ヤギノコウガンヲイショクシタオトコ
ヤギの睾丸を移植した男
アメリカで最も危険な詐欺師ブリンクリーの天才人生
ポープ・ブロック 著
杉田七重 訳
発売日 2025/01
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07677-9
ページ数 432 頁 Cコード 0022
定価 3,190円 (本体価格2,900円)
【内容紹介】
1910年代末のアメリカ。ケチな詐欺で食いつないでいたジョン・R・ブリンクリーは、ヤギの睾丸を人間に移植して「男性の衰えた精力をみるみる回復させる」という突飛な手術を看板に、カンザス州の片田舎で商売に乗り出す。
全くデタラメな治療にもかかわらず、天才的なマーケティングで騙されやすい大衆に怪しい効能を売り込むと、インポテンツに悩む何千人もの顧客が全米中から殺到。ブリンクリーの手法は大当たりし、「カンザスの救世主」はアメリカで最も裕福な医師として成功する。
一方、偽医療撲滅運動家のモリス・フィッシュベインは、この「最悪のペテン師」を地獄に追い込むと密かに誓う。
ブリンクリーはその後も天才的な創意をくり出す。「朝飯前に金儲けのネタを3つ思いつく」という彼は、新興メディアのラジオに着目。世界最強の電波を発するラジオ局を誕生させ、「ラジオ司会者の元祖」としてリスナーにバリトンの美声で語りかける。詐欺ビジネスはますます繁盛、世間はその強力なパワーに翻弄させられる。
時は世界的な大恐慌のまっただ中。人びとは生活の不安から、有能なビジネスマンとして自分たちを率いてくれるリーダーを求めていた。天敵・フィッシュベインとの対決を経て、ブリンクリーは世間の圧倒的な支持を背景に、いよいよ政治の世界に挑戦する——
本書は、天晴れなほど大胆な悪党の魅力的な評伝であり、アメリカという楽天性とアナーキーにあふれた社会の肖像を、コミカルかつ警告的に描くノンフィクションである。
装丁:松田行正+杉本聖士
【著者紹介】
ポープ・ブロック (ポープ・ブロック)
米ジョージア州・アトランタ出身。作家。『エスクァイア』『GQ』『ローリングストーン』など各誌に寄稿する。著書に、曽祖父の殺人事件を扱った『Indiana Gothic』(1999年)、月面移住が人類を救う可能性を考察する『Another Fine Mess』(2017年)がある。『ヤギの睾丸を移植した男』(原書2008年)は、主人公がドナルド・トランプ氏に似ているため、ロシアと韓国で翻訳出版された。
杉田七重 (スギタナナエ)
東京都生まれ。英米文学翻訳家。ヤングアダルト小説の作品に『アドニスの声が聞こえる』(小学館)、『世界のはての少年』、『最後の語り部』など、ノンフィクション作品に『海賊たちは黄金を目指す』、『ヒエログリフを解け』(以上、東京創元社)などがある。