カシハラジングウシ ゾクヘン

橿原神宮史 続編

田浦雅徳 監修
長谷川怜/谷口裕信/大平和典 著

発売日 2020/06

判型 A5判   ISBN 978-4-336-06668-8

ページ数 236 頁   Cコード 1021

定価 3,300円 (本体価格3,000円)

【内容紹介】

 明治23年(1890)に創建された、旧官幣大社・橿原神宮。第一代神武天皇と皇后の媛蹈鞴五十鈴姫命をお祀りし、神武天皇が即位した畝傍橿原宮の跡に広大な宮域を構え、多くの参詣者で賑わう。しかし、戦後から現在に至る歩みは決して平坦なものではなく、数々の困難を伴うものであった。
 本書は『橿原神宮史』(全3巻)の後を受け、太平洋戦争末期の昭和18年から御鎮座130年となる令和2年に至る77年の歩みを記す。
 第1章では、昭和18年から20年の終戦までを扱う。戦時下特有の祭礼や行事が多数行われ、勤労奉仕団の来宮、海外からは小為替での賽銭もあり、一般の参拝者も非常に多く、国内外の要人も多数訪れる。神宮では陸海軍に軍用機を献納し、空襲に備えて訓練が行われるなどの戦時下特有の動きもあるなか、盗難や火事などの事件が度々起こり、戦況の悪化や大地震は自分たちの熱誠が足りないためと内省する雰囲気が広がっていた。また、昭和18~22年には「神宮五十年史」の編纂が計画されたが、刊行には至らなかった。大東亜戦争終熄奉告臨時大祭で奏上された終戦を奉告する祝詞とともに、橿原神宮の戦後が始まる。
 第2章は、終戦直後の昭和20年から始まる。終戦直後の静けさから一転して、GHQによる宗教政策への対応に奔走する神社界。橿原神宮も例外ではなく、存立基盤を根こそぎ奪われ、一宗教法人として再出発することとなる。宗教法人となってからは、経営維持のために、従来よりも多くの人々に支えてもらう必要がある。神宮の祭典は地域にも開かれていく。さらに、複数の崇敬団体を組織し、現在まで続く林間学園などの文化社会事業を行い、崇敬者の裾野を広げる努力を積み重ねる。財政基盤を固めるためにいち早く動き出した橿原神宮ではあったが、経営は苦しかった。神饌畑の開墾や手入れを職員が行い、捧げ物の日本酒の確保に苦労しながらも、広報活動に力を入れ、地域との共存を図っていく。
 第3章では、紀元節復活運動と建国記念の日制定までの期間を、神社界と橿原神宮の動きを中心に記す。紀元節復活運動が全国的に盛り上がりを見せ、橿原神宮も全面的にこの運動を推進するこの時期、神宮は、国有地であった全境内地を無償譲渡され、橿原森林遊苑を整備し、飛び地を売却するなどの事業を行うが、盗難事件の多発という凶事にも見舞われる。制定後初の建国記念の日、橿原神宮は約32万人の参拝者で埋め尽くされた。
 第4章では、現在までを扱う。現在に至るまでの建物や修繕事業、歴代宮司の経歴、御鎮座記念大祭、『橿原神宮史』(全3巻)の刊行、文化事業や天皇皇后両陛下・皇族の参拝などが記され、現在の主な恒例祭典・行事を記して締めくくられる。
 官幣大社から〈開かれた神宮〉への軌跡を描き、橿原神宮所蔵の貴重な画像を多数収録。

【著者紹介】

田浦雅徳 (タウラマサノリ)

昭和28年生。皇學館大学特命教授、アドミッション・オフィス室長。博士(文学)。
主な著書に、伊藤隆編『日本近代史の再構築』(山川出版社、平成5年)、『伊勢市史』第四巻近代編(平成24年)、ジョン・ブリーン編『変容する聖地 伊勢』(思文閣出版、平成28年)(いずれも共著)がある。

長谷川怜 (ハセガワレイ)

昭和61年生。皇學館大学文学部国史学科助教。
主な著書に、千葉功監修・尚友俱楽部・長谷川怜編『貴族院・研究会写真集』(芙蓉書房出版、平成25年)、朴美貞・長谷川怜編『日本帝国の表象』(えにし書房、平成28年)、生琉里教会編『満洲天理村十年史』解説(えにし書房、平成31年)などがある。

谷口裕信 (タニグチヒロノブ)

昭和50年生。皇學館大学文学部国史学科准教授。博士(文学)。
主な著書に、『伊勢市史』第四巻近代編(平成24年)、ジョン・ブリーン編『変容する聖地 伊勢』(思文閣出版、平成28年)(いずれも共著)、主な論文に「近代の伊勢参宮と宇治山田の旅館業」(『明治聖徳記念学会紀要』50、平成25年)などがある。

大平和典 (オオヒラカズノリ)

昭和53年、栃木県生まれ。
平成14年、皇學館大学大学院博士前期課程修了。
平成16年皇學館大学助手・館史編纂室員、同助教を経て、現在、元皇學館大学研究開発推進センター准教授・佐川記念神道博物館学芸員。博士(文学)。
主な著書に、『日本後紀の研究』(国書刊行会、平成30年)、『皇學館史話』(皇學館大学出版部、令和元年)、主な共編著に『皇學館大學百三十年史』全五冊・人名索引一冊(共編著、学校法人皇學館、平成24年~平成27年)、『久邇親王行実』(共編著、学校法人皇學館、平成25年)などがある。