作家乗代雄介
『図説 茨城の城郭』
茨城城郭研究会 編
『図説 茨城の城郭』は私が最も外に持ち出した本で、先日も書中25番の古徳城趾に持参した。親切な説明など無い藪の中で縄張図を頼りに遺構を眺めて何か考える、何事にもそんな癖がついたのは本書のおかげである。
『黄色い笑い/悪意』(マッコルラン・コレクション)
ピエール・マッコルラン 著 中村佳子/永田千奈 訳
マッコルランは同じく国書から出ている『恋する潜水艦』も楽しんだ。そういう小説も書いた作家らしく、船長である伯父が来て死ぬまでの「黄色い笑い」第1章は、あらゆる記述で何か事を起こそうとする発破の力に満ちている。(……)奇想や荒唐無稽と呼ばれるものを支える基礎技術にこそ目を見張る。
『トンネル』
ベルンハルト・ケラーマン 著 秦豊吉 訳
ケラーマンの『トンネル』は元々好きで、私が国書から出す本に収める文章で触れていた関係で「実は復刊に動いていて……」という話をうかがっていたので思い出深い。(……)大きく重いものを整然と扱うという点で城趾の遺構にある土木技術を見る感銘に近い、そういう確かなものを翻訳で数多く読ませてもらってありがたく思う。