チュウゴクキヌオリモノゼンシ
中国絹織物全史
七千年の美と技
黄能馥/陳娟娟 著
小笠原小枝 監修
齋藤齊 訳
発売日 2015/06/26
判型 A4変型判 ISBN 978-4-336-05808-9
ページ数 568 頁 Cコード 0672
定価 44,000円 (本体価格40,000円)
【内容紹介】
中国文化に深く浸潤し、日本にも多大なる影響を与えた中国の絹織物。遥かなる古代から清朝末期まで、その輝かしき歴史を、千点を超える豊富な図版と徹底した考証でたどった百科全書的通史。オールカラー。
【本書の特徴】
・中国の絹織物について、その種類、文様や技法の変遷を中心に、起源から20世紀までの悠久の歴史を、豊富な実例と歴史的考証を交えて包括的に記した通史。
・錦・綾・綺・繻子織・粧花[縫取錦]・緙絲[綴織]、刺繍など、創意を極めた技法によって制作されたあらゆる文化財(服飾品、書画、軸物、タンカ、団扇、匂い袋、絨毯、座具等)を網羅的に収録。絹織物の精髄を総1021点にも及ぶ図版を用いて系統的に解説する。
・著者が実物を分析して描いた織物構造の組織図および意匠図が添付され、直感的に織物組織の立体構造を把握できる。また染色、織機や紋織装置、特殊な糸や素材の製法などについてもきめ細かい記述がなされ、染織の実作家にも有用である。
・日本の読者の便をはかり1343件にもおよぶ詳細な訳注、および染織・人名・史料名索引を作成し付した。日本の染織研究の第一人者である小笠原小枝氏によるオリジナル論文「日本における中国の絹織物」を付した。
【監修者(日本語版)のことば】
日本の染織・文化史上にも大きな影響を与えた中国絹織物の精美
小笠原小枝(日本女子大学名誉教授・東京国立博物館客員研究員)
悠久の時の流れを通じて、常に高度な技術を発展させ、時代ごとにそれぞれに特色ある華麗な、あるいは精美な染織の花を咲かせてきた中国の絹織物。半世紀余に渡る発掘調査の成果によって、西周から漢、三国・両晋・南北朝、隋唐、遼・金・宋・元を経て、明・清を結ぶ染織資料が整えられ、研究が進められ、ついに図説の通史として結実したのが本書です。
中国の絹織物は、日本の染織・文化史上にも大きな影響を与えるとともに、確実な足跡を残してきました。飛鳥・奈良時代を代表する法隆寺・正倉院伝来の染織品のなかに見る隋唐代の経錦や緯錦、あるいは室町時代から茶席で賞玩され、今日も「名物裂」として珍重されている中国元明の金襴や緞子。さらに由緒ある寺院に相伝の証として受け継がれてきた袈裟は、鎌倉時代に入宋した禅僧らによってもたらされた宋代の絹織物でした。
一方で、平安時代の『源氏物語』や『枕草子』などの物語や日記に散見される「唐錦」や「唐綾」は、これまで日本における現存例の乏しさから、名称のみで実際の織文様や彩りを知る手だてがなかったものです。しかしその唐錦や唐綾の一端を、近年中国から出土した遼代の染織品のなかに垣間見ることができます。
このように日本の絹織物の歴史は中国のそれを抜きにしては語れません。現存資料に基づく染織品の歴史的研究は、いつ誰が作ったかも判らない裂の断片をつづり合わせて組み立てるパズルにも似た作業です。そしてその最も確かな一片が中国大陸から発掘される年代の定まった出土品にあります。千点を超える作例と、それを通史の形で詳細に解説した本書は、中国絹織物史・日本染織史研究の具体的な資料として、さらには有職故実の世界やその他の日本文化史の研究に資する好古の一書となるでしょう。
【著者紹介】
黄能馥 (コウノウフク)
1927年浙江省生まれ。専門は染織、服飾。中央工芸美術学院教授、中国書画通信大学副学長、北京現代実用美術学院名誉学院長、蘇州シルク博物館顧問などを歴任。主な著書に『中国印染史話』(中華書局出版、1960年)、『絲綢史話』(共著、中華書局出版、1963年)、『中国美術全集 工芸美術編・印染織繡』(上下巻、文物出版社、1985年)など多数。邦訳書に『中国絹織物全史―七千年の美と技』(共著、科学出版社東京 発行・国書刊行会 発売、2015年)がある。
陳娟娟 (チンエンエン)
1936年北京生まれ。1956年に北京故宮博物館に入り、沈従文氏に師事。以来40年余、中国国家文物鑑定委員会委員、中国古代絲綢文物複製センター副センター長などを歴任しながら、中国古代の織物・刺繡の研究、分析、鑑定に従事する。主な著書に『国宝』(共著、商務印書館香港分館、1983年)、『故宮博物院蔵7 宝録』(上海文芸出版社、1985年)など。邦訳書に『中国絹織物全史―七千年の美と技』(共著、科学出版社東京 発行・国書刊行会 発売、2015年)がある。
小笠原小枝 (オガサワラサエ)
1942年生まれ。東京芸術大学美術学部芸術学科卒業。東京国立博物館調査員、東京芸術大学非常勤講師などを経て日本女子大学助教授、教授を歴任。現在は日本女子大学名誉教授、東京国立博物館名誉客員研究員。専門は日本・東洋染織の比較研究。
主な著書に「日本の美術」『更紗』(1980年)『金襴』(1984年)『染織(中世編)』(1988年)『絣』(1992年。以上至文堂)、『舶載の染織』(中央公論社、1983年)、『染と織の鑑賞基礎知識』(至文堂、1998年)、『ジャワ更紗――いまに生きる伝統』(共著、小学館、1999年)、『別冊太陽 更紗』(監修、平凡社、2005年)、『中国絹織物全史――七千年の美と技』(監修、2015年、[発行]科学出版社東京[発売]国書刊行会)など、論文に「日本のおける宋元の染織」(『中国美術全集7』、京都書院、1996年)、「中世の夾纈」(『現代の考古学4 生産と技術の考古学』、朝倉書店、2008年)、「平等院本尊阿弥陀如来座像台座華盤発見の金糸入り織物再片」(『鳳翔学叢7』、平等院、2011年)などがある。