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中国出土壁画全集 第Ⅱ期
古田真一 監修・翻訳
徐光冀 総監修
発売日 2012/07/24
判型 A4変型判 ISBN 978-4-336-05435-7
Cコード 3371
定価 143,000円 (本体価格130,000円)
【内容紹介】
発掘調査にて出土した中国全土の重要な墳墓壁画・地下宮殿壁画を地域別に体系化、オールカラーにて収録する初めての資料集。考古学や美術史学において、中国だけでなく日本や朝鮮との比較研究にも圧倒的な視覚資料を提供する。
<監修にあたって>帝塚山学院大学教授 古田真一
本書は、日中で同時出版される『中国出土壁画全集』全10巻の日本語版である。中国では、五千年以上も前の紅山文化に属する遺跡から彩色壁画の残片が発見されていることからも分かるように、古くから宮殿や墳墓を壁画で飾る伝統が保持され、これまでに各地で大量の壁画が発見されている。そうした壁画の中から、本書では秦漢から元代の出土壁画を中心に採録し、巻によっては明清時期のものも含んでおり、二千年以上の長きに及ぶ時期の壁画を体系的に紹介している。
本書を通観して驚くことは、何と言っても収録された壁画の多さと、内容の豊富さであろう。20世紀初頭から2009年までに発掘された約350カ所の遺跡が取り上げられ、全10巻に収録された全国各地の壁画の総数は2100以上にも及んでいる。壁画には当時の人々の生活や儀礼の様子が生き生きと描かれ、神話や故事などが壁画として視覚的に表現されているが、それらを通して中国の社会や文化を総合的に理解できることは言うまでもない。また日本の古墳壁画との関係も深く、高松塚古墳に描かれた女性の服装や、キトラ古墳の四神の源流を考える上でも重要であり、さらに茶に親しむ場面や種々の吉祥文は日本文化との類似性が認められ非常に興味深い。
唐代以前の絵画作例のうち、敦煌などの石窟壁画を除けば、現存する絵画の大部分は墳墓に描かれた壁画であり、しかも石窟壁画が宗教的な画題にほぼ限定されているのとは異なり、墳墓壁画では内容が多岐に及んでいる。さらに、遼代や金代の絵画作例が乏しい現在、墳墓壁画はこの時代の絵画を補完する上で極めて重要であると言えよう。そうした遼金時期の壁画が多数収録されていることも本書の特徴であり、最新の発掘成果を余すことなく盛り込んだ本書が、東アジアの文化に関する様々な研究の場で広く活用されることを期待したい。
【著者紹介】
古田真一 (フルタシンイチ)
1954年愛知県名古屋市生まれ。帝塚山学院大学教授。京都市立芸術大学美術専攻科修了。1986年から1990年まで北京大学に公費留学。専門は中国絵画史。編著書に『中国の美術―見かた・考えかた』(共編、昭和堂、2003年)など、論文に「六朝絵画に関する一考察―司馬金龍墓出土の漆画屛風をめぐって」(『美学』42巻4号、1992年)、「宋代における仕女図の表現形成について」(『中国美術の図像学』京都大学人文科学研究所、2006年)、監修・翻訳に『中国出土壁画全集』(全11巻、科学出版社東京 発行・国書刊行会 発売、2012年)などがある。
徐光冀 (ジョコウキ)
1935年北京市生まれ。北京大学歴史学部考古学専攻卒業後、中国科学院考古研究所研究員として勤務、今日に至る。現職は中国国家文物局専門家、中国考古学会常務理事、中国古遺跡保護協会顧問など。