シンコクノザンエイ

非文字資料研究叢書2  「神国」の残影

海外神社跡地写真記録  

稲宮康人/中島三千男 著

発売日 2019/11

判型 A4横判   ISBN 978-4-336-06342-7

ページ数 186 頁   Cコード 0021

定価 8,580円 (本体価格7,800円)

【内容紹介】

大日本帝国時代に創建された「海外神社」のいま――
公園で遊具となる鳥居、ジャングルに佇む鳥居、あるいは学校や教会にかわっても、その参道、石灯籠はかつて神社であったことを物語る……。これは日本の風景ではない。かつて大日本帝国がアジア地域を中心につくった「海外神社」である。その数1700余社が残り、いまだ全貌は明らかではない。
写真家・稲宮康人は台湾、中国、韓国、北朝鮮、ロシア、フィリピン、サイパン島、テニアン島等、14の国と地域、200社にのぼる海外神社跡地を10年をかけて撮影してきた。大判フィルムカメラによる80社82点の写真からは、現在に残る「神国」の記憶がたちのぼる。またあえて、明治以降に作られた国内神社も収録し、“あった”と“ある”との比較に写真家としてのテーマを求めた。

かつて大日本帝国が、移住した邦人の安穏祈願のため、また版図拡大の皇民化政策として、台湾や朝鮮半島、南洋群島、満洲国、東南アジア等に創建したのが「海外神社」である。しかし1945年の大日本帝国の終焉とともに「海外神社」は廃絶した。現地人の放火・略奪、またその混乱をさけて日本人の手で破却されたものもあったという。その後、それぞれの国の社会体制の中で、朽ち果てていくもの、一部が利用されるもの、再建されるものなど、独自の歴史を刻んでいった。ある種のキッチュさがうかがえるものもある。
本書は鮮やかな海外神社跡地写真とともに、長年にわたり海外神社跡地の調査を続ける中島三千男の最新の論考、あるいは在りし日の神社写真、詳細な神社解説により、戦前の植民地支配の実態、戦後のそれぞれの現代史、ひいてはカルチュラル・スタディーズやポストコロニアリズム研究への新たな手がかりとなるだろう。また大日方欣一による写真論を収録し、現代写真のひとつの在り方を問う。
神奈川大学非文字資料研究センター「海外神社跡地のその後」班メンバーによる集大成、知られざる戦後史のフィールドワークの成果、〈非文字資料研究叢書2〉。

【著者紹介】

稲宮康人 (イナミヤヤスト)

1975 年生まれ。中央大学文学部史学科国史学専攻卒業、日本写真芸術専門学校卒業。神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センター研究協力者。大判フィルムカメラを担ぎアジア各国を撮影する。高速道路をテーマにした写真展「『くに』のかたち――HIGHWAY LANDSCAPES OF JAPAN」(新宿・大阪ニコンサロン、2007)で第9回三木淳賞受賞。個展に「帝国後 海外神社跡地の景観変容」(神奈川大学セレストホール、2012)、「あたらしい世界――対話の記録」(コニカミノルタプラザ、2014)、「『帝国日本』の残影――海外神社跡地写真展」(横浜市民ギャラリー、2019)、グループ展にNoorderlicht International Photofestival “LAND: country life in the urban age”(オランダ・レーワルデン、2010)等。著書に『帝国後 海外神社跡地の景観変容』(神奈川大学日本常民文化研究所非文字資料研究センター、2012)、『「大東亜共栄圏」の輪郭をめぐる旅 海外神社を撮る』(編集グループSURE、2015)。

中島三千男 (ナカジマミチオ)

1944 年福岡県生まれ。京都大学文学部史学科国史学専攻卒、同大学院文学研究科国史学専攻博士課程単位取得退学。奈良大学を経て神奈川大学へ。神奈川大学元学長、現在名誉教授。専門は日本近現代思想史。神奈川大学日本常民文化研究所客員研究員、同非文字資料研究センター客員研究員。主な著書に『天皇の代替わりと国民』(青木書店、1990)、『概論 日本歴史』(共編著、吉川弘文館、2000)、『海外神社跡地の景観変容――さまざまな現在』(お茶の水書房、2013 年)、『若者は無限の可能性を持つ――学長から学生へのメッセージ』(お茶の水書房、2014 年)、『天皇の「代替わり儀式」と憲法』(日本機関紙出版センター、2019 年)等。