シリーズ 宗教学再考 1
マナ・タブー・クギ
マナ・タブー・供犠
英国初期人類学宗教論集
R.R.マレット/J.G.フレイザー/W.ロバートソン・スミス/R.H.コドリントン 著
江川純一/山﨑亮 監修
発売日 2023/03/15
判型 A5判 ISBN 978-4-336-07111-8
ページ数 488 頁 Cコード 0314
定価 6,820円 (本体価格6,200円)
- シリーズ: シリーズ 宗教学再考 (シリーズ シュウキョウガクサイコウ)
- 世界的な古典とされる重要文献を本邦初訳及び新訳で収録し、古今東西の宗教現象を21世紀に再考する宗教学の一大叢書。 近代以降、「宗教」という言葉を用いて、我々はいかに思考してきたのか。古今東西の宗教現象をつかもうとしたこの営みを、21世紀の今、我々はどのように評価すべきか。英、仏、独、蘭の各言語圏の重要文献を本邦初訳、および別々に翻訳されていたものを一冊に新訳で収録し、「宗教」をめぐる基礎概念の始まりから、「宗教」という言葉そのものの問い直しに至るまでを見渡し、宗教学という枠組を今再考する。 編集委員/島薗進・鶴岡賀雄・山中弘・松村一男・深澤英隆・山﨑亮・奥山倫明・杉村靖彦・久保田浩・江川純一 企画協力/南山宗教文化研究所
【内容紹介】
〈シリーズ 宗教学再考〉【第二回配本】
ヴィクトリア時代が開く、宗教への扉
世界経済の覇者となった英国に、
植民地支配を背景にもたらされた非ヨーロッパ圏からの情報。
厖大な事象の分類と比較は新たな学問分野を生みだし、
「マナ」「タブー」「供犠」といった主題は進化論的発想と結びついて、
宗教の起源=本質が議論された。
現代の宗教研究の基礎となる諸概念の再考を期して、
英国初期人類学者たちの最重要宗教論を集成する。
【収録内容】
W・ロバートソン・スミス「供犠」(『ブリタニカ百科事典』の項目)
「供犠」を神とその崇拝者が供食する饗宴として捉え、崇拝者が社会的紐帯を形成することを指摘。さらにトーテミズムとの関連で議論を展開させる。名著『セム族の宗教』の原型となった『ブリタニカ百科事典』の項目。本邦初訳。
J・G・フレイザー「タブー」「トーテミズム」(『ブリタニカ百科事典』の項目)
「未開社会」の呪術的思考を集成した金字塔『金枝篇』以前、ロバートソン・スミスとの出会いによって人類学者としての一歩を踏み出した『ブリタニカ百科事典』の項目。古今東西の文献渉猟から編みだされた「安楽椅子の人類学」のひとつの達成。本邦初訳。
R・H・コドリントン『メラネシア人――その人類学的・民俗学的研究』(抄)
メラネシア地域での宣教活動の傍らにおこなった、ライフワークとしてのフィールド調査の成果。全19章のうち、西洋にはじめて超自然的な力である「マナ」を伝え、初期の人類学や宗教学における宗教起源論に多大な影響を与えた2章を収録。本邦初訳。
R・R・マレット『宗教への閾』
師事したタイラーが提唱したアニミズムや、フレイザーの呪術理論を批判・修正しつつ、マナとタブーを軸に萌芽的な宗教を考察し「プレアニミズム」を提唱。当時最新の心理学を援用して「アニミズム」「タブー」「マナ」「呪術」を次世代につないだ過渡期の人類学者による8本の論集。新訳。
【訳者】
佐々木雄大(ささき・ゆうた)
1978年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。日本女子大学専任講師。著書に『バタイユ――エコノミーと贈与』(講談社選書メチエ)、翻訳書にエッカート・フェルスター『哲学の25年』(共訳、法政大学出版局)。
比留間亮平(ひるま・りょうへい)
1979年東京都生まれ。2007年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。東洋英和女学院大学非常勤講師。主な論文に「数の中の神――西洋における数の哲学の源流」(共著、『越境する宗教史』下巻、リトン)、翻訳書に『宗教――相克と平和』(共訳、秋山書店)など。
藤井修平(ふじい・しゅうへい)
1986年東京都生まれ。2019年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。東京家政大学ほか非常勤講師。翻訳書にミルチャ・エリアーデ『アルカイック宗教論集』(共訳、国書刊行会)、アラ・ノレンザヤン『ビッグ・ゴッド』(共訳、誠信書房)など。
金瞬(きん・しゅん)
1990年岐阜県生まれ。2016年早稲田大学文化構想学部卒。
徳田安津樹(とくだ・あつき)
1991年東京都生まれ。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程。
【著者紹介】
R.R.マレット (ロバート・レナルフ・マレット)
Robert Ranulph Marett 1866-1943
1866年英国ジャージー島生まれ。オックスフォード大学のベリオールカレッジで古典学、哲学、倫理学を学び、1891年には同大学エクセターカレッジにフェローとして在籍。1910年にオックスフォード大学で人類学の教授に準ずる職をタイラーから引き継いだのちは、同大学における社会人類学の設立に尽力した。その研究においてはプレアニミズムやアニマティズム、マナの概念を提示することによってタイラーの宗教起源論を修正するとともに、とりわけ宗教の感情的側面に着目し、心理学的視点を重視した。邦訳に『先霊観』(岡書院)、『原始文化』(生活社)、『宗教と呪術』(誠信書房)。
J.G.フレイザー (ジェームズ・ジョージ・フレイザー)
(1854~1941)スコットランド、グラスゴーに生まれる。ケンブリッジ大学トリニティー・カレッジ入学後、エドワード・タイラーなどに影響を受け人類学・民族学・神話学の研究を開始する。1907年リヴァプール大学教授に就任。40年以上の半生を『金枝篇』執筆と完成のために費やし、その研究はエリオットやコンラッドなどをはじめとする文学や、映画・美術・社会学など様々な領域に影響を与えている。
W.ロバートソン・スミス (ウィリアムロバートソン・スミス)
William Robertson Smith 1846-1894
1846年スコットランド・アバディーン生まれ。アバディーン大学、エジンバラ大学で数学や古典語、聖書研究を学んだあと、ボン大学、ゲッティンゲン大学に留学し、高等批評を学ぶ。1870年、アバディーンの自由教会カレッジの教授に就任。異端の疑いで告発され、『ブリタニカ百科事典』の記事により、失職。以後、同事典の編集・執筆に携わる。1883年ケンブリッジ大学講師、1886年同大学図書館員に就任。聖書研究に比較宗教学的な方法と人類学的な知見を持ち込み、その供犠論はフランス社会学やフレイザー、フロイトらに影響を与えた。邦訳に『セム族の宗教』(岩波文庫)。
R.H.コドリントン (ロバート・ヘンリー・コドリントン)
Robert Henry Codrington 1830-1922
1830年イングランド・ロートン生まれ。英国国教会の司祭の次男で、オックスフォードのウォダムカレッジで学んだのち、1855年に叙階。南太平洋地域を担当する宣教師に任命されてニュージーランドへ移住し、メラネシアでの宣教活動に従事。長年にわたりメラネシアの社会や宗教などに関する調査活動を行ない、多くの人類学的な知見をヨーロッパにもたらすが、特に彼によって伝えられた「マナ」概念は初期の人類学、宗教学に大きな影響を与えた。主著として『メラネシアの言語』『メラネシア人』など。
江川純一 (エガワジュンイチ)
1974年福井県生まれ。2008年東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得満期退学。博士(文学)。明治学院大学国際学部付属研究所研究員、桐朋学園大学非常勤講師。著書に『イタリア宗教史学の誕生――ペッタッツォーニの宗教思想とその歴史的背景』(勁草書房)、翻訳書にマルセル・モース『贈与論』(共訳、ちくま学芸文庫)。
山﨑亮 (ヤマザキマコト)
1958年石川県生まれ。1986年東北大学大学院文学研究科博士課程中退。島根大学人間科学部教授。著書に『デュルケーム宗教学思想の研究』(未来社)、翻訳書にエミール・デュルケーム『宗教生活の基本形態――オーストラリアにおけるトーテム体系』上下(ちくま学芸文庫)。