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増補 華厳菩薩道の基礎的研究

十地経における菩薩道とその歴史的発展  

伊藤瑞叡 著

発売日 2013/08/22

判型 菊判   ISBN 978-4-336-05665-8

ページ数 1,401 頁   Cコード 0015

定価 26,400円 (本体価格24,000円)

【内容紹介】

 『華厳菩薩道の基礎的研究』(昭和63年、平楽寺書店)は、蔵訳『十地経論』『十地経論釈』のほぼ全訳を収め、『十地経』の基本思想・根本概念が中国で地論宗・摂論宗・華厳宗等の教理に発展した経過を研究するなど、学界への貢献は多大である。今回の再版にあたり、初版刊行以来たゆまず続いた著者最新の研究論文等150頁以上増補した。
 序論では、六十華厳、八十華厳、蔵訳の組織を比較対照して解釈し、その成果を先行の華厳関係の諸経典と比較し、大本の『華厳経』編集の意図を推定しつつ、『十地経』の『華厳経』に占める重要性(位置と役割)を示す。
 本論は7章に分かれており、『十地経』の菩薩の修行道を大本の『華厳経』との関連において研究し、さらにその思想の中国仏教における発展を跡づける。結論では、『十地経』の菩薩道を「如来性起品」の如来の智慧との関係において考察する。
 第1章では、『十地経』の概観について究明する。
 第2章では、十地思想の基礎概念である「地」の意味を研究し、これに関連して智地・仏地などの意味を明らかにする。
 第3章では、地の思想が十地の各段階においてどのように現れているかを研究する。
 第4章は十地の註釈的研究を意図したものであり、『十地経』の7種の異本を対照するとともに、蔵訳『十地経論』・『十地経論釈』の全文を和訳し、それらの解釈を本文解釈に利用しつつ、『十地経』の序文を除いた本文の正確な理解につとめる。本章と第1章第6節を合わせると、蔵訳『十地経論』・『十地経論釈』のほぼ全訳が学界に提供される。
 第5章では、『十地経』の中核思想である十波羅蜜、『十地経』の重要教理である一乗思想、さらに大乗仏教の担い手である法師が『十地経』でどのように示されているか、等を取り上げる。
 第6章では、『十地経』に根拠を持ち、中国仏教で特色ある発展を遂げた諸思想のうち、六相説、第六地に説かれ唯心思想に基づく縁起説、『十地経』の考えている心識思想、本覚思想等について、『十地経』の立場とそれを受けて中国で発展した地論宗・摂論宗・華厳宗におけるこれらの思想の発展を、歴史的に研究する。
 第7章では、同じく一乗を説く『華厳経』と『法華経』とを対比して、両者の類似点と相違点を明らかにする。
 「結論にかえて」では、『華厳経』で重要な位置にある「十地品」と「性起品」を対照して考察する。
 増補論文には、本書の補完的な研究を収め、完成度をより高めた。
 増補第1章では、本論第6章第2節を図式化した。縁起観について十数種ないし三十数種のあり得る解釈モデルが示されており、縁起研究には必読の論文である。
 増補第2章は、『法華菩薩道の基礎的研究』第4篇第1章で検討した華厳十地と法華一乗の一乗思想三乗説を、内容概念の構造関係を図式(解明)化して明示する。
 増補第3章では、諸教の心識説を史的視点に立ちそれぞれを分析総合して連関体系として全組織化している『冠註五教章』の「心識差別」を図(式)解(明)化して整理する。さらに、法蔵教学にいたる心識説の展開プロセスを構造機能分析して図式図解化し、比較対象の資料として提示する。
 増補第4章では、インドから中国にいたる六相説の展開を追い、そこに仏教の融和性を見出し、融和のダイナミズムの根拠を縁起説に求める。
 増補第5章では、華厳思想と日本仏教の諸流派を比較検討し、仏教の基礎理論は天台と華厳に尽きるとする。
 華厳思想と法華思想との比較も含み、入法界品を除く『華厳経』全体を扱う本書は、華厳思想・菩薩思想の研究者にとって必携の書であろう。

【著者紹介】

伊藤瑞叡 (イトウズイエイ)

昭和17年 札幌市に生まれる
昭和40年 早稲田大学第一文学部哲学科東洋哲学専修卒業
昭和43年 東京大学大学院人文科学研究科印度哲学専攻修士課程修了
昭和46年 同博士課程単位取得修了
昭和59年 文学博士(早稲田大学)
昭和55~61年 立正大学仏教学部仏教学科助教授
昭和61年~平成25年 立正大学仏教学部仏教学科教授
平成25年〜 日蓮宗大本山・山科本圀寺第104世貫首
日蓮宗大本山本圀寺求法講院長、日蓮宗勧学院講学職、日蓮宗布教院講師、学校法人藤学園慈光幼稚園理事長
著書 『法華菩薩道の基礎的研究』『法華経成立の基礎的研究』(平楽寺書店)、『三大秘法抄の研究』『新時代の実践布教学』(隆文館)、『摂折論の新研究』『宗教地政学入門』(華林山文庫)、ほか多数