江戸怪談文芸名作選 3
セイリョウセイソライシュウ
清涼井蘇来集
井上泰至 校訂代表
木越秀子/紅林健志/郷津正/宍戸道子 校訂
発売日 2018/04
判型 四六判 ISBN 978-4-336-06037-2
ページ数 408 頁 Cコード 0395
定価 6,380円 (本体価格5,800円)
- シリーズ: 江戸怪談文芸名作選 (エドカイダンブンゲイメイサクセン)
- 十八世紀後半の怪しくも豊沃な江戸怪談の世界から、「おばけ好き」必見の、知られざる名作を紹介! 美麗函入、挿絵多数、半数以上が初翻刻。江戸の人々が畏れ愛した怪異の数々が二百年の時を超えて今よみがえる!
【内容紹介】
浮世草子以後、文学の新たな型式を切り拓いた〈幻の作家〉清涼井蘇来、その全貌を初の集成!
これまでほぼ未紹介だった蘇来作品の翻刻を一巻にまとめ、その精髄を知らしめる。
童唄に隠された故事付由緒を辿る奇譚集『古実今物語』(正・続)。
怪異と人間の業が綾なす蘇来怪談の精華『今昔雑冥談』。
直向きなヒロイン達が奮闘する流麗巧弁な活劇的名篇『当世操車』。
怪談・奇談の傑作四篇を収録。
【清涼井蘇来(せいりょうせい・そらい)】。
作家。生没年不詳。
江戸で活動し、宝暦十一年から明和三年にかけての六年間で、『古実今物語(正・続)』『今昔雑冥談』『当世操車』の四篇を残した。
当時の混沌とした傾向を反映した多岐に亘る作風から、後期江戸戯作の成立を考えるためには欠かせない存在。
近世文学の泰斗である水谷不倒により、混沌・錯綜した江戸中期小説史において、「『可能性』の輝きをもっとも持っている」作家と評された。
***作品別 各話目次***
『古実今物語』/宝暦11年(1761)刊
校訂=木越秀子
<全3話>
巻之一
・松前長兵衛が事の始
巻之二
・松前長兵衛が事の末
巻之三
・絹屋彦兵衛三人の娘の事
巻之四
・姫君おせんの方の事の始
巻之五
・大仏姫君おせんの方の事の末
『今昔雑冥談』/宝暦13年(1763)刊
校訂=郷津正
<全10話>
巻之一
・渡辺勘解由が娘、幽霊を射留し事
・野州の百姓次郎三郎妻、鬼に成事
巻之二
・都の隠士、怪恠に逢ふ事
・岩丸氏、魔所に入る事
巻之三
・悪源太義平邪神退治の事
・猫死人の骸に入る事
巻之四
・狐の食を取て害にあふ事
・荒木氏、秋葉山にて勇剛の事
巻之五
・滝口道則、奇術にあふ事
・河州松波氏、気より幽霊を設くる事
『後篇古実今物語』(『古実今物語』続篇)/明和2年(1765)刊
校訂=紅林健志
<長編1話>
巻之一
・三州四長者の事ならびに浄瑠璃姫の事
・牛若丸浄瑠璃姫と相惚れの事
・熊鷹鬼五郎婚礼の邪魔する事
巻之二
・牛若丸熊鷹鬼五郎と太刀打の事
・鬼五郎謀計を以て難題を言ふ事
・難波の次郎矢矧の母を殺す事
巻之三
・常陸原牛太郎上使難波を討つ事
・京から雁が三ツ下る由来の事
・浄瑠璃姫飛脚源蔵に身の上を語る事
巻之四
・源蔵謀を教える事ならびに姫両親の菩提を弔ふ事
・烏川にて鬼五郎牛太郎争ひの事
・熊鷹鬼五郎最期の事
巻之五
・浄瑠璃姫七夕に思ひ合ひて身を投げる事
・牛太郎剃髪して常陸坊と名乗る事
・浄瑠璃姫再び義経公に逢ひ給ふ事
『当世操車』/明和3年(1766)刊
校訂=宍戸道子
<全3話>
巻之一
〇福徳屋富左衛門倅が事
・我脈のわが落ちつかぬ十九はたち
・朝風さむく目のさめる旅
・にくからぬ恋を裏から問おとし
・闇とやみとて聟と呼ばせる
巻之二
〇唐物屋久左衛門娘が事
・むつかしい顔の向き合ふ三ッ鉄輪
・児手がしわや夜の婚礼
・尤もと道理を唀く義の一字
・磨てもはげぬ無垢の金鍔
巻之三
〇浮橋頼母妻女の事
・言訳のくらい所ところにふたり寝て
・みさほ涼しく朽はてる胸
・この人のここに聞くとは神のわざ
・帰る錦は温泉のみやげにて
巻之四
〇物部新蔵娘お弓事
・毒喰はば皿をねぶれと乱れ染
・我ひとりなくふりの下風
・身を捨てこそ浮む瀬で呑みおふせ
・押込なれば蔵へおしこむ
巻之五
〇お弓才智を以て出世の事
・夜半過ぎて土と圭のさゆる物思ひ
・江戸むらさきの女一疋
・源氏にもこれ程の智は書もらし
・栄ゆる末も孝がもとなり
解説=井上泰至、木越秀子、紅林健志、郷津正、宍戸道子
【著者紹介】
井上泰至 (イノウエヤスシ)
一九六一年京都市生まれ。上智大学大学院博士後期課程単位取得満期退学。現在、防衛大学校教授。
専攻、日本近世文学(上田秋成、近世軍記、西鶴武家物、人情本など)、近代俳句。
著書に『雨月物語論 源泉と主題』(笠間書院、一九九九年)、『サムライの書斎 江戸武家文人列伝』(ぺりかん社、二〇〇七年)、『雨月物語の世界 上田秋成の怪異の正体』(角川選書、二〇〇九年)、『恋愛小説の誕生 ロマンス・消費・いき』(笠間書院、二〇〇九年)、『春雨物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫、二〇一〇年)、『江戸の発禁本 欲望と抑圧の近世』(角川選書、二〇一三年)、『近世刊行軍書論 教訓・娯楽・考証』(笠間書院、二〇一四年)。共著に『改訂 雨月物語 現代語訳付き』(角川ソフィア文庫、二〇〇六年)、『春雨物語』(三弥井書店、二〇一二年)、『江戸文学を選び直す 現代語訳付き名文案内』(笠間書院、二〇一四年) 、『上田秋成研究事典』(笠間書院、二〇一六年)など。
木越秀子 (キゴシヒデコ)
石川県生まれ。金沢大学大学院博士課程修了。専攻、日本古典文学。主に都賀庭鐘の小説について研究。
論文に、「樵夫横尾時陰-『英草紙』第三篇再考―」(『近世文藝』第九一号、二〇一〇年)、「『莠句冊』第三篇と「酒色財気」 」(『読本研究新集』第七集、二〇一五年)、「『莠句冊』第五篇を読む」(『北陸古典研究』第三二号、二〇一七年)など。
紅林健志 (クレバヤシタケシ)
一九八二年静岡県生まれ。総合研究大学院大学博士後期課程修了。現在、国文学研究資料館機関研究員。専攻、日本近世文学。
論文に、「近世の真名本出版と『旧本伊勢物語』」(『日本文学』第六七巻第一号、二〇一八年一月)、「仮作軍記と『本朝水滸伝』」(『国語と国文学』第九四巻第一一号、二〇一七年一一月)、「『本朝水滸伝』改題考」(『近世文藝』第九五号、二〇一二年一月)など。
郷津正 (ごうづただし)
一九九一年生まれ。長野県出身。明治大学文学部卒、東京大学大学院博士課程中退。現在、浅野中学・高等学校専任教諭。専攻、日本近世文学。
論文に「春満と真淵の実景説」(『東京大学国文学論集』第一二号、二〇一七年三月)、共著に『上田秋成研究事典』(笠間書院、二〇一六年)がある。
宍戸道子 (シシドミチコ)
一九七五年福島県生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士課程単位取得退学。明治大学非常勤講師。上田秋成の作品・思想を中心に、近年は主に秋成の浮世草子について研究を行う。
論文に、「上田秋成の学問姿勢と「不可測」の認識」(『近世文芸研究と評論』六八、二〇〇五年六月)、「『諸道聴耳世間狙』巻一の一の素材―道修町の小西家と当代―」(『国文学研究』一六五、二〇一一年一〇月)など。