各界著名人による各界著名人による私が選ぶ国書刊行会の3冊

小説家京極夏彦

《世界幻想文学大系》(全45巻)

紀田順一郎/荒俣宏 責任編集           

たぶん、これが僕の初国書本だったのではなかろうか。しかも全巻揃えるのに三十数年もかかっている。ならば優に人生の半分以上を費やしていることになるではないか。最後の一冊を書架に収めた時の達成感は忘れられない。

《日本怪談大全》(全5巻)

田中貢太郎 著                 

田中貢太郎の読者であった僕は同書の刊行にあたり一文を寄せている。奥付を確認してみたところ、驚いたことに刊行年は僕のデビュー翌年であった。頼む方も頼む方だが引き受ける方もどうかしている。そのうえ(すっかり忘れていたのだが)僕の駄文が二巻目の帯に再録されているではないか。一巻目の帯には種村季弘さんの文が載っている。こんな畏れ多い暴挙はなかろう。

《現代語訳 最澄全集》(全4巻)

大竹晋 訳                 

現在読んでいるのは《現代語訳 最澄全集》(全4巻)である。影印でもなければ翻刻でもなく、しかも全集なのである。こんな「借金したってお前は買うのだ」というような本を出すのだから、やはり国書刊行会の書籍に支払うお金は〝税〟のようなものなのか。