ニホンコウキノケンキュウ
日本後紀の研究
大平和典 著
発売日 2018/01
判型 A5判 ISBN 978-4-336-06203-1
ページ数 384 頁 Cコード 3021
定価 16,500円 (本体価格15,000円)
【内容紹介】
『日本後紀』は全40巻中10巻しか現存せず、平安初期研究の障害となっている。そのためか、江戸初期には尾張藩『類聚日本紀』から抄出された二十巻本『日本後紀』が広く流布した。本書は真本と二十巻本の両『日本後紀』の基礎的問題を取り上げる。
序論では、近年における六国史研究の現状と問題点を記し、国史編纂に積極的偽造を認めない立場を尊重すべきことを述べる。
第一部では、真本『日本後紀』をめぐって、通説や近年注目される学説に対し疑問を呈する。『日本後紀』の本文、国史編纂と撰者の関わり、桓武天皇の皇統意識をめぐる問題、薬子の変、などの論点に、史料の性格を考慮し言及する。
第一章では、『日本後紀』の主な写本・版本・活版本を概観し、三条西家本と塙本の異同、またそれらと柳原本との異同箇所を検出し、それぞれ一覧にする。また、近年刊行された訳注日本史料本の残存巻における校訂態度についても論究する。
第二章では、『日本後紀』編纂過程における藤原緒嗣の役割について検討する。緒嗣の経歴を確認し、度重なる辞表は儀礼的なものではなく、国史編纂への関与も淳和・仁明天皇朝においては名目的なものであったと推測されることから、通説となっている坂本説に疑義を呈する。
第三章では、桓武天皇が三皇子の兄弟相承を遺勅されたとする説について、春名宏昭氏による批判を紹介し、『東宝記』の史料的性格や『日本後紀』の叙述を検討。春名説を支持し、補強する。
第四章では、「薬子の変」を「平城太上天皇の変」とする近年の傾向に対して、『日本後紀』における天皇に対する批判的な文言を検討。天皇批判は平城天皇に限られることから、薬子の変を叙述するにあたって平城上皇の責を問わない『日本後紀』の立場に注目し、『日本後紀』を素直に解釈すべきとする。
第二部は、『日本後紀』散佚後、近世期に行われた『日本後紀』復原作業についての基礎的な検討である。一般に広く流布し「偽書」とも称された二十巻本『日本後紀』を中心に論じる。
第五章では、二十巻本の成立を尾張藩『類聚日本紀』編纂に求め、用いられている出典史料を調査する。
第六章では、一七四巻に及ぶ『類聚日本紀』全体について、出典史料を調査する。それを踏まえて、『類聚日本紀』における日本書紀部分と日本後紀部分の特異性や、『類聚日本紀』編纂について言及する。
第七章では、近世期における『日本後紀』探求、とくに林家・水戸藩における動向を概観する。『日本後紀』以外の書名で伝わる復原本・抄本・偽書と目される書について見渡すとともに、『日本後紀纂』と『類聚日本後紀』について検討を加え、『類聚日本紀』の日本後紀部分の編纂過程と二十巻本流布に至る経緯を推定する。
第八章では、尾張藩における『類聚日本紀』と二十巻本の関係性をめぐる所伝が尾張藩の記録に認められない原因について検討する。
第九章では、賀茂社行幸に関する『日本逸史』延暦十三年十二月庚申是日条の出典(『日本後紀』『日本紀略』『日本逸史』『水鏡』)について検討する。
真本『日本後紀』をめぐる学説を再検討し、また散佚後の近世期における『日本後紀』博捜とその復元事業の軌跡を丹念にたどる、手堅い史料研究。
【著者紹介】
大平和典 (オオヒラカズノリ)
昭和53年、栃木県生まれ。
平成14年、皇學館大学大学院博士前期課程修了。
平成16年皇學館大学助手・館史編纂室員、同助教を経て、現在、元皇學館大学研究開発推進センター准教授・佐川記念神道博物館学芸員。博士(文学)。
主な著書に、『日本後紀の研究』(国書刊行会、平成30年)、『皇學館史話』(皇學館大学出版部、令和元年)、主な共編著に『皇學館大學百三十年史』全五冊・人名索引一冊(共編著、学校法人皇學館、平成24年~平成27年)、『久邇親王行実』(共編著、学校法人皇學館、平成25年)などがある。