歌人/小説家川野芽生
『アルゼンチン短篇集』(バベルの図書館20)
フリオ・コルタサル 他著 内田吉彦 訳
天国の図書館で司書を務めているであろうボルヘスが直々に選び、序文を書いた《バベルの図書館》は(……)、薄く縦長の一冊一冊が世界への扉であって、もっと奥へ、奥へと手招きしていたのだった。特に忘れがたいのがコルタサルらの『アルゼンチン短篇集』とダンセイニの『ヤン川の舟唄』。新編が出たときも嬉しかったけれど、旧版の薄い書物が図書館の書架のあちこちに散らばっているさまも謎めいていてよかったと思う。
『山尾悠子作品集成』
山尾悠子 著
『山尾悠子作品集成』は読んでも読んでも読み尽くせない書物だ。読むたびに、複雑にカットされた宝石の異なる面が異なる光を放ち、しかしその向こうを見透かすことはできない。
『教皇ヒュアキントス ヴァーノン・リー幻想小説集』
ヴァーノン・リー 著 中野善夫 訳
国書刊行会といえば本そのものの美しさを見逃すこともできない。お金がなくて国書刊行会の本などそうそう買えなかった頃にそれでも『教皇ヒュアキントス』が出るなり買ってしまったのは、装画の中からこちらを射竦める眼差しのせいもあったと思う。