ショウトクタイシハナガヤオウデアル

聖徳太子は長屋王である

冤罪「王の変」と再建法隆寺  

木村勲 著

発売日 2020/12/18

判型 四六判   ISBN 978-4-336-07061-6

ページ数 256 頁   Cコード 0021

定価 1,980円 (本体価格1,800円)

【内容紹介】

創られた太子によって作られた古代史の核心部。太子伝説に影落とす長屋夫妻の死。冤罪事件から見える天平の真実に迫る!「王の変」とは何だったのか。
真実は再建法隆寺の本尊・釈迦像の銘文に刻まれていた。「上宮法皇と王后」の続けての死、聖徳太子夫妻のこととされる文意に秘められたのは、冤罪死の長屋王と吉備内親王のこと――。事件前年、聖武・光明(人臣の藤原氏の出)の男児、皇太子の基(もとい)が一歳を待たずに亡くなる。長屋は政権トップの左大臣、夫妻の男子四人は皇統の血がはるかに濃かった。兵で囲み―家六人の強制自死。現場は木簡が出土した平城宮脇の本邸ではなく、佐保川上流にあった別邸の佐保邸。時の文化人のサロンの場であり、特異な「楼」は詩歌に好んで詠まれた。ほどなく痘瘡が蔓延、怨霊の恐怖が世を覆う。犯者は贖罪意識に苛まれる。斑鳩では焼失した法隆寺の再建が進んでおり、釈迦像に重ねた上宮法皇(聖徳太子)さらに長屋を重ねて祈りの対象に封じ込むという奇策が採られた。唐に留学した傑僧・道慈が絶妙な筆使いで賛美と慰霊の銘文を刻む。長屋の思い入れ深い「楼」も法隆寺境内に移築、その本尊に彼の像を置く――夢殿と救世観音である。だが疫病は居座り、藤原四兄弟も連続死。イベント的な巨大事業につき進む――大仏である。奈良の政治史、天平の文化を規定したのが「変」であった。
古代史の謎に挑む。

【著者紹介】

木村勲 (キムライサオ)

木村 勲(きむら いさお)
1943年、静岡県生まれ。一橋大学社会学部卒、同大学院社会学研究科修士課程修了。朝日新聞学芸部記者を経て神戸松蔭女子学院大学教授を務めた。日本社会史・近代文芸研究者。著書に『日本海海戦とメディア―秋山真之神話批判』(講談社選書メチエ)、『鉄幹と文壇照魔鏡事件―山川登美子及び「明星」異史』(国書刊行会)、『幸徳・大石ら冤罪に死す』(論創社)など。共著に『100人の20世紀』(朝日文庫)、編著に『古代史を語る』(朝日選書=新聞連載時の原題は「古代漂流」)、『中世の光景』(同選書)、論文に「漱石『夢十夜』と山川登美子『日蔭草』――小説、短歌、及び絵画のイメージ比較試論」:『国文学年次別論文集「近代Ⅱ」(平成23年)』所収など。