小説家奥泉光
『ノヴァーリス』(ドイツ・ロマン派全集2)
ノヴァーリス 著 薗田宗人/今泉文子 訳
国書刊行会の書籍というと、だから自分にとっては《ドイツ・ロマン派全集》だ。全巻を揃えたのではなかったけれど、何冊かが必ず書棚の「いいところ」に置かれていたし、いまも置かれている。あくまで趣味だと思っていたけれど、その後小説家として出発したとき、これらがわが文業にとって大きな財産となっていることに気がついたのだった。シューマンとノヴァーリスは自分の作品のタイトルにも登場することになった。
『月下の幻視者 ドイツ・ロマン派短篇集』(ドイツ・ロマン派全集8)
前川道介 編
国書刊行会の書籍というと、だから自分にとっては《ドイツ・ロマン派全集》だ。全巻を揃えたのではなかったけれど、何冊かが必ず書棚の「いいところ」に置かれていたし、いまも置かれている。あくまで趣味だと思っていたけれど、その後小説家として出発したとき、これらがわが文業にとって大きな財産となっていることに気がついたのだった。シューマンとノヴァーリスは自分の作品のタイトルにも登場することになった。
《後藤明生コレクション》(全5巻)
後藤明生 著 いとうせいこう/奥泉光/島田雅彦/渡部直己 編集委員
二十歳台の自分は、小説家になろうなどとは毫も思わず、大学に残って社会経済史の領域で何事かなそうと勉強する一方、趣味はモダンジャズで一貫し、自分でも演奏したりしていた。経済史とモダンジャズ。これがつまり表看板だったわけだが、裏看板というのもじつはあって、それは戦前ミステリとドイツ・ロマン派であった。後者について最初に好きになったのはロベルト・シューマン。そこからはじまって文学にも興味の蔓が伸びた。