同『祖霊祭──ヴィリニュス篇』、スタニスワフ・イグナツィ・ヴィトキェーヴィチ『ヴィトカツィの戯曲四篇』(以上未知谷)、『ショパン全書簡──ポーランド時代』、『ショパン全書簡──パリ時代』上・下(共訳)、イヴァシュキェヴィッチ『尼僧ヨアンナ』(以上岩波書店)、『ヤン・コット 私の物語』(みすず書房)などがある。
目次
主の変容病院
葬儀
予期せぬ客
空間の結節点
ドクトル・アンゲリクス
アドヴォカトゥス・ディアボリ
親方ヴォフ
マルグレフスキの講義
父と息子
冥界
挑発
ホルスト・アスペルニクス著『ジェノサイド』
J・ジョンソン、S・ジョンソン共著『人類の一分間』
二一世紀叢書
創造的絶滅原理 燔祭としての世界
二一世紀の兵器システム、あるいは逆さまの進化
訳者後記(関口時正)
レムは一人でそのすべてである(沼野充義)