奇想天外の本棚 6
ノウムハキケン
濃霧は危険
クリスチアナ・ブランド 著
山口雅也 製作総指揮
宮脇裕子 訳
発売日 2023/02/22
判型 四六判 ISBN 978-4-336-07406-5
ページ数 264 頁 Cコード 0397
定価 2,530円 (本体価格2,300円)
- シリーズ: 奇想天外の本棚 (キソウテンガイノホンダナ)
- 読書通人(ウェル・リード・コノサー)のための「都市伝説的」作品――噂には聞くが、様々な理由で、通人でも読んでいる人が少ない作品、あるいは本邦未紹介作品――の数々――ジャンルもミステリ、SF、ホラーから普通文学、戯曲まで――を紹介するシリーズ。三方の書棚に万巻の稀覯本が揃い、暖炉が赤々と燃え、読書通人にとっての《理想郷(シャングリラ)》のような部屋――それが〈奇想天外の本棚〉。
【内容紹介】
過保護に育てられたレデヴン館の相続人ビル・レデヴン少年は、同年代の少女のいる知人宅で休暇を過ごすよう親に命じられ、気乗りしないまま、シルバーのロールスロイスに乗せられ目的地に向かっていた。ところが、霧が濃くたちこめた荒れ地の途中で、いきなり、意味も分からないまま、お抱え運転手のブランドンに車からつまみ出されてしまう。同じころ、周到な計画のもとに、〈ナイフ〉と呼ばれる若者がボースタル少年院から逃亡する。
ビルは荒れ地をさまよううちに少年パッチと知り合い、行動をともにするようになる。二人はビルが思わぬ形で手に入れた暗号で書かれた文書を解読しながら、〈にやついた若者〉、〈ヴァイオリン〉、片手が鉤爪の男との、追いつ追われつの冒険へと踏み出してゆく。
オールタイムベスト級の傑作を次々と発表し、いわゆる英国ミステリ小説の黄金時代最後の作家としてゆるぎない地位を築いたクリスチアナ・ブランドが、すべての少年少女のために、みずみずしい筆致で、荒涼とした大地と海が広がるイギリス南部のダートムアを舞台に繰り広げられる冒険を描いたジュヴナイルの傑作。
装訂・シリーズロゴデザイン=坂野公一(welle design)
【著者紹介】
クリスチアナ・ブランド (クリスチアナブランド)
Christianna Brand(1907-1988)
イギリスのミステリ作家、児童文学作家。イギリス領マラヤ(現在のマレーシアの一部)で生まれ、イギリス領インド帝国で育つ。イギリス帰国後の17歳のときに父親が破産したため、生活のために、モデル、ダンサー、家庭教師、店員などさまざまな職を転々とする。1941年に『ハイヒールの死』で本格的に作家デビュー。同年の『切られた首』では、ブランド作品でも特に人気の高いキャラクターの一人であるケント州警察のコックリル警部が初登場している。その後、『緑は危険』(44)、『ジェゼベルの死』(48)、『はなれわざ』(55)、『招かれざる客たちのビュッフェ』(83)など、オールタイムベスト級の傑作を次々と発表し、いわゆる英国ミステリ小説の黄金時代最後の作家としてゆるぎない地位を築いた。『緑は危険』は、1946年に『青の恐怖』として映画化され、アラステア・シムがコックリル警部を演じた。1950年代後半からは他のジャンルや短編にも力を注ぎ、児童文学の《マチルダばあやシリーズ》も人気を博した。1972年から1973年にかけて英国推理作家協会の会長を務めた。
山口雅也 (ヤマグチマサヤ)
早稲田大学法学部卒業。大学在学中の1970年代からミステリ関連書を多数上梓し、’89年に長編『生ける屍の死』で本格的な作家デビューを飾る。’94年に『ミステリーズ』が「このミステリーがすごい!’95年版」の国内編第1位に輝き、続いて同誌の2018年の30年間の国内第1位に『生ける屍の死』が選ばれKing of Kingsの称号を受ける。’95年には『日本殺人事件』で第48回日本推理作家協会賞(短編および連作短編集部門)を受賞。シリーズ物として《キッド・ピストルズ》や《垂里冴子》など。その他、第四の奇書『奇偶』、冒険小説『狩場最悪の航海記』、落語のミステリ化『落語魅捨理全集』などジャンルを超えた創作活動を続けている。近年はネットサイトのGolden Age Detectionに寄稿、『生ける屍の死』の英訳版Death of Living Deadの出版と同書のハリウッド映画化など、海外での評価も高まっている。
宮脇裕子 (ミヤワキユウコ)
翻訳家。東京都出身。上智大学外国語学部英語学科卒業。訳書は、マーガレット・ミラー『悪意の糸』『鉄の門』、デイヴィス・グラッブ『狩人の夜』、アリサ・クレイグ『殺人を一パイント』『今宵は浮かれて』『ブラスでトラブル』(東京創元社)、パトリシア・ハイスミス『ふくろうの叫び』(河出書房新社)、キャロライン・グレアム『空白の一章――バーナビー主任警部』(論創社)、C・C・ベニスン『バッキンガム宮殿の殺人』『サンドリンガム館の死体』『ウィンザー城の秘密』(早川書房)など。