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日唐律令法の基礎的研究

川北靖之 著

発売日 2015/03

判型 A5判   ISBN 978-4-336-05877-5

ページ数 664 頁   Cコード 3021

定価 19,800円 (本体価格18,000円)

【内容紹介】

 中国で成立した律令法が、どのように日本に継受され、古代日本の国家形成にいかなる影響を与えたのか。本書では、主として法源史に関心を集中して論究した。
 第1章は律令法の研究史である。
 第1節で日唐それぞれの律令研究史に関する大略を確認した後、第2節では中国律令の研究史、第3節では日本律令の研究史の大略について述べる。また本章付では、昭和45年までの「律令関係研究文献目録」を附した。
 第2章は日本律令の成立史論である。
 第1節では、近江令の存否に関する説を紹介しつつ、その存在を主張した。
 第2節では、『続日本紀』文武天皇二年七月乙丑条が、飛鳥浄御原律の存否検討するに最重要であることを論じた。
 第3節では、大宝律令成立記事について既知の史料を再検討し、大宝律令成立の意義について論じた。
 第4節では、養老律令の成立年次について論じ、養老二年成立説を主張した。
 第5節では、神亀五年七月二十一日格の一部が唐格の影響下に成立したとの説を提出し、併せて養老二年における法典の将来について考察した。
 第6節では、奈良時代初頭の郡司の地位の低下について、神亀五年三月二十八日勅を中心に考察した。
 第3章は先学の驥尾に付して行った日唐律の比較研究や逸文蒐集の成果である。
 第1節では、杜預『律令注解』の中国法典編纂史上での画期的意味について述べ、唐代法典編纂史上重要な位置を占める永徽律・永徽律疏の編纂などについて論じた。
 第2節では、中国における律学博士設置について論じ、日本での『令義解』の編纂・施行についても考察した。
 第3節では、日唐賊盗律全条の比較対照作業によって明らかとなった諸問題の中から、謀殺主条を中心として考察を加えた。
 第4〜8節の「律逸文考」「律逸補遺」「律条拾遺」「律逸補葺」「律条拾肋」では、律の逸文蒐集作業を行った。
 本章付では、『律逸』の著者が藤守中であるとの説を提出した。
 第4章は大宝・養老令の研究である。
 第1節では大祀、第2節では日唐律令における君主の称号、第3節では律令法における即位礼と大嘗祭、第4節では律令における「神璽」について考察し、第5節では大宝田令公田条の復原私案を提示した。
 第6〜7節では、大宝田令六年一班条について考察した。
 第8節では、大宝元年当時より式部省に考文が送付されるのは、大輔以下に限られることを主張した。
 第9節では、日本上代の儀式の中で重要な位置を占める告朔について、その原義を考えつつ、日唐両制度の比較を通じて、その意味を考察した。
 本章付では、敦煌と日本に存在した唐代法制文献を比較して、唐代法の変容の一端を明らかに、合わせて継受法である日本律令の態様について考察した。
 補論は遣唐使を主に法政史の立場から考察した論考である。
 第1節では、律令法がどのように日本に受容されたのかという観点から、遣唐使・遣隋使派遣の意義やその法制的側面について考察した。
 第2節では、律令法の継受に大きな働きをなした遣唐使について、その意義・概要について略述した後、その発遣にあたって行われた神仏への祈願を、制度史的観点から検討した。
 第3節では、日唐の講和を象徴する大宝の遣唐使と、その中心的役割を果たした粟田真人について考察した。
 日・唐の古代史は必ずと言っていいほど何らかの形で律令制に関係する。著者40年にわたる日唐律令比較研究の集大成。

【著者紹介】

川北靖之 (カワキタヤスユキ)

昭和22年9月、三重県鈴鹿市生まれ。博士(法律学)。昭和45、皇學館大学文学部国史学科卒業。昭和53年、皇學館大学大学院文学研究科国史学専攻博士課程単位修得。昭和54年より京都産業大学専任講師、助教授を経て、教授。
著書に『譯註 日本律令 二』(「律本文篇」上巻、共著、東京堂出版)、『令集解所引漢籍備考』(共著、関西大学出版部)、監修に『京都府警察史』(第三・四巻、京都府警察本部)がある。